浦島太郎
子供達にノロマといじめられていたカメを、太郎が助けてやりました。
「どうもありがとうございました。あの、お名前を」
「いやいや。浦島太郎だなんて、名乗る程の者じゃないって。と~ぜんのことをしたまでだからさ」
「太郎さんとおっしゃるのですね」
「え、どうしてそれを」
そういうくだらない掛け合いはともかく、カメは太郎に何かお礼をしたいと言い、竜宮城に来ないかと誘ってみました。
「それじゃ、あたしの背中に乗ってください」
「え、いいの? つぶれない?」
「大丈夫ですよ。じゃ、行きますね」
太郎を乗せて、カメは海の中へと入って行きます。
「ちょ、ちょっとタンマ」
「はい? どうかされました?」
「これからどこ行くの?」
「え、ですから、竜宮城に」
「そのりゅーぐーじょーってのは、どこにあるの?」
「海の中です」
カメは当然のことを答えました。
「えーっ、海の中ぁ? も、もういい。おいら、帰る」
「そんなに怖がらなくても平気ですよ」
「平気じゃないっ。おいらは泳げないんだから」
「……だって、太郎さんは漁師じゃあ……」
「水中メガネやシュノーケルがないと、水の中なんて入れないの。いいから、戻って。もうお礼なんてどうでもいいから」
「そうですか……」
カメは残念そうでしたが、いやがる太郎を無理に連れて行くこともできないので、浜辺へ戻りました。
「竜宮城へお連れできなかったのが残念です。それじゃ、せめてものお礼に」
カメはワカメをたくさん太郎にあげました。太郎も、これはありがたく受け取りました。
そのままカメは海へと戻り、太郎はそのワカメのおかげで死ぬまで抜け毛に悩むことがありませんでした。
めでたしめでたし。