罪
男は罪を犯した。
糾弾される様子を思い起し、彼は体を身震いさせた。
ほんの出来心だった。
興味があったのだ。
あの形状、そして色。
幸福の笑みを浮かべる妻。
あの普段は無表情の妻が……。
だけど、今は、その妻に糾弾されるのは確定で、彼は後悔に苛まれる。
罪が暴かれるまで、あと30分だろうか……。
彼は柱時計に目を向ける。
まて、あと30分なら間に合うはず。
彼は往復時間、購入時間を計算して、家を飛び出した。
「ちょっと!なんで、私の愛しのプリン様がなくなっているの?!あんた食べたでしょう!!」
彼は罪を隠蔽しようと、近くのコンビニに出かけた。
けれども売っておらず、次の店に行こうと思ったら、電話がかかってきた。
それは、冷蔵庫に彼女のお気に入りのプリンがなくなっており、それを糾弾する妻からの電話であった。
「『プリンの甘い罠』を買ってくるまで、帰ってこないでよね!」
妻はそう言うと電話を切り、男は大きな溜息をついた。
けれども、あのプルンプルンとした歯ごたえ、甘みを思い出すと、その憂鬱さもなくなる。
「二個買って帰ろう……」
男はそうつぶやき、次なるコンビニへ足を運んだ。