アリ・ババと盗賊
あちこちの村や街で盗みをはたらく盗賊達は、盗んだお宝をある山の洞窟に隠していました。
さらに、横取りされないよう、洞窟の入口には岩の扉があり、その扉を開けるには呪文が必要なのでした。
ある日、盗賊達がまた盗みをして、その戦利品を隠し場所まで持って来ました。
扉の前まで来ると、盗賊のお頭はいつもの呪文を唱えました。
「開け、ゴマ」
しかし、扉はまったく動きません。
「おかしいな。センサーの調子が悪いのか?」
お頭はもう一度、さっきより大きな声で呪文を唱えました。
しかし、扉はやはり開きません。
「故障でもしたか」
「あ、そーだ。お頭、わりーわりー」
手下の盗賊が頭をかきながら、お頭の方へ行きました。
「この前さ、呪文を変えたのよ。ほら、今って物騒な時代っしょ。せきゅりてぃってヤツ? たまにはぱすわぁど変えないとさ」
「たわけっ。だったら、ちゃんと報告しろ。で、呪文は何だ」
「えーとね。開け、ドア」
手下が言うと、岩の扉が開きました。
「どうせなら、もっとひねっておけよ」
「変わってるの、一単語じゃない」
「もしかして、閉じる時は『閉じろ、ドア』なの?」
他の仲間達も冷ややかな目です。
「だってさ、あんまし難しいと忘れちゃうじゃん」
「とにかく、勝手に変更されるとややこしい。元に戻しておけ」
「ほーい」
お宝を中へ入れ、呪文を元に戻すと、働き者の盗賊達はまた出掛けて行きました。
それらをずっと影で見ていたアリ・ババは、盗賊達が行ってしまうと呪文を唱えて中へと入り、宝物を運び出しました。
「パスワードは誰かに知られちゃダメだよ~」
こうして盗賊の上前をはねたアリババは、街へ帰って大金持ちになりました。
めでたしめでたし。





