三匹のコブタ 其の二
ある所に、仲のよい三匹のコブタ姉妹がいました。
三匹はそれぞれ自分達のおうちを作ろうということにし、長女はわらで、次女は木の枝で、そして、三女はレンガでおうちを作りました。
どのおうちも上手にできて、コブタ達はみんなで喜んでおりました。
「けっ、こんなしょぼくれた小屋なんか作りやがって」
ある日、狼が現われ、長女と次女のおうちを次々に吹き飛ばしてしまいました。
コブタ達はおうちを失い、急いで三女のいるレンガのおうちへ逃げ込みました。
「レンガか。これは少しばかり難航するかもな。ま、この俺にかかればレンガだろうと何だろうと、知ったことじゃないぜ」
吹き飛ばすのは無理だろうと思った狼は、まずは試しとばかりにレンガの壁を蹴ってみました。
その途端、ガラガラと大きな音をたてて、レンガのおうちは実にあっけなく壊れてしまいました。
「きゃああっ」
「……」
ガレキに囲まれるようにして、三匹のコブタが震えています。
「おいっ」
狼に怒鳴られ、コブタ達がびくっと震えました。
「このレンガの家を造ったのは誰だ」
「あ……あたし、です」
三女が恐る恐る手を上げました。
「わらや木ならわかるが、どうしてレンガ造りの建物がこうも簡単に壊れるんだ。お前、どういう建て方をしたんだ」
「え、えっと……レンガを積んで」
「まさかとは思うが、積んだだけとか……?」
「だ、だって、レンガのおうちなんて、どうやって作ったらいいのかわかんないもん」
「だからって……あのなぁ、つなぎになるような泥とか、そういうのを間に挟もうとかは思わなかったのか?」
「そんなことしなきゃいけなかったの?」
コブタの言葉に、狼は完全にあきれてしまいました。
「積み木じゃないんだぞ。ドアの開閉なんかして、よく今まで崩れなかったな」
「あの、ドアは開かないの。立てかけてただけで」
「? じゃ、どうやって出入りしてたんだ」
「出入りする隙間の分だけ、レンガを積まなかったの。あと、天井ってどうやって作ったらいいかわかんなくて。未完成のおうちなの」
「……それは『おうち』じゃない。単なるレンガの囲いだっ。ちゃんと作り方を勉強してから作れっ。いいか、だいたいお前らはみんな、基礎工事からしてなってない。まず土台をだな……」
ガレキの中で、なぜかいきなり大工さん養成講座が開講されたのでした。
めでたしめでたし。