白雪姫 其の五
王妃に殺されそうになった白雪姫は森へ逃げ、小人達と暮らすようになりました。
しかし、白雪姫の命を狙う王妃が持って来た毒リンゴによって、白雪姫は死んでしまいました。
ガラスの棺に入れ、小人達は白雪姫の死を悲しんでいました。
そこへ、王子が通りかかりました。
「どうしてみんな、泣いてるの?」
「白雪姫が起きないからさ」
小人Fが、涙を手の甲でぬぐいながら答えました。
「起きない? じゃ、わたしにまかせてっ」
王子はそう言うと、シャキーンと水性マジック(黒)を取り出しました。
「これで、こうして……」
王子は白雪姫の顔に、そのマジックでヒゲなどを書き始めました。
「わ、面白そう」
「俺もやってみてぇ」
「ぼく、こういうのってやったことないけど、楽しそうだね」
「一度には無理だから、順番にやらないといけないよね」
小人達は口々に言いました。
ところが、それに異論を唱える小人が二名おりました。
「水性ではダメだよ」
「落書きの基本は、やっぱり油性の極太マジックだろ」
小人Gと小人Hが小屋へ走り、その手にマジックセットの箱を持って出て来ました。
小人達はそれぞれにマジックを握ると、白雪姫の顔に落書きを始めました。
「お前ら、いい加減にしろっ」
いきなり白雪姫がガバッと起き上がり、驚いた小人達は悲鳴を上げて木の後ろに隠れました。
「ほらね、起きたでしょ?」
王子が小人達の方を見て、にっこりと笑いました。
小人達によってとんでもない顔にされてしまった白雪姫は、王子の言葉で再びその場にがっくりと崩れてしまったのでした。
めでたしめでたし。





