白雪姫 其の六
王妃の毒リンゴで白雪姫は倒れてしまい、小人達はガラスの棺にその身体を入れました。
そこへ王子が通りかかり、結婚を申し込むために彼女に会いに行くところだったのだと言いました。
最後のお別れに、と王子は白雪姫のくちびるに自分のくちびるを近付けます。
「あ、キスするよ」
見ていた小人Cが、隣にいた小人Eに言いました。
「白雪姫の意志も聞かないで、いいのかねぇ」
「本人の意識がないのだから、仕方あるまい」
小人Dが言い、それもそっか、とみんな納得しました。
「あのさぁ。彼、王子というわりには、少し年齢が高そうだね」
小人Bの言葉で、小人達の視線が王子の背中に突き刺さりました。
「でも、白雪姫は青春真っ直中だよね」
「つまり、これってロリ……?」
さらに小人達の視線が、王子の背中にグサグサと刺さりました。
「そっか。お兄さんも好きなんだねぇ~」
「うるさいっ!」
小人Fの言葉でとうとうキレてしまった王子は、大声で怒鳴りました。
小人達は木の影に慌てて隠れ、王子は続きをしようとしました。
が、離れたところからでも、小人達の視線はしつこく突き刺さります。
「愛があれば年の差なんて、というのを聞いたことがあるな」
小人Dがこそこそとささやき、小人Cがうんうんとうなずきます。
「好きだって思えば、そんなのは関係ないもんね」
「おいらにもそういう相手が現われないもんかねぇ」
「E、恋人がほしいの?」
「私もほしいなぁ」
横から小人Bが言います。
「おいら、ラブラブ~になりたいよぉ」
「けどさ、誰でもいいって訳にはいかないだろ。あ、王子がこっち睨んでる」
小人達のひそひそ話と視線で、王子はまるで集中できません。
「お前らっ、少しの間でいいから、どこかに消えてろっ」
「えー、だってキスみたいしなー」
小人Fが口を尖らせて言い返しました。
「見たいよー」
「こちらに遠慮はなさらず」
「うるさいっ。結婚式の二次会みたいなヤジを飛ばすなっ」
どうしよう。うるさいから、もう起きちゃってるんだけど……いつになったらちゃんと起きられるのかしら。
王子と小人達の攻防の中、白雪姫は目を開けるに開けられない状況で、ゆっくりと陽は傾いてゆくのでした。
めでたしめでたし。