三匹のコブタ 其の一
ある所に、仲のよい三匹のコブタ姉妹がいました。
ある日、コブタ達はそれぞれ自分達のおうちを作ることにしました。
長女はわらのおうちを作りました。次女は木の枝でおうちを作りました。そして、三女のコブタはレンガでおうちを作りました。
どのおうちも上手にできて、コブタ達はみんなで喜んでおりました。
それぞれのおうちで、コブタ達がくつろいでいた時のことです。
「グワハハハッ」
悪い狼がわらのおうちの外に現われました。
「こんなチンケなわらの家……家と言うのもはばかられるな、こんなわらの小屋もどきなど、わしが一吹きで飛ばしてやるわ。コブタども、おとなしくわしの胃袋におさまるがいい」
狼はそう言うと、本当に一吹きでわらのおうちを吹き飛ばしてしまいました。
「ああっ、おうちが壊された~」
長女は慌てて、隣にある次女の木の枝のおうちへ逃げ込みました。
「ふんっ」
狼は、コブタが逃げ込んだおうちを見て、鼻で笑いました。
「こんなしょぼい小屋に隠れたところで、わしから逃げられるとでも思ったか。すぐに吹き飛ばしてやる」
狼はまたおうちに向かって一吹きし、木の枝のおうちは吹き飛ばされてしまいました。
中にいたコブタ達は、慌てて隣にあるレンガのおうちへと逃げ込みました。
「大変です~」
「狼さんがおうちを壊したの~」
コブタ達は三女に泣きつきました。
「ええっ、そうなの? まぁ、大変。外に来てるわ。どうしよう」
窓から外を見ると、狼がレンガのおうちを吹き飛ばそうとしているのが見えました。
「ちっ。やはりレンガともなると、わらや木の枝のようにはいかんか」
さすがの狼もレンガのおうちは吹き飛ばすことができず、腹が立ったので玄関のドアを蹴りつけて怒鳴りました。
「中にいるコブタども。あきらめてさっさと外へ出て来い」
出て来いと言われても、本当に出て行けば食べられてしまいます。
「どうしたらいいの~」
「ドアが壊されてしまうよ~」
「狼が入って来る前に逃げなきゃ。裏口から出ましょ」
三女に言われ、コブタ達は裏口から逃げました。
そうとは知らない狼は、まだ怒鳴りながらドアを蹴っています。
その間に、コブタ達はおうちを離れてお母さんブタがいる鉄筋のおうちへ逃げ込みました。
コブタ達は泣きながら、お母さんブタに事情を話しました。
「そんなことがあったの。かわいそうに。そうだねぇ、やっぱりこういう時は……」
お母さんに言われ、コブタ達はお母さんと一緒に警察署へ駆け込みました。
「助けてくださいっ。狼がおうちを壊して、あたし達を食べようとしているんです」
コブタ達は受付で必死に訴えました。
「うちを壊された? 器物破損だな。食われそうだってことは、殺豚未遂か」
コブタ達の訴えを聞いたおまわりさんが言いました。
「まだその狼はうちの近くにいるの?」
別のおまわりさんが尋ねたので、コブタ達はうなずきました。
「よし、それじゃあ、すぐに出動だ」
「オレ達が戻るまで待っててね、お嬢さん達」
おまわりさん達はパトカーに乗り込むと、レンガのおうちへ向かいました。
「どこかにいい弁護士がいないか、今のうちに探しておかないといけないね。損害賠償や慰謝料やら、取れるものは取らないと」
おまわりさん達が戻るまでの間、お母さんはそんなことを言いました。
結局、狼はサイレンの音で逃げたらしく、全国に指名手配されたのでした。
めでたしめでたし。