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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

王子、婚約破棄ですか。判りました一緒に検証致しましょう。

作者: ジージ

ここは、王立貴族学院の卒業パーティー会場である。

「シャーロッテ・ホームズ公爵令嬢、お前は、私の愛するオハナ男爵令嬢に度重なるいじめを行い、挙句には、階段から突き落とし、命を奪おうとしたこと、ここに3名の証人もいる。

言い逃れはできぬぞ。

よって、シャーロッテとの婚約を破棄し、国外追放とする。」


レンデハイム王国、第一王子レイドは、勝ち誇った顔で仁王立ちしていた。その横には、オハナ令嬢が王子の腕に胸を押し付けて上目遣いに涙目で立っていた。


「シャーロッテ様、あんな酷いことして平然としているなんて信じられません。皆様の前で謝ってください。」

オハナ嬢は、誰にもわからないように下を向きながらニヤニヤしていた。


彼女の取り巻き3人が証人者であろう。

王国騎士団長の息子 ヘイタレ・アナドール侯爵令息

宰相の息子     ヒョロン・シッサーク侯爵令息

宮廷魔術師長の息子 ホーケー・タンショー伯爵令息

いずれも婚約者がいながら、オハナ男爵令嬢と遊びまわっているとの噂があると言うより、いつも王子を含め遊びまわっているのは公然となっていた。


私は思わず唸ってしまった。

「・・・・大変な事になりましたねぇ」


「シャーロッテ?お前のことを言っているのだぞ」

王子は、いつも冷静沈着で受け答えする彼女が気に入らなかった。お茶会でもいつも黒いローブを羽織り、色気もへったくれもない。この鉄面皮を動揺させ泣き叫び地面にひれ伏させることを夢見ていた。今回は、味方を付け、準備万端の断罪を叩きつけたのになぜ冷静でいられるのか?国外追放だぞ。馬鹿なのか?と思う王子だった。


「レイド王子様、まず婚約破棄ですが、謹んでご承諾させていただきます。ただ、王家と公爵家が結んだ婚約を王子個人が破棄する事はできませんので、ここで婚約が今後成立できない旨の婚約継続不可能として不履行の誓約書を作成し、婚約破棄を両家に示す必要があります。では、書類を作成しますので5分ほどお待ちください」

と部下に目配せし、5分後誓約書が出てきた。


―― 婚約継続不履行の誓約――

レイド・レンデハイムは、男爵令嬢への真実の愛に目覚めたため、シャーロッテ・ホームズ公爵令嬢との婚約継続は不可能であることから婚約継続を断念し、双方が婚約者としての責務を放棄する。

――――

「ちょっと待て、確かに愛するオハナ嬢とは言ったが、お前のいじめや殺人未遂が原因での婚約破棄であって真実の愛のためだけでは無いぞ」


「おかしいですね。公爵家以上の人間を国王裁判以外で裁くことは出来ない事は学園で学んだはずですがお忘れですか。

それに、婚約者がありながら愛する者が出来たと発言されましたね。それは不義密通となり婚約誓約書に違反しています。婚約中に断罪すれば、裏切り行為となり個人の罪状行為より重たい罪が王子に課せられることはご存じのはずです。婚約を破棄又は、責務を果たせない状況にしてから断罪するのが妥当ではないですか。

まあ特例として国王が任命した宮廷裁判官であれば国王代理として裁く事はできますが王子の断罪を理解し、今すぐ味方する裁判官はここにはいないと思います。

このまま弾劾も含めてしまっては、婚約破棄出来ないにもかかわらず、婚約破棄を多くの貴族の方々の前で宣言してしまった王子の沽券に関わる問題になってしまいますし、王位継承権にも影響しますが宜しいのですか」


王子は思った。婚約者のまま追い出したら父上から何を言われるかわからない。それに破棄した後に衛兵に命じて追放して途中で殺してしまえば当人はいないのだし裁判しても自分の言い分しかないので後の祭りだ。ここは、彼女の直筆サインを貰えば、合意の書類になる。

後は如何にひどい奴であったか訴えれば問題ない。

これでオハナ嬢との婚約もいけるな。うへへへ


「コホン、了承した。サインしよう」

こうして、婚約継続不履行誓約が両者の間で成立した。

シャーロッテ嬢は、直ぐに次の議題を定義した。

「では、次のオハナ男爵令嬢の申し立てについて話を進めましょうかレイド王子様」


「その必要はない。公爵令嬢の罪は明白である。第一王子として命ずる。衛兵はシャーロッテ公爵令嬢を拘束し、国外に追放せよ」


衛兵5人が前へ出てシャーロッテを拘束しようと手を延ばしたが、近衛騎士に行く手を阻まれた。

「近衛騎士の分際で第一王子の命令を阻止するとは、斬首になる覚悟があるのだろうな。護衛も援護しろ」

しかし、護衛は動こうとしない。

「お前ら! 加勢しろと言ったよな。クビだけでは済まんぞ。早く拘束しろ」


しかし、全く動こうとしない。

護衛は何も言わず動かず、ただ立っていた。


「王子様、衛兵も近衛騎士も困ってしまいます。

貴族の方も大勢おられます。

貴族でも弁明の機会も与えられず一方的に断罪すれば、裁判も行わず司法を軽んじる王子として、皆さんが認識してしまいます。

どのような風聞が国王の耳に入るか想像できますか。

ここは、私の言い分をお聞き願いたいのですが、全く身に覚えどころか何を言っているのかすら理解できていませんので、こちらから質問をしてもよろしいでしょうか」


「ふん、まあいい、自分の悪行を証人から聞いて納得するのだな」

「ではまず、証人の方、オハナ男爵令嬢、第一王子様には、以下の誓約書にサインをお願い致します。」


内容は、証言に虚偽は一切致しませんとした書類であった。


シャーロッテめ、悪あがきしおって、こちらには、第三者の上位貴族の証人が3人もいるのだぞ。証言の信憑性を上げるだけだろうに。

それに正式裁判みたいだが・・・


「シャーロッテ公爵令嬢からのいじめを受けた内容を列記します間違いがないか確認してください。後からの訂正は訴え自体を偽証とみなしますので、取り下げ以外は認めません

よーく確認してください」

1.オハナ男爵令嬢の教科書をシャーロッテ公爵令嬢に破かれた。

2.オハナ男爵令嬢がシャーロッテ公爵令嬢にいじめを受けた。

 学園を退学せよ何度も暴言を浴びせられた。

 噴水に落とされた。

3.オハナ男爵令嬢がシャーロッテ公爵令嬢から殺人未遂があった。

 階段から突き落とされ死にかけた。

4.オハナ男爵令嬢がシャーロッテ公爵令嬢に盗まれた。

 アクセサリー・ドレスを多数。


項目を挙げ、確認が終わると、オハナ嬢は泣き崩れた。

「シャーロッテ様は、身分が上なことをいいことに、私の目の前でやめてと泣き叫んでも容赦なく教科書を破いて ”お前など学園に足を踏み入れるな”と言って笑っておられました」

「噴水では後ろから突き飛ばされ、階段からは突き落とされ、腕を骨折致しましたが、治療師の方に直していただきました。

ドレスやアクセサリーもお前には勿体ないと言って持っていかれました。

公爵令嬢であれば何でも許されるのでしょうか。私のような身分の低いものは学園に通うことも出来ないのでしょうか。ただ一生懸命勉強したいだけなのに。。」


オハナ嬢は、王子に寄りかかり、

ヘイタレ侯爵令息とヒョロン侯爵令息の手を握り、ホーケー伯爵令息を見つめていた。大変器用な方である。

四人は涙ぐみながら頷いた。


「先ず、1.の教科書の件ですが、第三者の証言もしくは証拠はございますか」

ここで、ヘイタレ侯爵令息が手を挙げた。

「お忘れですかシャーロッテ様、貴方がビリビリに破くのをこの目で見ておりました。止めようと思ったのですが、上位貴族の貴方には手出しが出来ませんでした」


「そうですか。教科書を破いたのは私で間違いありませんか、また日時はいつごろか正確に示してください。」


「貴方で絶対間違いありません。日時は、 一月か二月前です。一か月以上前なので正確には分かりません」

ふふふ。これで日付が判らなければ、その日は別の用事です などと証明することはできまい。頭はこう使うのだよ。俺が彼女を必ず射止めてやる。待ってろよオハナちゃん。


「それでは、オハナ嬢の担任のジャスティーナ先生おられますか?後、購買部の方に購買記録を持ってきてくれるようにお願いします」

今日は、王立貴族学院の卒業パーティーであったため、先生も出席していた。

証言者には、予め偽証しない事の証明書にサインして貰った。


「先生、一般的に教科書は、高位貴族でない者は、学園からの貸し出しと聞いておりますが、オハナ嬢は、自前の教科書を持っていたのですか?」


「彼女は、全ての教科書を学園から借りていました。貸し出し時の証明サインが在りますので間違えようがありません」


「・・・・・それは、家で宿題をするために別に買ったのよ。家用を破かれたのよ」


「はー、そうですか。結構高いと思うのですが、購買の方、オハナ令嬢が買った記録はございますか」


「有りません。買われる方は、侯爵以上の方しか居りませんので男爵が買った記録はございません」



「オハナ嬢、はっきり言います。

他から買ったと言っても購買部以外で売っていませんからね。

去年の物と言っても毎年内容が違うので教科書になりません。

誰かが貸した物だと言うのなら、一,二か月前に自分が使っていれば、教室の人に聞けば判りますよ。侯爵以上の同級生など数人しかいないのですから。

判りますね。この件は、偽証ですか?」


こいつ、細かい奴だな。教科書は失敗だった。ノートにしておけば良かったと思うオハナだった。

「・・・・・ぐぐぐ、勘違いでした。申し訳ございません取り下げます。

・・・先生まで私を虐めるなんて、酷いです。どうせ男爵令嬢だから公爵様の言いなりなんでしょ。一生懸命勉強してきたのにグスグス」

王子を含め取り巻き達が慰めていた。「大丈夫、卒業後あのヒステリックな先生はクビにさせるから」と声が聞こえた。


プチと音がしたような?


ジャスティーナ先生が教壇の指し棒をへし折る音だった。

「何が虐めですって!はっきり言いますが、貴方授業中起きてたことありますか。ノートもとった事ないというより、ノートを持って来たことすらないでしょ。

いくら注意したって全く勉強しないし、それに貴方今回三度目の落第ですよ。強制退学になったでしょ。いっつも最下位って言うより、答案用紙白紙で裏側に下手くそなマンガ書いてるでしょ。名前すらオハナがオカチになっているのですよ。名前のオしか合っていない回答なんて貴方以外、古今東西聞いたことがありませんよ。

だいたい、退学なのに何で卒業パーティーにいるんですか。

あと貴方たち男性4人は、下から2番から5番目でしょ。

〇×問題が偶然当たるしか点数とった事ないでしょ。

宮廷魔導士の息子の貴方、何れかの魔法の内容を書けの問題で、”お湯が冷めにくい”って魔法瓶でしょ。魔法瓶って魔法じゃないからね。

騎士団長の息子の貴方、剣術の種類を一つ挙げよの問題で、”食券”て書いたわね。それは食堂で食べるときの引換券でしょ。

宰相の息子の貴方、周辺国の名前を一つ挙げよの問題で”女子行為室”って書いたわね。それ更衣室だから、国の名前は覗きたいところの場所じゃないのよ。

王様の息子の貴方、国の繁栄に尽力した人の問題で”乳”って書いたわね。これお父さんでしょ。つまり国王様を乳って何?貴方の触りたいものと国王が同等ってどういうこと。貴方に国の命令書を書かせたら大変なことになるわね。

乳を敬えと書いたら、この国の男の人はみんな女性のおっぱいにお辞儀しちゃうわよ。

全く、どうして卒業できたのかしら?

重鎮の息子だから落第すると国の沽券にも係わるから、お目こぼし卒業でしょ。本当この国心配でしょうがないわ。

あー言ってやったわー、フー、フー、フー、フー、帰ります!」

先生は、息を切らせながらスッキリした顔で帰っていった。


しかし、ダブダブリだったとは、二十歳?2コ上とは知らなかった。


王子達は、先生が何言ってるのか分かっておらず、「あーいつもの説教だよ。」と耳をほじっていた。

パーティーに来ていた他の貴族たちは、こいつら筋金入りだと感心したという。


王子は思った。ヘイタレの奴オハナ嬢を援護できないとは、このレースから脱落だな。ライバルが減ったなラッキーだぜ。


シャーロッテは、仕事柄時間の効率化を大事にしている。


「面倒なので、2.3.4.項目まとめて審議しますね。

証人者に問いますが、いつごろの話ですか」

ヘイタレ侯爵令息、ヒョロン侯爵令息、ホーケー伯爵令息の三人は、何年も前からだが、ここ半年以内にも起こっているが日付は定かではないと話した。


「しかし、アクセサリーを白昼堂々盗むなんてオハナ令嬢も昼間は授業を受けてるでしょ」

これに対して三人の令息達が話し出した

それは、真夜中に忍び込んだ賊の顔を見たらシャーロッテ様であったと三人とも別々の日に見たと証言したのだ。


その時、この断罪劇を見ていた三人の令嬢が倒れだした。

そりゃ倒れるでしょうな。真夜中に未婚の女性のオハナ令嬢の寮に自分の婚約者が居たことを知ったのだから。

小バカ三人組は自分が何を言ってしまったのか、証明に必死で全く気付いていないようだ。

貴族社会において不義密通を公衆の面前で暴露すれば家の面目丸つぶれというやつである。


令嬢3人が控室へ運ばれ、場内が混乱している中で、質屋からアクセサリーやドレスが運ばれた。

「只今、罪状から盗難にあったアクセサリー類と思しきものを発見致しましたので証人の方々これを見てください」


「やはりシャーロッテ、お前が盗んだんだな。こんなに早く持って来たからと言って罪が軽くなることはないぞ」


「いいえ、これは近くの質屋からオハナ男爵令嬢が換金したもので売れ残ったものです。間違いありませんか」


「はい、間違いございません。当質店でも盗難品の持ち込みなど後で判るよう魔力インクでのサインをして貰っています。オハナ様のもので間違いございません」


不思議なことに同じアクセサリーが3個づつ並べられていた。

王子と小バカ3人組の4人は、皆「これは俺が贈ったものだ」

王子が何故3つもあるのか質屋に聞いた。

「これはですね。お水のご商売をされている方が良くやる手なのですが、あくまで仮定ですよ。あくまでです。まず4人のみつぐ君がいると仮定しましょう。4人に同じものをねだるんですヨ。

1個だけ残して売ってしまっても、一個持っていれば4人が全員自分の物を身に着けていると思いますよね。そこに”これは二人だけのー ひ・み・つ ♡”と言っておけば、4人が同時に会っても皆が自分の贈り物をつけていて自分は特別なんだと思うわけですよ。これはあくまで仮定ですよ。皆さんがそうだなんて全く思っておりませんです。はい」


絶対思ってる。


オハナ令嬢は、「そんなことありません。みんな特別です。」

とあたふたしながら大きな墓穴を掘ってしまった。


王子達4人は目が点になったまましばらく固まってしまった。

この後の修羅場がどうなるのか興味津々だが、早くこの茶番を終わりにしようと思うシャーロッテであった。


「それでは、審議を戻します。2.3.4.項目については、この半年以内に行われた行為で間違いありませんね」

王子、オハナ嬢含め5人が頷いた。


「私は、この学校に1年以上入場していません。魔道記録で確認できますので、学院事務局の方に証言を求めます」

この世界では、セキュリティーが発達している。その中でも魔力の質が一人一人違うことを利用した魔道記録装置がある。この装置は、入場時に登録し承認を得ないで中に入ると探知され警報が鳴る仕組みになっている。

登録された人は、正確な入退出の日時が記録され、後で確認ができる。この世界の人間は多かれ少なかれ必ず魔力を持っている事に着目した絶対的なセキュリティー装置である。ちなみに認識阻害、気配遮断、隠密などのスキルや魔法を使っても魔力残証が残るため突破は不可能と言われている。

王城も含め、重要な場所には必ず設置されている。

 

学院事務局員から、今日のパーティーの入場前にシャーロッテの入退出記録が1年前から昨日まで無いことが証明された。


「シャーロッテおかしいだろ。お前は、学園に通っていなかったということは、頭が悪くて退学になっていたということだろ。

公爵家として恥ずかしくないのか」


「私が入学後3か月で卒業したことを忘れているようですね。今はそのようなこと本件に関係ありません。

全てのいじめが偽証であることが証明されました。

それでも国外追放と言い張りますか」


「もういい、この国最難関と言われる王立貴族学院を3か月で卒業など誰が信じるかこの阿保が!

退学したにもかかわらず、王子の婚約者のままで今までいたことは万死に値する。

国外追放で勘弁してやろうと思ったが、ここまでコケにされて只では済ません。今すぐ処刑してやる。衛兵この者を殺せ!」


衛兵が剣の柄に手を掛けた。

そこに近衛騎士が前を塞いだ。

「この方に剣を向ける行為をしただけで、お前らの首だけでは済まない事が判らないのか?黒のローブと天秤のブローチを見て何を教わった。」


衛兵たちは、それを見た瞬間、驚愕の顔に変わり1m後ろに後ずさり土下座した。

「大変申し訳ございませんでした。何卒、何卒ご容赦下さい。一族郎党 拷問の末、野良犬の餌にするのだけはどうか御勘弁ください。わたくしめの命のみでどうかご容赦ください」

衛兵たちは、土下座したままガクガクと震えだし、泣きじゃくった。


「近衛騎士は下がりなさい。すみませんね。衛兵の方たちとは、顔を合わせることが殆どないのでちょっと度忘れしちゃったのよね。大丈夫今日の貴方たちの行為は無かったことにするから安心して仕事に戻って頂戴」


シャーロッテは、怒り狂うレイド王子が騒いでいるのが煩いので、”はー,もう嫌!”とため息をつきながら、後ろを振り返った。


「もう疲れましたのでそろそろ、ご登場願えないでしょうか。

断罪の時から居りましたでしょう。一般の貴族諸子の方々に実際の裁判形式を見せたいと言うからここまで行ってきましたが、このような茶番はここまでにしてください。国王様」


後ろの控えの間から5人の男がのそのそと現れた。

レンデハイム国王、

ホームズ公爵、

王国騎士団長アナドール侯爵、

宰相シッサーク侯爵、

宮廷魔術師長タンショー伯爵

この五人はいわゆる悪友であり、国難を幾度も乗り越えた親友であり国の英雄であった。

「いやあー、すまんすまん。騎士団長が息子を刀の錆にするとか、宰相が息子をひき肉にして豚に食わせるとか、魔術師長が息子を消し炭にするとか、とにかく宥めるのにやっとで出て行ったら惨劇になってしまうので出るに出れなんだわ。許せシャーロッテ」


王子を含め4バカとなった各々は、顔面蒼白となりオシッコ臭い奴もいる。


「皆の者、わし等の息子たちが大変迷惑を掛けてすまなんだな。躾が甘いと言われても反論できぬ。本当に申し訳ない。許して欲しい。」

5人は、パーティー会場の面々に深々と頭を下げた。


「父上、下々の者にそんなに頭を下げたら示しがつきません。それに、シャーロッテは今まで退学したことを隠し、婚約していたのですよ。公爵家を含めただで済ますわけには行きません。断罪してください」

「お前は本当にバカなんだなとつくづく思ったよ。

いいか、お前も知っている話をしてやろう。

人身売買組織が貴族社会にも蔓延り、誰も手出しが出来なかった組織を去年壊滅させ、多くの貴族が粛清されたことを知っておるな。

また、国境付近の村々を略奪、焼き討ちを行った盗賊団が敵国の陰謀であったことを見抜き、両国で調停を行い、多額の慰謝料と相手の防衛拠点を30km後退させたことも知っておるな。

それ以外にも貧困者への救済、迷宮入りと言われた難事件を数々解決したことは知っておろう。」


「そんなこと、国民なら誰でも知っていますよ。我が国の王に次ぐ絶対的守護者にして黒き鉄の公女のことでしょう。

この前、オハナ嬢と演劇を見てきました。父上達が国土を周辺国から守り、豊かにした後、それを盤石にし、民に平和をもたらした。もう感動しましたよ救国の英雄ですね。

それがどうかしたのですか」


「3か月で王立貴族学院を卒業し、宮廷裁判官となり、1年後には、宮廷裁判長官となった。それがシャーロッテだよ

お前には何度も言ったであろう。シャーロッテは国の宝だと。

宮廷裁判長官を侮った奴は誰であろうと豚の餌にしてやるといったのを覚えているだろう」


最早、王子は何を言っているのかわからなくなってしまった。

4バカは、ただ茫然と自分がやらかしたことが大きすぎて口を開けたまま立っていた。


「シャーロッテよ、今回の件、そなたは当事者として思うこともあろう。4人は廃嫡が決定しておる。皆、優秀な弟がいるのが幸いだな。

判決のすべてを任す。思う存分”ざまあ”してやれ」


「そのようなことを仰られても困ってしまいますわ。」

「畑の肥やしにしても、作物が不味くなりそうだし、1銅貨の得にもなりません。」

「国民のうっぷん晴らしに、石投げの刑にしてもお酒ばかり飲んでいて、ぶよぶよの体では2,3個の石で死んでしまっては、うっぷんが逆に溜まるでしょうね」

4人は震えが止まらず、座り込んでしまった。

「この後当然3人の令嬢にも婚約破棄されますし、慰謝料請求されますわね。まあ、裕福な方たちなのでお金でないもので返してあげないといけないわね。」

「判決、・・・・・・・・・・」

その後、4人は敵国との最前線に一兵卒として従軍した。

その間の給金が慰謝料として元婚約者の令嬢への支払いとなった。弾除け部隊として常に4人は行動したが、一人減り、2人減り3年後には、慰謝料が支払われることは無かった。


オハナ令嬢は、平民への降格と一年間の娼館への労働義務を課せたが、これは天職だと悟り、十年間No.1に君臨した。その後の足取りは不明である。


                                       FIN.


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― 新着の感想 ―
[一言] なんでこの手のざまぁ物って男たちにはちゃんとざまぁするのに元凶のヒロイン(笑)は甘くしちゃうんだろう
[気になる点] ローファンタジーは未来であれ過去であれ地球を舞台にファンタジーしてるジャンルなのでジャンル違いですね。 異世界恋愛かハイファンタジーへどうぞ
[良い点] 国王が「ざまぁ」を薦めているところ。 賢王さまなんでしょうね [一言] ホーケー・タンショー伯爵令息 モノを見ずともお粗末な息子さんが…… 笑いました!
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