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里に立って言えば千の口(短編集)  作者: 碧衣 奈美


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鶴の恩返し 其の一

 おつうがどんどんやせてゆくのを心配したおじいさんとおばあさんは、おつうとの約束をあえて破り、障子をこっそり開けました。

 すると、そこには一羽の鶴がいて自分の身体から羽を抜き、(はた)を織っていました。

 おじいさんとおばあさんはびっくりし、正体を見られたおつうは部屋から出て来ました。

「おじいさん、おばあさん。鶴の姿を見られたからには、もうここにいることはできません。今までありがとう。さようなら」

 そう言って、おつうは家を出て行きました。


「ま、待て。約束を破ったのは悪かったが、わしらはお前が鶴だろうと何だろうと、全然かまわないぞ」

「そうだよ。もう機も織らなくていいから」

 おじいさんとおばあさんは、おつうの後を追って家を飛び出ました。

 外にはおつうの姿はすでになく、一羽の鶴がいるだけでした。


 鶴は翼を広げ、走りながら羽ばたきました。

 羽ばたきました。

 ……羽ばたきました。

 しかし、いくら翼を動かしても、鶴は空へと舞い上がりません。

「おつう……どうしたんだ?」

 おじいさんとおばあさんが、息を切らして座り込んでいる鶴に駆け寄って尋ねました。

「と、飛べませ~ん」

 鶴が泣きながら答えました。

 よく見れば、鶴の身体はボロボロで、丸焼きにされる前に羽をむしられた七面鳥みたいになっていました。

「お前、(はた)を織る時に羽を使い過ぎたんだ。まったく、無茶しおって。もう動かすな」

「これじゃ、飛べてもすぐに墜落しちゃうよ。ほら、戻って手当しようね」

「ふぇ~ん。おじいさん、おばあさ~ん」

 結局、おつうはおじいさんとおばあさんにまた助けてもらうことになり、三人でその後もずっと仲よく暮らしたのでした。

 めでたしめでたし。

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