過去
分からないモノと遭遇したときってなんとか知ってるモノとの共通点を見つけようとするんですよね。
その結果頭こんがらがる。
ラストはさておき王道の英雄譚だった。
いや、ラノベか?
仲間が女の子ばっかりだったもん。
ハーレム?
絵本なのに元の世界のラノベを彷彿とさせる。
いや、この際話の内容はそれほど重要じゃない。
私は思考を巡らせる。
やっぱりこの人は私と同じ故郷だろうか。
私と同じ国。日本。
時代は違うかもしれないけれど。
この世界と元の世界が違うのは決定的だ。
魔法なんてものが普通にあるし。
太陽も月も2つあるし空に海あるし。
じゃあ交流はあるのか?
私がこちらに飛ばされたこと、勇者が召喚されたことを考えれば。
あっちからこっちへの流れはありそう。
呪文にも元の世界の言葉があったことを思い出す。
でも電化製品とかあっちの科学文明を象徴するようなものは見ていない。
電気より魔法が便利だからなのか。
近代になってからこっちに来た人がいないのか。
元の世界の知識で世界を変えてやったぜ!!
という知識無双する人がいなかったのか。
この世界からもとの世界へはどうだったか。
魔法なんてフィクションってのが一般常識だったし。
普通に生きててファンタジーだっ!!って思うことは
「レイ?どうしたんだい?」
「っ」
考え込みすぎて父さんに心配されてしまった。
「なんだか複雑そうな顔をしているね。」
いけないいけない、子供らしく子供らしく。
誤魔化すために絵本に抱いた感想を口にする。
「あのね、ゆうしゃ、かわいそう」
召喚されて用済みになったら封印されるなんて。
自分から封印されてたけど。
もう少し自分の幸せっての追いかけてもいいんじゃない?
戦いだけとか切ないよ。
転生と召喚の違いはあれど、異世界に連れてこられた仲間として同情しているのだろうか。
普通に最後までハーレムして幸せエンドで良かったんじゃ?
もう少しこの異世界、夢や甘さがあってもいいじゃない?
と、積りに積もった自分の境遇への妬みも含みつつ思う。
「そうだね。でも、勇者ってそういうモノなんだよ」
誰かを救うために颯爽と登場する存在。
それが勇者。
どこかで産まれたり異世界からやってきたり現れたり。
救うという使命を帯びている者。
「もしかしたらレイを助けるために目覚めてくれるかもしれないよ?なんて。」
そうか。
事実なら今もどこかで眠ってるのか。
優しい人なら勇者を封印から解き放とうと思うのだろうか?
勇者を助けるって逆な気もするけど。
まぁ、幼女で養女の私には現状、どうすることも出来ない。
自分のことでいっぱいいっぱいだ。
「・・・私にとってのゆーしゃは、とーさんだよ」
本当に助けてもらえなかったらどうなっていたことやら。
父さんは苦笑を浮かべた。
「勇者は勇者だし、僕は違うよ」
聞くと勇者は勇者であって他の者がなるものじゃないそうだ。
勇者の紋章とか体に浮かび上がったりするのかな?
一般人の勇者っぽい人は英雄と言うらしい。
「じゃあ、とーさんは英雄なんだね」
父さんは嬉しそうに頭を撫でてくれた。
そういえば。
ここまで絵本のお話が事実だった前提で考えてるけど。
「これって本当にあったおはなし?」
これで作り話だったら滑稽だ。
「そうだよ」
良かった。
それはそれで複雑だったりするけれど。
私は死んでいるわけじゃないのに、脳内で手を合わせた。
「本当にあった事だよ。嘘はいけないからね」
聞くと全て史実とされているものしか絵本にしてはいけないそうだ。
現実か空想か、まだ区別のつかぬ子供に嘘や虚構は教えてはならない。
そんな考えがこの世界にはあるらしい。
「ダレクシトン王国は実際に200年前に滅んだ国なんだ」
そしてここはダレクシトン王国の一部だったんだよ、と父さんは言った。
この国、オリィアース共和国と周辺4ヶ国ぐらいが合わさってダレクシトン王国だったそうだ。
初めて知ったよこの国の名前。
というか、ダレクシトン王国滅亡の危機には勇者目覚めなかったのだろうか。
「ゆーしゃ、助けなかったの?」
「ダレクシトン王国の自滅だったからね」
「じめつ?」
「詳しくは僕も知らないんだけどね」
「そうなの?」
自分の国の成り立ちぐらい知っていそうなものだけど。
「僕はね、学校とか行ったことないんだ。子供の頃から冒険者として暮らしていたから」
「冒険者!?」
ここに来て王道ファンタジーですかそうですか!?
私はやっと見つけた面白そうなファンタジー要素に食いついた。
「レイ、知ってるのかい?」
「えと・・・依頼をこなす便利屋さん?」
大体の作品ではこんな扱いだったはず。
「うん、そんな感じ。戦える便利屋さんだね」
合っているらしい。
「じゃあ、ギルドってのも知ってるかい?」
「ぎるど」
ここに来てだいぶ王道ファンタジー色強くなってきたなぁ。
「ギルドはね、いろんな人からの仕事を集めて冒険者に紹介してくれる所で・・」
説明されたそれは。
元の世界でたくさん読んできたファンタジー作品の王道とさほど変わらなかった。
森への採取から魔物討伐、傭兵に護衛に開拓。
報酬さえあれば大抵の仕事は受け付ける。
冒険者はギルドに登録して仕事を紹介してもらう。
依頼主はギルドに仕事をお願いする。
冒険者にはランクがあって、ギルド側がつける依頼の難易度によって受けられるもの受けられないものが決まっている。
ギルドは国を超えて支部がある。
一定以上のランクの冒険者は国境を自由に行き来できる。
うん、王道あるあるファンタジー設定!!
まぁ私にはチート無双なんて望めなさそうなんだけどね・・・
だから私は。
「もっと、いろいろおしえて!次、よんで!」
知識を欲する。
前世知識チートは出来なくても知識は持ってることに越したことはない。
今は考えるよりはもっと情報を集めていこう。
イヴ(父さん)の過去が少し出てきましたね。
冒険者です。ギルドです。
そしてこの世界の識字率はそれほど高くありません。
普通は絵本等子供向けの本を読めるぐらい。
つまり主人公の言語チートは十分チートです。