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うさぎとカメ 其の四

「こんにちは。リポーターの白雪姫です。今日は、うさぎさんとカメさんがレースをする、ということで、中継に来ました。まず、うさぎさんに話をうかがってみましょう。こんにちは、うさぎさん。今日のコンディションはいかがですか?」

「調子はいいぜ。後で俺の駿足をゆっくり見せてやる。あ、駿足をゆっくりってのも変な話だな。カメラ、ちゃんと俺の足について来いよ」

「そこはヘリに乗って撮影しているカメラさんの腕次第ですね。おてやわらかにお願いします。では、カメさんにもお話をうかがってみましょう。こんにちは、カメさん。今日のレースの意気込みを聞かせてください」

「カメはのろいって言ったことを、うさぎに後悔させてやるんだ」

「そもそもこのレース、うさぎさんが『カメさんがのろい』って言ったのが発端だとお聞きしましたけど」

「そうっ。誰がカメはのろいって決めたんだよ。うさぎにだって遅い奴はいるだろうし、カメにだって速い奴はいるんだ。それをわからせてやる」

「そうですか。カメさん、握ったこぶしが震える程、力が入っているようです。

 あ、もう時間ですね。両者、スタートラインに並びました。緊張の瞬間……スタートですっ。

 あ、うさぎさんの姿がもう見えません。カメラさん、追い掛けてっ。カメさんはまだスタートラインをわずかに出たところです。コウラが重いって文句が聞こえてます。あたしも自力ではうさぎさんに追いつけそうにないので、中継車に乗ってお伝えします。カメさんもがんばってゴールしてね。

 さぁ、うさぎさんを追って、コースを走ります。うさぎさんはどこまで行ったでしょう。……あーん、うさぎさんってば、早すぎ。えーと、うさぎさんの姿は見えません。もうゴールしたんでしょうか。

 うさぎさんは……あれ? あの、うさぎさん? いいのかしら、こんな所で……。

 うさぎさんは現在、道端の木陰でお昼寝をしています。大胆不敵と言いましょうか、かなり余裕のある行動ですね。とても気持ちよさそうに眠っています。すごいですね。これは勝利を確信した上での行動でしょう。

 あら? あ、カメさんが追い付いて来ました。予想よりも速いスピードで追い上げてます。でも、うさぎさんはまだ眠ったまま……。あ、今、カメさんがうさぎさんを抜かしました。一体、誰がこんなレース展開を予想できたでしょうか。

 えーと、レース中に選手に触れたりすることは禁止されていますので、うさぎさんを起こしてあげることはできません。声ならいいのかしら。みんな、応援してるもんね。

 うさぎさーん、起きてくださーい。カメさん、行っちゃいましたよー。

 先頭を行くカメさんをカメラさんが上空から追っています。あたしも行かなきゃ。うさぎさーん、早く起きてね。あたし、先に行きますから。目覚まし時計、置いてってあげよっと。

 うさぎさんを置いて行くのはつらいですが、中継車はカメさんを追います。カメさん、重いコウラというハンディを文字通りに背負いながら、懸命にゴールへ向かいます。

 もうすぐゴールの一本松。そこにはうさぎさんやカメさんのお友達が待っています。カメさん、あと少しですから。

 あら? 砂嵐かしら。あ……違います。カメさんの後方から、砂煙をあげながらうさぎさんがものすごい巻き返しをはかっています。これで勝利の行方はますますわからなくなってきました。

 ゴールまで数メートル。でも、うさぎさんの追い込みもすごいです。

 あぁー、両者同時にゴール! どちらが先だったのでしょう。これはVTRでの判定になりそうです。ヘリからカメラさんが降りて来ました。結果はどうですか?」

「んー、これを見る限り優勝は……白雪姫!」

「あたし?」

「えーっ」

「何だとっ」

「あの……あたしが優勝なんですか?」

「うん。ほら、きみが乗る中継車が先にゴールのラインを越えてるでしょ。誰が見ても、きみが優勝」

「えー、どうしよう。すみませーん。リポーターのあたしが優勝してしまいました。あ、これが優勝杯ですか。わ、結構重いですね。賞金まで出るんですか。わぁ、こんなに? すごーい。スポンサーさん、太っ腹ですね。何買おうかしら」

「ちょっと待ってよ」

「これは俺達のレースだろっ」

「外野からの声もありますが、レースも無事に終了しましたので、スタジオにお返ししまーす」

「 」の中は改行しないものですが、ずっと白雪姫がリポートし続けるので

読みやすくなるように改行しました。

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