シンデレラ 其の三
お父さんが亡くなり、シンデレラは継母と二人の姉と暮らすことになりました。
「ねぇ、見てみて、シンデレラ」
継母がかわいいピンクのドレスをシンデレラに見せました。
「ほら、かわいいでしょ?」
「う、うん……すごくかわいいよ」
「でしょ、でしょ。我ながら最高の出来だわ。ね、着てみて」
「え、あたしが着るの?」
「当然でしょ。シンデレラのために作ったんだから。あたしとしては、このすそのフリルがいいんじゃないかって思ってるの。もちろん、胸元のリボンだって、目立ってかわいいけど。これで、今度の舞踏会ではシンデレラが一番の人気者になるわよ」
継母はとても嬉しそうな顔で、自分が縫い上げたドレスをシンデレラに押し付けました。
「舞踏会って……あたしはあまり気が進まないんだけど」
「やぁだ、何言ってるの。すっごく楽しいパーティなのよ。お城のパーティなんだから、お料理だっておいしいし。何と言っても王子様が出席されるのよ。これを行かないなんてもったいないわ」
「で、でもさ。ほら、このドレスに合う靴がないし」
「それなら心配いらないわ」
姉が手に薄いピンクのハイヒールを持って現われました。
「絶対そう言うだろうと思って、ちゃーんと作っておいた」
「え、姉さん、自分で靴を作ったの?」
「当たり前よ。手先の器用な姉を持ったことを感謝しなさい」
手先の器用さだけで靴が作れるとは思わなかったシンデレラですが、姉に靴を渡されては受け取らない訳にもいきませんでした。
「よかったわね、シンデレラ。当日のメイクはあたしにまかせてね。う~んと美人にしてあげるわ。これで、王子様もあなたのとりこよ。きっとダンスのお相手はシンデレラが独り占めね。きゃ~」
「え、あの……あたし、ダンスは踊れないし」
「何だ、そんなこと気にしてたの?」
もう一人の姉が言いました。
「それくらい、ちゃんと教えてあげるわ。基本的なステップさえ覚えてしまえば、後はどうにでもなるから。それに、できなきゃできないで、王子様がうまくリードしてくれるわよ。ほら、練習しよう」
シンデレラは姉に指導されて、ダンスの特訓を始めさせられました。
「なーんだ。幸せそうにやってるじゃない」
窓からこっそりと中の様子を見た魔法使いは、にこにこしながら言いました。
「じゃあ、ここはもういいかな。ガラスの靴は他のシンデレラにあげるとしようか」
こうして、シンデレラは継母や二人の姉と一緒に、お城の舞踏会へと行ったのでした。 めでたしめでたし。





