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再誕

暗く狂ったここまでの話を読んでくださった方、ありがとうございます。新章です。

主人公が忘れてしまったページを知る者として見守ってください。


ここから読んでくださる方、はじめまして。

主人公と一緒に新しい物語を楽しんでいただけますと幸いです。


どちらの読み方でも面白いと感じでいただけるような物語を初心者なりに紡いでゆこうと思いますのでよろしくお願いいたします。

気がつけば奴隷だった。

鉄錆の匂い。

暗く狭く滲む視界に映るのは鉄格子。

ガタゴト揺れる檻の中。




「動けよっ!」

頭を思いっきり打ち付けられた。

痛い・・・なぁ。

漠然と思う。


「使えねえって判断されたら困るんだよ!!反応ぐらいしろよっ!」

反応、蹴られた場合の反応?

こう、かな?


「ぅ」

私は頭を抱えて呻いてみせた。


「あぁ?今、動いたか?」

動く?

そうだ、私は私の思ったとおりに動く。

私は私。

の、意志がある。

意志。識、意識。


「・・・気のせいか」

私を蹴った人が呟いた。


それから再び、蹴られて殴られて潰されて落とされて。

大量の(花弁)を零して。


その衝撃で思い出した。







・・・幼い頃の記憶らしく朧気だけど・・・

私は捨て子だった。


捨てられた原因はおそらく、白銀の髪に赤い瞳という容姿。

魔物、化物だと忌み嫌われていた事はしっかりと覚えている。

そのせいで何度も死にかけ・・いや、何度も死んだ。



実際化物だったのだ、私は。

死んでも死なない人間の形をした何か。

死なない人間モドキ。



それでも親切な人に拾ってもらうことが出来た。

今では顔も覚えていない、優しいその人は他人からの悪意から守ってくれた。

さらには絵本を読んでくれたり、一緒に旅をしたり。

時には魔法の練習なんかしたりして。

・・・死なない私を大事にしてくれた。


相変わらず他人からは酷く蔑まれたけれど、それを覆い隠してしまえるほどには優しく楽しい日々だったと思う。



でも、そんな穏やかな日々は続かなかった。

翼を持つ魔物に襲われた事がきっかけで、その人とはぐれてしまったのだ。

そして、捕われ。

今もこうして暴力を受けつづけ・・・。





そのおかげでさらに前の記憶まで思い出した。





それは栞葉 零華という名前の女子高生だった記憶。

魔力ではなく電力がそこら中で使われていた世界で生きていた記憶。


こちらの記憶はかなりはっきりとしている。

そして、その結末()もバッチリと。


薄い胸に突き立てられた銀色(ナイフ)

赤い花弁()が舞う、ビルに切り取られた空。

私は17歳で命を散らした散らした(死んだ)のだ。


そして神らしい存在との邂逅も。


つまりこれってやっぱり・・・異世界転生?

何でもありの代名詞のような結論にたどりついた。







「・・・う、ん」

散々殴ったり蹴ったりしてきたヒトが去ってからしばらくして、再び呻く。


「・・・ふぁ」

欠伸をひとつ。

そして狭い視界に映った、たおやかな白い手を無骨な鉄板に押し付け起き上がる。


「痛っ・・・くはないなぁ」

あれだけ暴力に晒されたのに。

夢だったのかな。

いや、夢だったとしてもこんな固い床で寝て痛くないなんてことはおかしいし、あんな痛みが夢であってたまるか。



ペタペタと自分の体を確認してみるが怪我らしい怪我は見当たらない。

それどころかずっと止まることの無かったはずの耳鳴りも頭痛もない。

適切な睡眠を取れた時のように意識がしっかりしている。


それでも頭が重い・・・のはとんでもなく伸びている髪のせい。

元の世界では漆黒の髪を腰ぐらいまで伸ばしていたけれど、今の白銀の髪はそれを遥かに超える長さだ。

私を中心に白銀の髪は広がり、鉄格子の隙間から外へと流れ落ちている。

・・・何年ぐらい髪切ってないんだろう、これ。



そして、手足首には枷。

その中の1つ、左足から伸びる鎖は髪と絡み合うように伸びて鉄格子の外に転がる鉄球に繋げられている。

うーん、まさに奴隷って感じだ。


見下ろせば首から右肩にかけて大きく裂けている布。

相変わらず薄い胸ということもあり、その布はかろうじて服の役割(隠すところは隠す事)を果たしていた。

少し嫌な考えが横切って腰布の下を確認したが危惧したものは無かった。


うん。どうやら今も女性であるらしい。

なんとなく、ほっと息をつく。




ずるずると髪を引きずり、チャリチャリと鎖を鳴らしながら檻の中を動いてみれば、感覚は栞葉零華だった時とそれほど変わらない事がわかった。

身長や体重、体のバランスは差異が少ないのだろう。

唯一大きく違うのは視覚。


暗く狭い右の目元に触れればそこにあるべき眼球が無いのだ。

幼い頃の記憶を辿れば奪われたらしい。

細かいことは良く覚えてないけれど、おそらく容姿が原因で抉られた。


腕が吹き飛んだ時も頭が噛み砕かれた時も一度死んでしまえば戻ったのに、何故か戻らない眼球。

不死のくせして忘れられない痛み。





・・・本当に散々な記憶だ。

死んで死んで、死なないだけの話。


人間は余りにも酷く凄惨な経験をすると自分を守るために忘れるって言うし、記憶があやふやでぼんやりしてるのはただ幼い頃の記憶だからって訳ではないかもしれない。


それともまた違って憑依タイプの転生で消失した人格があったりしたのかもしれないけれど。


・・・いや、忘却魔法かもしれない?

たしかあった気がする。


元の世界で読み漁った本の知識とこの世界で培ったらしい知識を使って考える。



そして。

「あぁ!?起きてやがる!?」

低い声に邪魔された。


その台詞は日本語でも・・・英語でも(聞き覚えはあるけれど)フランス語(理解できない言語)でもない音の羅列のくせして、私が理解し独り言として呟いていた言語と同じだった。


「本当に何なんだよ、お前は!」

知らないよ。

私が一番知りたいよ。


振り向くと鉄格子の向こうに散々暴力を与えてきたヒト・・・否。

鬼がいた。

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