うさぎとカメ 其の一
うさぎとカメが、どちらが早いか競争することになりました。
「じゃ、あの一本松に先に着いた方が勝ちだぞ」
「りょーかーい」
「負けたらハンバーガー、おごれよ」
ベジタリアンではないうさぎは、そんな条件を出しました。
「そうはいきませんっての。絶対、負けないよ~」
「悪いけど、手加減してやる気はないぜ」
「そんな失礼なこと、していただかなくても結構ですよーだ。後でほめ面かくな」
「ほめてどうすんだよ。それを言うなら、ほえ面だろ」
「そんなこと、どうでもいいの。位置について」
うさぎとカメが並び、よーいドンで同時に走り出しました。
うさぎはものすごいスピードで走り、カメとの距離はあっという間に広がってゆきました。
「よそのうさぎは昼寝なんてバカなことしたけど、俺はそんなことしないもんねー」
うさぎは休むことなく、ゴールの一本松を目指しました。
「おっしゃあ。ゴー……え?」
一本松にタッチしようとしたうさぎは、すでにそこに立っていたカメを見付けました。
「おいらの勝ち~」
カメは嬉しそうに言いました。
「うそ……だって、確かに俺の方が先に走って……」
「言い訳なんて、みっとも恥ずかしい。勝ちは勝ちだよん」
カメが双子だと気付いてないうさぎは、約束通り、カメにハンバーガーを買ってあげました。
「何で二つなんだよ。腹こわすぞ」
「え……だ、大丈夫。んじゃ、さよなら~」
カメはバレないうちに、さっさと帰って行きました。
めでたしめでたし。