笠地蔵 其の二
おじいさんは笠を編んで町へ売りに行きましたが一つも売れず、がっかりして家路につきました。
途中、五体のお地蔵様が立っている場所を通りかかり、みぞれがべっちゃべちゃ掛かっているのを見て気の毒に思いました。
「そうだ。売れ残りで悪いけど、これがあれば少しはみぞれもふせげるよね」
おじいさんは、順番に笠をお地蔵様にかぶらせてあげました。
が、おじいさんはとても不器用な人だったので、笠には所々に穴があいています。
なので、せっかくかぶらせてあげても、雨漏りしているかのようにみぞれがお地蔵様の顔を濡らしました。
「お前、何だよ、この笠はっ」
最初にかぶせてもらっていたお地蔵様が、たまりかねて言いました。
「何って……えっと、あたしが編みました」
「んー、でもこれはちょっとねぇ」
別のお地蔵様が苦笑いしています。
「売れ残りって言ってたけど、これは売り物には向かないよ」
さらに別のお地蔵様が言いました。
「貴様、自分が客の立場であった場合、これを買おうと思うか?」
「えーと……たぶん、買いません」
お地蔵様の質問に、おじいさんは小さくなって答えました。
「こうなったら、おいらが教えてやるよ。ちょっとひどいもん、これ」
お地蔵様がそう言い、他のお地蔵様に言いました。
「みんなも手伝って」
仕方ないな、と口々に言い、おじいさんはお地蔵様達と一緒に家へ帰りました。
お地蔵様に編み笠の編み方をしっかり教えてもらい、おじいさんはようやくまともな笠を作れるようになったのでした。
めでたしめでたし。