バッティングセンターのない街、赤羽
今日の話。高校生の頃少し気になっていた現在獣医志望の女の子とデートした。向こうがどう思っているかは知らないけど僕にとって女の子と二人で遊びに行くことはデートであった。向かうは赤羽のとある喫茶店。
彼女がいたことのない僕は大学生として3年目の幕を上げんとする現状に焦っている。そんな中降って湧いた千載一遇のチャンス。ウキウキで朝から美容室にお世話になり、普段はつけないコンタクトを目に入れ、赤羽に到着した。
待ち合わせ時間の30分前。僕はエキナカの本屋さんで時間を潰すことにした。10分前になり、僕はインスタでDMを送った。
「着いたよ~!!」
すぐに返信が来る。
「はやい笑」
「あと5分くらい待っててください...」
どうやら思ったより僕は浮かれているみたいだった。
こちらに気づき笑顔で手を振りながら小走りで近づいてくる彼女。変わったな。髪は茶色に染まり胸元には良さげなアクセサリー。
「〇〇くん!!」
少し話して安心した。嗚呼、思い出の中と同じだ。
目的の喫茶店は駅から10分程度。都市郊外特有の狭い歩道を会話に花を咲かせながら歩く。彼女と身体が触れるたびにドギマギしながらもそれを押し隠し、平気なふりをして歩く。童貞くさいとか言わないでほしい。男はそんなもんだし僕は童貞だからだ。
喫茶店でティラミスとキャラメルラテ(ice)を注文し会話を続ける。僕がこのあいだ行った山梨旅行の話。彼女が行った小動物カフェの話。音楽の話。趣味の話。一人暮らしの話。バイトの話。単位の話。進路の話。共通の友達に彼女・彼氏ができた話。
.......今彼氏・彼女がいるのかの話。流れ的にこの話になるのは必然だし僕も訊きたいと思っていた。まぁこんな風に男と二人っきりで喫茶店に来るってことはいないんだろう、確信していた。
皆様の予想通り、帰ってきた応えは期待とは真逆のもの。彼女は幸せそうだ。高揚していた感情が滑落するのを感じた。ドキドキして楽しかった気持ちは冷え、冷静になる。
嗚呼、彼氏いるんだな。
しょうがない、ころころと笑う彼女は傍目に見ても魅力的で、目標に向かって努力する姿には憧憬さえ抱いてしまう。こんな女の子、男は放っておかないよな。
そこからの会話は鮮明に覚えていない。楽しかったがそれの前には及ばなかった。だが、これだけは覚えている。
「この後どこにいこっか。夕食には帰りたいけど。」
「バッティングセンター近くにないんだね。一番近いので埼玉だよ。」
帰りの電車で一人になりスマホがただの箱になり下がった時、下腹部が重くなりはじめた。別に彼女が異性として好きだったわけじゃない。なのにもやもやが溜まる。彼女が別れ際に吐いた言葉が僕の体内で渦巻いている。はじめは僕の質問だった。
「そういえば彼氏がいるのに二人で良かったの?」
「彼氏にも伝えてあるから大丈夫だよ。あと異性と2人なら〇〇くんとしか行かないかな。」
『...〇〇くんは大切な友達だからね!!』
僕は彼女のことが異性として好きだったのか、これを書いている今もわからない。ただ、下腹部はいまだにずしりと重く、好きな音楽を聴いていても軽くなってくれない。
願わくば僕を大切な友達と形容してくれた彼女が、あの会話後に僕の笑みが減ったことに気づかないでいてくれますように。
彼女は僕のことを○○くんなんて呼びません。渾名で呼びます。身バレ回避。まぁ本人が読んだら完全に分かっちゃうんですけどね。