靴屋の小人
靴屋さんはとっても貧乏で、一足分の材料を買うだけで精一杯でした。
「靴を作るのは明日にして、今日はもう寝よ」
作業場に靴の材料を置いて、靴屋さんは休みました。
夜中になって、どこからともなく小人が数名現われました。
「これが靴を作る革だな」
「一足分だけだね」
「こんな貧乏になるまで、ここの主人は何やってたんだよ」
「私達で靴を作ってあげよう」
「とってもステキな靴にしてあげましょ」
小人達は靴を作ってあげることにしました。
「えーと、まずここをこうして……」
「で、これをくっつけるんだよね」
「あんまりいい材料じゃねーな、これ」
「私は赤い靴がいいと思います」
「でも、これって男の人の靴ですよ」
わいわい騒ぎながら、小人達は靴を作ってゆきました。
「よーし、できたな。へへ、いい感じ」
小人達は満足して帰って行きました。
朝になり、靴屋さんが起きてきて、できあがっている靴を見てびっくりしました。
「な、何、これっ」
そこには、左右の寸法もデザインもバラバラの靴が置かれてありました。
「誰……こんなことしたの……」
もう新しく靴を作る材料はなく、買うお金もありません。
靴のない靴屋では商売が成り立たないので、靴屋さんは廃業しました。
めでたしめでたし。