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幻想的


 海の中にいるような幻想的な雰囲気がそこにあった。

 世界は青色で、透明なクラゲが気持ちよさそうに宙を舞っている。草花はゆらゆらと揺れ、天からは優しい光が落ちてきている。


「ここは……?」

「ここはずばり!異世界だ!」


 彼の問いに答えてくれたのは背後にいた男だ。

 無精ひげを生やしており、髪はまるで落ち武者のように、乱れている。服装も戦国武将のそのままなので、彼は本物の落ち武者のようだ。


「驚くな。これはコスプレだ。俺は君と同じ現代日本人だ!そして共にこの異世界に召喚された」

「はあ……」


 恐らく、偽物の刀を腰から鞘ごと彼は抜き取った。


「この刀をやる。俺と戦え。デスマッチだ!生き残ったほうが本物の勇者として認定される」

「に、認定?っていうか生き残るってなんすか?!」


 彼は理解がまったく追いつかなかった。 

 そもそも異世界にいることすら、よくわからない。

 確か、彼は電車に乗っていたはずだ。

 そして目的の幻想駅に降りたとたん、この世界だ。


「君はなぜ幻想駅を目指した?それは異世界に来たかったからだろう?勇者は一人だと決まっているのだ。だから君は死ななければならない」

「あの、いや、俺は別に勇者なんて目指してないし、異世界もまったく……」

「抜け!そして戦え!」


 落ち武者のコスプレした男の目は真っ赤で、正気を失っているようだった。

 投げられた刀を受け取り、彼は仕方なく鞘から抜く。


「なに?!それは伝説の宝刀の龍〇丸ではないか!なぜ、お前が!!」

「は?」

「そんなの卑怯だ。まさか、これが龍〇丸だったとは。あやつめ!」

「男、その刀を寄こせ!」

「え?はい?」


 落ち武者は状況をまったく理解できてない彼から無理やり刀を奪い取ろうとした。


「ひゃあああああ」


 男の悲鳴が上がる。

 刀が勝手に彼を切りつけ、その胴体を切り捨てていた。


 ぴっろろろーん。


 とたんに間抜けが音がした。


『落ち武者死亡。選ばれたのはあなたです。葛城隆太』


 アナウンスがどこからともなく流れ、スポットライトが彼に当たる。


『さあ、ここから勇者として旅を続けてください』

「いや、興味ないから!っていうか元の世界に戻してください!」

『どうしてですか?あなたは勇者ですよ。好みの女性を侍らせてハーレムパーティも作れるし、レベルもSSSなので無双し放題。ちまみに不死身です』

「いや、それでも……」

『なんだかやる気がない人ですね。落ち武者に勇者になってもらえればよかったかな。仕方ない!敗者復活!はい、落ち武者。今度こそ勝ちなさい』


 切り離されたはずの胴体がくっつき、落ち武者は再び立ち上がった。


「ぞ、ゾンビ?!」

「違うぞ。かれこれ今回で2000回目の挑戦だ。ちなみに1999回死んでる」

「それってゾンビ?いやあなたが不死身なんですね!どうぞ勝ちを譲ります」

「だったら死んでくれ」

「死んだら元の世界に戻れますか」

「無理だな。一生ここで勇者候補と戦うことになる」

「それは勘弁っすよ!」


 ハーレム作り放題、レベルSSSで不死身な勇者になるか、ここで一生勇者候補を戦うか、それを天秤にかけ、彼は決めた。


「あんたを倒す!」

「それでこそ我がライバルだ!」


 そうして、落ち武者は今日も見事に殺された。

 次の勇者候補が現れる時には再び復活して、きっと2001回目の挑戦をするだろう。

 ちなみに落ち武者は、コスプレではない。

 彼は正真正銘の落ち武者であり、かれこれ400年以上も異世界で彷徨っている……。


 


オチがいまいちやった。


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[一言] 落ち武者、かわいそう。
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