桃太郎 其の一
桃太郎の所へ犬と猿ときじがやって来て、家来になるからきびだんごをください、と言いました。
桃太郎はきびだんごをあげ、三匹を家来にして鬼ヶ島へ向かっていましたが、ふと気になることがあって立ち止まりました。
「……貴様は、きじだな?」
「はい、そうですが」
ふいの質問に、きじは首を傾げながらうなずきました。
「で、貴様らが犬と猿……」
「そうだよ」
「見りゃわかんだろ」
「では、なぜ貴様は『鳥』ではなく『きじ』なのだ?」
「ええっ、そんなこと言われても……」
なぜ、と問われても、きじは答えられません。生まれた時からきじなのですから。
「いや、待て。貴様がきじなのはいい。では、貴様達は何だ」
「何って……だから、犬なんだけど」
「俺は猿だから、猿だ」
何だ、と言われても、犬と猿だって困ります。
「きじはきじだと言ってるんだ。貴様らも何か種類があるだろう。チワワとかリスザルとか」
「……鬼退治にふさわしくなさすぎる種類だね」
「俺達、そんなチビに見られてんのか」
「とにかく、貴様らは身元がわからん。鬼の回し者ではないだろうな」
「な、何でそうなるんだよっ」
犬と猿はハモッて抗議しました。
「じゃ、俺は柴犬」
「俺は日本猿。それでいいだろ」
「身分詐称ではあるまいな」
「ち、違うってば」
犬と猿はまたまたハモッて抗議しました。
とにかく、話はそれで落ち着いたので、一行は無事に鬼退治へと向かいました。
めでたしめでたし。