白雪姫 其の三
白雪姫は継母の王妃に殺されそうになり、森へ逃げて小人達に助けられました。
そして、小人達の小屋で暮らすことになりました。
「帰ったぞー」
小人達が仕事から帰って来ました。
「あ、お帰りなさい」
白雪姫は、小屋の外に干してある洗濯物を取り込もうとしているところでした。
「あ、オレのシャツ、まだら模様になってる……」
「私のは、全体の色が変わってる……」
まだ取り込まれていない自分達のシャツを見て、小人Cと小人Bがぼそりとつぶやきました。
「お前、また色柄物を一緒にして洗濯したな」
「ご、ごめんなさいっ。色落ちするって思わなくて」
小人Aに叱られ、白雪姫は謝りました。
「まあまあ、A。シミの一つや二つ、勘弁してやれ」
「あーっ」
小人Dがとりなしていると、小屋の中から小人Eの悲鳴が聞こえてきました。
何事かと全員が小屋へ入ると、小人Eが泣きながら何か抱えていました。
「おいらのパズルがぁ……」
「ごめんなさいっ。掃除していたら、引っ掛けて落としちゃったの……」
小人Eの完成間近だったジクソーパズルは、ほとんどばらばらになっていました。
「え、えっと、E。パズルはまたがんばるってことで、ね? 今夜の夕食、ちょっとあげるから、元気出して」
小人Cが小人Eをなぐさめます。
「あ、あの、あたし、がんばって色々作ったから」
白雪姫に言われてテーブルを見た小人達は、その場で固まってしまいました。
「おい、白雪姫。……夕食は?」
「あの、これじゃダメ、かしら」
小人Aの言葉に小さくなりながら、白雪姫は言いました。
テーブルの上には、フルーツケーキ、シュークリーム、お汁粉、プリン、クッキーにパイ……などなど、たくさんのお菓子が並んでいました。
「こういうのはな、世間ではデザートって言うんだ。そのデザートは、それなりのメインを食ってから食うもんなんだぞ」
小人Aは怒鳴りたいのを我慢して、諭すように言いました。
「わかってるんですけどぉ……失敗しちゃって」
白雪姫の言葉で小人達が小屋の外にある井戸の方へ行くと、コゲついたなべやフライパンがたらいの中につけられていました。
「うーん、お菓子はあんなに上手にできるのに、どうして総菜の類はこうも見事にできないのかなぁ」
小人Bが首を傾げました。
「縫い物をしてるはずが、気付くとどんどん端切れができてたりするよね」
「掃除すると、前より散らかるだぁよ」
「城で生活していると、こうなってしまうものなのか?」
小人達にあれこれ言われても、白雪姫は反論できません。
「えーい、お前にこの役は無理だ。明日っから代われっ。お前が外へ出ろ。俺が中のことをするから。でないと、いつか俺達はゴミためで糖尿病にされるっ」
小人Aに断言されてしまった白雪姫。
翌日から「白雪姫」を小人Aに渡し、自分は「小人A」となって外で仕事をするようになったのでした。
めでたしめでたし。