金のガチョウ
ある国の王様にはお姫様が一人いましたが、このお姫様は生まれてから一度も笑ったことがありません。
困った王様は、お姫様を笑わせた者にはほうびをやる、とおふれを出しました。
ハンスもそのおふれは知っていましたが、自分はお笑い芸人じゃないし、これといったすべらない話もないから、と気にしていませんでした。
ある日、ハンスが歩いていると、知らない男と出会いました。
男は実は魔法使いでしたがそれは言わず、ハンスに一羽のガチョウを渡しました。
羽が金色に光る、きれいなガチョウです。
「このガチョウを抱いて、お城へ行ってごらん。きっといいことがあるよ」
よくわかりませんが、ハンスは礼を言ってガチョウをもらいました。
「こいつを抱いて、お城? 何でだろ」
わからないままお城へ向かって歩いていたハンスでしたが、おなかがすいてきました。まだお昼ご飯を食べていなかったのです。
「んー、腹減ったなー」
ハンスはふと、自分の腕の中にいるガチョウに目をやりました。
羽が金色なのはハンスにとってはどうでもいいことでしたが、その丸々した体型に食欲がわいてきました。
「ガチョウかぁ……似てるし、こいつでいっか」
ハンスはお城から自分の家にコースを変えました。
そして、家に着くと、ガチョウの羽をむしり取り、北京ダックにしてしまいました。
「ガチョウもアヒルも似たようなもんだし」
ハンスは魔法使いからもらったガチョウを、おいしくいただいてしまいました。
「んめー。いいことがあるって、本当だったんだなー」
むしった羽は羽枕に使用し、ハンスはその後も今まで通り、普通に暮らしました。
めでたしめでたし。