白雪姫 其の二
白雪姫が生きていると知った王妃は、魔法の力で毒リンゴを作り出しました。
それを白雪姫に食べさせるため、リンゴ売りのおばあさんに化けて小人達の小屋へ向かいました。
白雪姫を見付けると、王妃はリンゴをすすめました。
「おいしいリンゴはいらないかい?」
「わぁ、おいしそうね。いくら?」
「味見ってことで、タダでいいよ」
白雪姫は喜んでリンゴをもらい、あっという間に全部食べてしまいました。
「あー、おいしかった。なかなかジューシーなリンゴだったわ」
「そ、そうかい?」
王妃は、毒リンゴを食べてもまるで倒れる様子のない白雪姫を見て呆然としていましたが、何とか愛想笑いをしてごまかしました。
「おばあさん、よかったら入る? リンゴをもらったお礼に、お茶でも淹れるから」
「じ、じゃあ……いただこうかね」
白雪姫が倒れるところを確認したい王妃は、小屋の中へと入りました。
「……何をしてたんだい?」
小屋へ入った王妃は、テーブルの上に所狭しと並べられている物を見て、つい尋ねてしまいました。
「え? ああ、カメラの手入れをね。最近、はまっちゃって。森の中はいい被写体が多いのよ。さっきレンズが曇ってるのを見付けて、それを磨いているうちに他の部分まで掃除を始めちゃったの。小人達には、カメラじゃなくて小屋を掃除してくれって言われるんだけどね」
テーブルの上だけでなく、小屋の中はかなり散らかっています。
笑いながら言う白雪姫を見て、王妃は何となく小人達が気の毒に思えてしまいました。
それにしても、白雪姫が倒れる様子はまるでありません。
白雪姫にお茶を出されたものの、これに毒が入っているのではないかと疑ってしまった王妃は、なかなか手をつけることができませんでした。
「おいしいわよ」
「あ、猫舌だから」
王妃はかなり苦しい言い訳をしました。
「ところで……本当はお前さん、いい家のお嬢さんじゃないのかい? こんな狭くて汚い小屋にいて、身体の具合は悪くならないのかね?」
さりげなく王妃はそんなことを尋ねてみましたが、白雪姫は首を横に振りました。
「全然。あたしはとても元気よ。この前、間違って毒キノコを食べちゃったんだけど、まるで影響はなかったし。元々、どこででも生きて行ける力が備わっていたみたいね」
「は? 毒キノコ……?」
駄目だ、こいつ。毒リンゴを食ったことにも気付いてねぇー。
王妃は毒リンゴ作戦が失敗したことを、思い知らされました。
「……帰る」
「え、もう? ゆっくりして行けばいいのに」
白雪姫は遠ざかって行く王妃を、小屋の外で手を振って元気に見送りました。
「また来てね~」
二度と来るかっ。
王妃はそれ以降、二度と白雪姫暗殺計画は立てませんでした。
めでたしめでたし





