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里に立って言えば千の口(短編集)  作者: 碧衣 奈美


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おむすびころりん

 ある所に、おじいさんがおりました。

 山で一仕事を終え、お弁当を食べることにしました。お弁当はおむすびです。

「いっただきま~す」

 包みを開けて、おじいさんはおむすびを取ろうとしました。しかし、それよりわずかに早く、おむすびがころころと落ちてしまいました。

「あ、わしの昼飯、待てぇっ」

 ですが、坂道なのでおむすびはおじいさんの言うことを聞かず、ころころと転がります。

「あ~っ」

 おむすびが転がって行く先の地面に穴があり、おむすびはその穴にころりんと入ってしまいました。

「落ちちまっただぁよ」

 おむすびが入った穴は小さく、おじいさんが手を入れようとしても入りません。

 がっくりとなったその時、おじいさんの耳に何か聞こえてきました。


「おむすびころりん ころころりん」


 声は確かに穴の中から聞こえたように思えました。

「何だぁ、今の?」

 おじいさんは試しに、もう一つおむすびを穴に入れてみました。


「おむすびころりん ころころりん」


 やはり声は穴の中から聞こえているようです。

 しかも、よく聞くと複数のようでした。

「へぇ、面白い」

 おじいさんはその声がすっかり気に入って、またおむすびを穴に入れてみました。


「おむすびころりん ころころりん」


 またまた穴から声が聞こえてきました。

「この中、誰かいるのかな。……あー、しまったぁ。わしのおむすびがぁ」

 声に気を取られていたおじいさんは、自分のお弁当であるおむすびを全部穴に入れてしまっていたのでした。

 残っているのは、おむすびを包んでいた竹の皮だけです。

「おーい」

 おじいさんは穴に向かって叫びました。

「わしのおむすび、返してーっ」

 しばらく穴を見ていたおじいさんでしたが、穴からこんな返事が聞こえました。


「ごちそーさまでしたっ」


 かわいい声がそう言い、おじいさんは何も言えませんでした。

 おむすびを穴に入れたのは自分なので、怒ることもできません。

 お弁当を食べそこねたおじいさんは力が入らず、その日は仕事を切り上げて帰ることにしました。

 これからは穴を見ても、見なかったことにして通り過ぎようと考えるおじいさんでした。

 めでたしめでたし。

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