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スローガン


「それで私のスローガンは、規律遵守でございます。ですから、職場では遅刻厳禁、私語厳禁、残業禁止、もちろん男女交際禁止でお願いします」


 本日、部署にやってきた新しい部長は黒縁眼鏡、髪は七三に分けていて、50代くらいの痩せた男だった。

 眼鏡は瓶底で、光で反射しており、その隠された目はよく見えない。

 話しながら何度もフレームを触ったり、すこし落ち着きのない男だった。


「おいおい。俺たち社会人だろ?遅刻厳禁、残業禁止はわかるけど、私語禁止とか男女交際禁止とか学生かよ」


 僕の隣で、同期の中村が小さい声でぼやく。


「っていうか、あの人独身そうじゃん。もしかして何か酷いトラウマがあるんじゃない?」


 中村の隣の山下さんがそれに答えるように返した。どちらも小さい声で近くにいる僕にしか聞こえないようだった。けれども内容は聞こえなくても話していることはわかる。


「そこ!私は職場規律遵守と言いましたよね!そこの二人、廊下に立っていなさい!」

「は?」

「え?」


 僕も思わず声を出しそうになったくらい驚いた。他にも数人部屋にはいて一気にざわつく。


「皆さん、私は私語厳禁だと言いましたよね?皆さんもそろって廊下に立ちますか?」


 眼鏡をきらりと煌めかせて新部長が言い放ったので、一気に黙りこくった。


「はい。よろしい。それではそこの二人、廊下へ。えっと、ついでに名前も教えてください」

「は、はい。私は中村ヒトシと申します」

「え、と。私は山下ルイコです」

「中村くんと山下さんね。はい、廊下に出て、しばらく立っていてください」


 それからもその新部長はちょっとおかしくて、ホワイドボードに今日の方針を書きだして、それをメモ取らせたり、またメモを取らない奴がいたらホワイドボード消し、どうやらホワイドボードイレイザーというらしいのですが、それが投げられた。

 奇妙な職場風景が繰り広げられ、昼食時間にかかる頃、異変が起きた。


「ちょっと!すみません!あ!いたいた!!!」


 白衣を身に着けた人が部屋に飛び込んできた。


「木下さん。なんで、こんなところ。しかもスーツ?どこで入手したんですか?」

「いや、トイレに行こうと思ったら、なんか気分悪そうにしている人がいて、話しを聞くと今日から部長に就任するって聞くじゃないですか?私、部長って憧れだったんですよ。だからスーツを少しお借りして、なりきることになりました。はい、立花です!」

「なんですか、それ!犯罪ですよ」


 ちょっとまて、この人、部長じゃなかったの?

 っていうかスーツをぶんどって、立花部長になりきったのかい!

 一気に部屋はざわつく。


「ほら、木下さん行きますよ。す、すみません。皆さん、ご迷惑おかけしました。いずれ、このスーツはクリーニングに出してお返しします」

「つまんないなあ。部長コスプレ、模擬授業面白かったのに」

「授業って、あんた部長は先生じゃないんですよ?わかってます?」

「へ?ちがうの?」

「違いますよ」


 白衣の男の人はそんなツッコミをしながら、僕たちに何度も謝って、偽物の部長をつれて出て行った。

 その後、本物の立花部長は職場のトイレで見つかって、頭を殴られて気を失っていたが、無事だった。

 偽物の部長は警察に一度捕まったのだけど、精神鑑定で無罪、今もどこかの病院にいるらしい。

 

 

オチって難しいね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今ではもう使えない天才バカボンのギャグに「もしもし、病院ですか? おたくで一人逃げてませんか?」というのがありました。
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