ギルド登録
説明回はいったんここまで。
一度、書き上げたがすっ飛び泣きたくなりました。
原型が残ってて良かった。
じゃんけんやしりとりなんかして暇を潰して。
お腹が空いたので、昨日の残りの焼きたて串刺し肉をスマホから出してもらって。
「大変お待たせしました」
というギルマスの声で目が覚めた。
ショウの膝から頭を離し、寝そべっていたソファに座る。
あくびを一つ。
涙の滲んだ1つ目を擦る。
「時間かかったな」
ショウの視線の先、部屋の端に置かれた時計球が指すのは午後3時。
来たときお昼前だったはず。
やっぱり結構な時間が経っていた。
「すみません・・・手間取ってしまって」
頭を下げるギルマス。
気にしない、できたのならば問題ないと微笑むショウ。
私はその様子を見ながら眠気と反比例するように襲い来る羞恥心と戦う。
膝枕してもらっていたみたいだけど気にしない。
私は子供。
仕方ない。
「レイも少し休めたみたいだから丁度良かった」
頭を撫でられる。
私は子供扱いしないでとその手を押しのけながら、子供であることを言い訳に羞恥心を押し込めた。
最初より、だいぶ薄れてきたとはいえ恥ずかしいものは恥ずかしいし。
はじめてのことだとやっぱり自分に言い訳してないと顔が赤くなって暴れたくなる。
「・・・それで、できたの?」
「なんとか無事に登録完了しましたよ」
私の問に答えるギルマスの言葉にショウと二人で息を吐く。
良かった。
「まずはショウさん、ギルドカードをどうぞ」
ショウが渡されたのは金属板。
カードサイズ、というかカードだ。
名前やランクが刻まれ、細かな模様が浮かび上がっている。
想像した通り、ちゃんと魔法のカードらしくて興奮する。
「見せて見せて」
せがむとショウは差し出してくれた。
受け取ると模様がフッと消えてしまう。
もしかして、と思いショウに触れさせると再び模様が光って浮かび上がる。
なるほど、なりすまし対策もバッチリと。
よく見ると結構複雑な魔法が付与されている事が分かった。
時間かかかったのも納得だ。
ちなみに浮かび上がるランクはG。
普通に考えてG、F、E、と上がってAの上、Sとかだろうな。
正確にいうとアルファベットのような意味を持つ異世界の言葉だけど。
そう、思考を巡らせているとギルマスが説明してくれた。
まとめるとこんな感じだ。
SS ランク制度が出来てからいた事がない。
S 国の英雄。一騎当千。
A 地方の英雄。
B トップクラス。
C ベテラン。
D そこそこ強い。国境を越える際、特権。
E 普通。新しい町に入る際、特権。
F 一人前。
G 初心者。
H 冒険者向いてない。
うん、予想通り。
ちなみにクエストでの討伐対象になる魔物達にもランク付けはあるそうで。
1匹対処するのにどれほどの規模が必要なレベルかで分かれていた。
SS 世界レベル。伝説に語られる魔王や邪神
S+ 大陸レベル。独自種族のドラゴンや上級悪魔
S 国レベル。上級とつく魔獣
A 地方レベル。地震ナマズ
B 大都市レベル。下級悪魔
C 街レベル。下級と名のつく魔獣
D 村レベル。ワイヴァーン
E 商隊レベル。ホーンベア
F 戦闘経験のある個人レベル。ゴブリン
G 成人レベル。スライム
H 子供レベル。小型魔獣
驚いたのはスライムがGだということ。
ゴブリンより下なのだ。
私の足を溶かしたあいつが。
理由を聞くと急所、イクラの色の濃い部分みたいなところを突くと死ぬそうで。
慣れさえすれば枝でも石ころでも殺せるらしい。
塩をかけても死ぬそうだ。
・・・ナメクジ?
温厚な魔物で人を襲うことも滅多に無く、場所によってはゴミの処理に使役していたりもするみたいだ。
私が攻撃を受けたのは踏んじゃったからなんだろうなぁ。
私は傷1つない足をパタパタと動かした。
「Gランクはかなり簡単なクエストしか受けられません。物足りないかとは思いますが・・・昇格目指して頑張ってください」
「・・・そうだな、ひとまずDランク目指そうか」
「国境越えるとき楽そうだもんね。そうしよう」
ショウと軽く拳を合わせる。
私達の目的は旅。
楽しい人生を歩むこと。
そのためには縛られ難い立場が、自由に世界を歩ける権利が欲しかった。
だから、Dランクの特権・・・
入国審査の簡略と入国税の軽減は必要だった。
それが無いと入国審査は数日、税は元の世界で言う百万円ぐらい取られるらしいのだ。
「Dランクといえば数年はかかるのですが・・・まぁ君たちならすぐなってしまいそうですね」
ギルマスは苦笑い。
そしてまた何かを差し出してきた。
今度は私にだ。
「レイさんの登録証です」
渡されたのはショウのカードより2回りほど小さい物がついたチョーカー。
黒革に白いレースが縫い付けられた、猫の首輪のようなものだ。
「出来るだけお洒落な物を選んだのですが・・・それを、身につけてください。」
ギルマスは申し訳なさそうに言った。
「分かった。ありがと」
奴隷の枷みたいな物が出てきたら流石に嫌だったけどこれなら抵抗はない。
着けようとしてみるが・・・ぷにぷにの小さな手では難しかった。
ショウに差し出す。
「着けてくれる?」
お願いすると少し躊躇いながらも首に巻いてくれた。
「・・・きつくないか?」
「だいじょぶ」
サイズ調整の魔法が発動してピッタリサイズになったのが分かった。
ギルマスが差し出してくれた手鏡で確認。
うん、可愛い。
「それでは・・・これからギルドの一員として、頑張ってください」
私達は頷き、ニッと笑った。
ギルマスに見送られロビーに戻ってきた。
「さて、これからどうする?」
辺りを見回しつつ聞く。
多くの人と目が合い、気まずげに逸らされる。
あの騒ぎの時にはいなかった人も私の首に視線を注いだ後、元の作業に戻る。
結構、効果あるみたいね。
金属板を軽く弾く。
人以外にも一つ目を向けると壊れたドアもテーブルも元通りになっていた。
魔力の残滓が見えるから魔法で修理したのだろう。
「どうしようか?」
「早速仕事してみる?」
「仕事は明日からにしよう。レイ、疲れているだろ?」
「だいじょぶだよ?」
「無茶するな」
「・・・ふぁい」
お見通しかぁ。
私は隠すのをやめて大きくあくびをした。
少し眠ったぐらいでは回復しきれなかったのだ。
身体的な疲れは最後に死んだところからの蓄積でそれほどでは無いはずなのに。
その上、ほとんどショウに抱えられてたし自分の足で動いていない。
本当に幼女の体には困ったものだ。
「今日はもう休もう」
「ごめんね」
「気にすんな。・・・そうだ」
ショウは素材買い取り所、と札のかけられたカウンターを指さした。
「倒した魔物を買い取ってもらうか?」
「そうしよっか」
私達、一文無しだもんね。
旅をするのにもお金がないと楽しめないもの。
「そのお金で宿に泊れるといいな・・・」
テント泊も悪くは無いけどベットでの寝心地には負ける。
そろそろ、ゆっくり休みたい。
全て、任せて目を閉じた。
ショウはスマホを私の影で操作して。
「これを頼む」
大量の屍の山を形成した。
「はぁ」
2つの月に照らされた部屋でギルマスはため息をついた。
手元にはギルドに持ち込まれた素材のリスト。
ホーンベアの毛皮にヴェノムウルフの毒牙、サラマンダーの魔石など。
それは、ランクやレベルに対して強すぎる人間の少年がもたらしたものだった。
最後に記された金額はDランクの平均月収並。
ホーンベアやウルフはD級の魔物だ。
サラマンダーに至ってはギリギリとはいえC級に分類される化物。
それらが、余計な傷が無い状態で持ち込まれた、という異常。
そして普通、討伐クエストというのは泊りがけで行くもので、準備や休養のことも考えると1ヶ月に4度行ければ良い方。
しかもクエスト外で狩った魔物の買い取りは数割価格が大幅に下がる。
それなのに少年は、一度の通常買い取りでそれほど稼いでしまっていた。
百歩譲って狩ること自体可能だとしても新鮮な状態であの量を持ち込むのは不可能だ。
かなり熟練した時空間魔法を使わない限り。
しかしその魔法がスキル無しで発動できるとは思えない。
あの少年はどう考えても異常だった。
しかしそれよりも。
全てがおかしい少女が頭から離れない。
少年も大概だったがあの少女はその上を行っていた。
少年のステータスは見たことのない事項が多かったとはいえ理解のできる範疇。
しかし、あの少女は。
何から何まで理解できない存在だった。
しかし、訳が分からない事ではなかった。
その異常さの理由は想定出来ていた。
人が作り出したシステムに組み込みきれないのは。
人を作り出した存在。
前世の記憶を持たせるなんて悪戯をする者は。
神。
「神に手を加えられた少女、ですか」
彼女に悪意や害意を向けるなんてとんでもない。
ギルマスは力を示した少年よりも少女に畏怖を感じていた。
もし、あの少年が居らず少女が傷ついていれば。
あの場で行われたのは制圧などではなく殺戮だったであろう。
少女を守る少年が結果的に無知な人々も守っていた。
・・・あの二人を離してはいけない。
「波乱の予感しかしませんね」
彼の予感は当たる事となる。
少女の手が少年と離れた時。
波乱が巻き起こる。
それは繰り返される物語。
この世界の始まりも、とある少女の絶望からだった。
―――ずっと一緒にいて欲しいって願ったのに―――
ギルドカード発行に時間かかかったのは、複雑な魔法の構築をしなければならない為。
そしてギルマスの動揺のせいだったりします。
本来こんな時間かからない。
次話、初仕事・・・いけるかな




