うさぎとカメ 其の二
「ひどいわ、うさぎさんたら。いっつもカメは遅いだなんて」
カメが怒って言いました。
「遅い奴を遅いと言って、何が悪い。本当のことだろ」
「じゃ、競争しましょ。カメの実力をみせてあげるから」
「いいけど……お前が走るのか? レースしなくても、結果は見えてるぞ」
うさぎが鼻で笑いながら言うと、カメは首を振りました。
「ううん、あたしは走らないわ。遅いもん」
「……何を認めてんだよ。だったら、怒って勝負を挑むな」
「代わりに別の子に出てもらうわ。カメ一族の代表として」
「ふぅん。俺は誰が相手でもいいけど」
「言ったわね。みてらっしゃい」
うさぎとカメはコースを決め、翌日レースをするということで、その日は別れました。
そして、次の日。
「……何だよ、そいつ!」
カメの連れて来た「代表」を見て、うさぎは怒鳴りました。
「だから、一族代表のカメよ」
「そいつ、どう見たってガメラだろっ」
「そうよ。でも、カメでしょ。ここにいるのがモスラだったら、文句を言われても仕方がないけど。ガメラはカメだもーん」
「……」
「じゃ、レースしましょ。スタートラインはここね」
カメが木の枝で地面に線を引きました。
「うさぎさん、行くわよ~」
カメは嬉々とした声で、うさぎに言いました。
俺が前に出たら、絶対に火炎放射されるな……。
スピードはともかく、身の危険を感じたうさぎは、潔く棄権を伝えたのでした。
めでたしめでたし。





