表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

最近

「最近、ちょっと太ってきたわ」

「最近、ちょっと飲みすぎかな」


 両親のその言葉を聞きながら、いや、最近じゃねーだろ!

 とツッコミを入れたい気持ちを抑える。


 母さんはずっと前から太ってるし、父さんはいつも飲みすぎて、テーブルの上で寝るじゃねーか。

 最近じゃねーから!


「やっぱりダイエットしようかしら。今日から1日林檎だけ」

「今日から禁酒するぞ!」


 これこれ、また言っている。

 っていうか、そう言いながら夜になると普通に飯食ってる母さんに、父さんは翌日には今日は疲れたからって、ビール飲んでるよな?


「……智樹、帰ってこないわね」

「どこ行ったんだろうな」


 だったら、警察に捜索願いを出してくれ。

 俺の死体はまだ山の中なんだって。

 けれども今日も俺の言葉は届かない。

 家の飼いネコのタマだけが、にゃーと泣いて俺を慰めてくれる。


『あの、そろそろ成仏されては?』

『は?俺の死体がちゃんと供養さえるまで、あの世に行かねぇっていってるだろう?』

『ですが、いつになるか……』

『ああ、わかんねぇなあ』


 死神は残念そうに溜息をついている。

 俺は一年前に山で遭難して死んでしまった。自殺じゃねーぞ。

 魂だけの存在で、幽霊って奴なんだけど、成仏する前に両親を見てみたいと言ったら、死神の野郎が連れてきてくれた。

 んで、この両親見てると、飽きねーの。

 だから、俺は両親が俺の体を見つけてくれるまで、成仏しないことにした。


『本当、成仏してください!』

 

 死神は細い顔をしたサラリーマン風の男で、泣きそうに俺に頼み込む。


『やだね!』


 今日も俺はそう答えて、家に居座る。


「あ、今日は特売の日だったわ」


 いや、母さん。それ昨日だった。

 本当うちの両親おもしれー。


(おしまい)

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 我が家が楽しすぎて、地縛霊にならないように。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ