不思議の国のアリス
アリスはしばらくあてもなく歩いていると、誰かがお茶会をしているのを見付けました。
「あの……すみません」
大きなテーブルにたくさんのカップが並んでいますが、席についているのは二人だけでした。
「おや、三月うさぎさん。かわいいお客さんが来たようだよ」
「やったね、帽子屋さん。やっぱおいら達だけじゃ、さみしーもんね」
よくわかりませんでしたが、とりあえずアリスは歓迎されたようでした。
「で、きみは何の記念日なんだい?」
一眼レフを首から提げた帽子屋が、アリスにそんなことを尋ねました。
「記念日? いえ、あたしは別に……」
「おっと、何でもない日だ。めでたいやぁね」
なぜか嬉しそうに三月うさぎが言いました。
「まぁ、好きな場所にお座りよ。すぐにおいしいお茶を淹れるからね」
アリスが適当な場所に座ると、帽子屋はカップにお茶を淹れてくれました。
「あの……お砂糖、とってください」
「はいはい」
帽子屋は返事をすると、自分の目の前にあるシュガーポットにシャッターを切りました。
「さすが帽子屋さん。いい仕事しますなぁ」
「いやいや、それほどでも」
「あ~、フラッシュの光が目の前を浮いてるよぉ~」
意味がわからず、アリスはもう一度言いました。
「あの、お砂糖をとってもらえますか」
「うん、いいよ」
返事をすると、帽子屋はまたシャッターを切りました。
「砂糖が好きなんだね、お嬢さん。食べても太らないタイプ? おいらと一緒だね」
「……」
あたし、お砂糖を「取って」ほしかったんだけどな。シュガーポットなんか「撮って」もらっても、全然役に立たないし……。
アリスは仕方がないので、席を立って自分でシュガーポットを取りに行ったのでした。
めでたしめでたし。





