2話.「銀の指輪と銀の銃」
5月も過ぎ少し雨が多くなってきたこの神凪町、
外はおとといから雲りで少し憂鬱になりがちな季節が来ている、このセントシルビア学園には数多様な生徒がおり耳が尖っている者、ネコミミの物や尻尾が生えている物、中には顔が獣の姿をしている物もいる。
だがそれは魔術科の方の生徒が多いので普通科ではあまり見かけない、そんな普通科2年のごく普通の生徒がこの日、普通から踏み外してしまうとは誰が想像しただろうか。
その日は、彰は1時間目から実戦訓練があった、今回は単独戦で、ヘッドゴーグルから無線の電源を取り外しての訓練だった、1〜4クラス合同の大型実戦授業は丸一日の授業の予定だ。
今回は実習室では無く学園の1フロア丸々貸しきっての実習、この戦闘は命中数から被弾数を引いてポイントを稼ぐ形式の模擬訓練だった、武器は基本的に自由に選べて彰は扱いやすいハンドガンとサブマシンガンを腰に下げ廊下からは少し見えにくい壁に隠れていた、息を潜めなるだけ見つからないように専念する。
「ふぅー単独行動は動きやすいけど、人海戦術が使えないのが痛いな」
時刻は12時過ぎもう昼食どきだ、昼食までも訓練に含めているので栄養だけ取れればいいと
考えられた軍用の味気ない固形食糧を口にして、あまりのまずさに吐き気をもよおしそうになったが、大量の水でなんとか流しこんだ。
「リアの弁当が食いたいなー……」
女子はこの模擬戦闘の間は別教室で衛生兵の授業と、自主勉強になる。
「ん、誰か来た……」
かつかつとコチラに向かってくる音に神経を集中させ、近くに来た瞬間に壁から飛び出し構える。
「ひゃっ!」
「え……副会長……何してるんですかこんなところで」
小さな驚きの声を発した主はこれまた小さい身長に金髪のツインテール頭をした副会長のカナだった、その様子は少しおどおどした感じに取れる。
「だめですよ、今模擬戦闘中でこのフロア立ち入り禁止になってるんですから」
「あ、あなたにようがあってわざわざ危険承知でたずねに来たのですわ」
顔を真っ赤にしてどうも落ち着かない様子で彰を見つめる。
「場所はどうやってわかったんです?」
「それはあなたの担任に聞いたらあなたの装備についてる発信機の位置を教えてくれて、ってそんなことはどうでもいいのです、私がたずねにきた理由はですね、その……」
言葉につまりゴニョゴニョと途中から口ごもる。
「聞こえませんよ副会長」
「だから!私の恋人になってほしいの!」
半場やけになって副会長は彰の襟元をつかんで叫んだ。
「えーと……何かの冗談ですか?」
「まぁ、恋人、役、ですが、実は、今日私は誕生日なのです」
「ああ、はいおめでとうございます」
彰が適当にぱちぱちと拍手をする。その様子をカナは無視して話を続ける。
「それで以前から家の付き合いで仲良くしていた魔術科の1年上の先輩が、結婚しようという話を持ちかけてきまして」
「ああ、それで結婚したくないから、恋人役の僕との仲を見せ付けて、ちゃらにしようっていう話ですね」
彰が自分の手をわざとらしくぽんと叩く。
「さすが、話が早くて助かりますわ」
「お断りします」
満面の笑みでスッパリと答え彰は戦闘態勢に戻る。
「頼みますー、知り合いの男性はあなたと、火土しかいないのですよー」
彰の服のすそをつかみながらよよよよと物欲しげな顔をする。この人は本心を喋ってるときはお嬢様言葉が抜けるのだが普段はわざとなのだろうか。
「まー、火土先輩のあのルックスと喋り方じゃ、相手も信用しないだろうな、仕方ない今回だけですよ」
彰は大きくため息をつくと装備品を取り外して教室に置いてきた。
「で、具体的に何をすればいいのですか?」
「面倒なので直接本人にうその説明をしてきますわ、ちょっとついてきてくださいまし、誰かに出会うと説明がややこしいので魔術でいきますわよ」
彰の首根っこをつかむと太股に巻いてあるベルトから赤、白、青のチョークを抜きカリカリと術解式を廊下の壁に描き同時に詠唱する。
「イルマ、テルマ、シオール、ラビフェスト。」
カンと踵を鳴らすと魔術科の校舎の屋上にワープしてきた。
「ほー、便利だな魔術って」
「便利な物ですか、今のはマーキングした場所に次元歪曲をかけて、いるだけですわ、好きなところにはいけないしマーキングするのも時間がかかるし、それに遠ければ遠いほど大量のマナを消費します」
前から少し気にしていたがどうやら副会長は魔術が嫌いらしい。
「それが君の言ってた彼かい?」
校舎の屋上にはベンチが置かれており、そのベンチに一人の男性が腰かけていた、その男は魔術科の制服に腰にはクレイモアと呼ばれる両手剣を帯刀して。
容姿は金髪のショートの髪に彰より5センチ程高い身長、まぁ、美男子かそうじゃないかと聞かれれば恐らく前者であろう。
「ええ、そうですわ、ですから今回の婚約の話は無かったことにしてくださいまし」
「ふむ・・・だが納得いかない、僕から見れば彼はそれほど裕福そうな身なりをしているわけでもないし、君を護れるほど強そうな肉体をしているわけでもない」
彰がしゃべろうとしたがカナに視線で喋るなという威圧を受け、黙って相手の罵りを聞き流すことにした。
「そうだ、そこの彼と決闘して僕が勝ったらカナ嬢との結婚を認めるというのはどうかね?」
すくりと立ち上がり腰のクレイモアに手をかけた。
「それは私が許しませんわ、あなたの家とは昔からの仲がありますし、どちらが傷ついても、私にはつらい結果になりますわ」
彰が副会長ナイスと無言の笑顔で訴えかけるがカナに無視された、しばらく3人は黙り込み、皆がそれぞれ別のことを考えていた。
その時だった、ドンと大きな音とともに3号体育館(法術棟体育館)のほうから、大きな爆発のような音が聞こえたのは、その音に反応して、3人はともにその音の方向に目を向けた。
「なんだあれ」
体育館の屋根から何か尋常じゃないほどの大きな何かの生物の上半身が見えた。
「そうだ、いいことを思いついた、あれを倒したほうがカナと結婚するというのはどうかね、それならばどちらも傷つきまい」
(おっーと話が変な方向に流れてきたぞ)
「ええ、じゃあそれで」
「ぇぇえええ!?!!?ちょちょちょちょ!!」
カナにアイコンタクトとハンドジェスチャーで助けを求めるが、口パクでわかりやすく二文字「や れ」といわれ彰はしぶしぶその挑戦を受けることになった。
「では、いくぞ!」
そういうと金髪の好青年は屋上から飛び降りて空中で術解式を組み、自分の背中に大きな羽を生やして謎の魔物が出現した、第三体育館に飛んでいく。
「だぁぁぁ!どうするんですか?」
「受けたものは仕方ないでしょ!勝ちなさい!」
腰に手を当ててずいぶんえらそうにしている副会長を見て、彰は半分あきれてたが頼まれたことは断れないたちなので、しぶしぶ屋上から降りて第三体育館に向かう。
階段を下りると野次馬根性丸出しで生徒達が魔物と先にたどり着いていた、先輩との戦いをまるでコロシアムの観客のように活気あふれながら眺めていた。
観客と化した生徒達を避けながら昇降口へ向かう、下駄箱で靴を履いている時に、ふと気がついた事があった。
「ちょっとまて、今、俺、丸腰だぞ……あんなでかい化け物どうやって」
履きかけの靴を大雑把に脱ぐと生徒会室に向かう。
(確かいつも修練で使ってる竹刀があったはず。)
生徒会室につくとまた問題が、そもそも会長でもない自分は生徒会室の鍵なんて常備していない、ダメ元で生徒会室の引き戸に手をかけると、以外にもなんてことなく開いた。
「誰かいるのかな……」
と生徒会室を眺めると、部屋の隅にパイプ椅子に座っているブロンドの髪を三つ網にした女の子と目が合った、彼女の着ている服からおそらく法術科の生徒だろう。こちらを発見すると眼鏡を直しとてとてと小さい体を揺らしながら彰のそばに駆け寄ってきた。
「彰君だったかな……覚えてる?」
「ん……えっと……そういえばどっかで」
一度どこかで逢ったことがあるが彰は記憶力が薄い、特に他人の顔と名前を一致させるのが難しい、本人は記憶障害の後遺症だと思っているが、単に他人にはあまり興味を持たないだけなのである。
「レン、RENでレンですよ、もうっ」
「ああ、そういえばいつかリアと一緒にいた、で、どうして君なんかがここに生徒会関係者以外立ち入り禁止だよ」
「え、ああ……それはですねあの召喚獣呼んじゃったの私なんです、それでちょっと生徒会の風紀委員に倒してもらおうかと思ったんですけど、皆さんではらっちゃっててどうしようかなーと」
レンは苦笑いでブロンドの三つ網を撫でる、この子は天然なのだろうかと彰はふと思ったが、すぐに生徒会室に来た理由を思い出した。
「そんなことよりも今は武器探さないと」
いつも竹刀をしまっているロッカーに手をかける。
「それならいいものがありますよ」
そう言うとレンは上着の胸ポケットにごそごそと手をつっこみ一つの銀色の指輪を取り出した、そのまま彰に近寄り彰の左手中指にはめた。
「なんだこれ」
「使い方は指輪をはめている指を自分の前に突き出して、十字架を切ってください」
「なんかのマジックアイテムだったりする?」
この世界にはある程度の魔術が許されており、持ち運びが便利になる魔術的な道具箱やガスコンロより火力もでて燃費がいい魔術コンロなど様々なマジックアイテムが日常に使われている、普通は術式を術者が何らかの形で組まなければ発現しないのだが、簡単な、熱を起こす、物を軽くするなどの簡易術式は一度魔術者が念をこめれば5年ほどは使用効果が続くので魔術を使えない者でも関係なく魔術を扱えるようになるのである。
「まぁ、実際使ってみればわかります、今あなたは力が必要なんでしょう?」
レンは悪戯っ子のような顔で頭を傾けて上目遣いで彰の顔を覗き込んだ。
「まぁよくわからないけどとりあえずこれ借りていきますね」
使い方しかわからないマジックアイテムなんて信用できないので、彰は竹刀を手に取りすぐに生徒会室を出た。
「……わかっているはずよ……それは彼方の物だから」
彰は竹刀を片手にさっき化け物がいたと思われる第3体育館の前に来ていた。
そこでは生徒会メンバーが集まっていて、すでに戦闘を始めていたが、王廉真理亜は手を出さずにいた。
「先輩は止めないんですか?」
「ん、止めたいんだがなあそこの騎士科の生徒が邪魔くさくて下手に動けんのだ」
指を指す方向には、先ほど両羽で先にここへ向かっていた、カナ(副会長)のフィアンセが
戦っていた、その戦い方は相手のでかい体から出される攻撃をひょいとよけながら
スキをみて反撃をするというもの、言葉にするのは簡単だが相当な経験を積んでいないと
相手の攻撃の先読みをして避けるなどできない。
「それよりこの召喚獣なんですか」
「トロルイーターというものでな巨人族のトロルを主に主食とする魔界の住人だよ」
頭は二つ有り口からは大きな牙と長い舌が見え、粘液質の唾液をだらだらと垂らし、5つある目で敵を追い巨大な身体は長いつめを持った6つの足で支えられている。
「まさに絵に描いた化け物ですね。」
今自分の手に握られている竹刀は、何の役にも立たないということを数秒で理解できた、それでも、あのフィアンセはあの化け物と対等以上に戦っている。
「先輩はああいうものとも戦ったことあるんですか?」
真理亜は小首を傾げて少し考えて、
「あんな魔物、人間を殺すことに比べればたいした事はない」
「そうですか……やっぱり先輩はすごいですね」
自分のちっぽけな左手を見つめ銀色に光る指輪を眺めていた。
「おい、そこの奴お前それでもカナの彼氏か!」
フィアンセが急にコチラに向いて叫んできた、きっとさっきから彰の存在には気づいていたんだろうだが、一度も攻撃しない彰を見かねたのだろう。
「そんなことじゃ誰も護れんぞ」
「!!」
一瞬心臓が止まるかと思った、彼の言っている事がきっと今彰の心に一番突き刺さる言葉だった、真理亜の足元にも及ばない自分、カナの役にも立てない無能な自分に腹が立つ。
「うるせぇ……」
彰は銀の指輪をはめている指を目の前に突き出し、そこに全ての意識を集中する。
「俺は……!!」
つきたてた指で空中に十字架を切る光り輝く、空中の十字架の交差している部分に手を突っ込み
何かの感覚を手に取り抜き出す。
「護りたいんだ!!」
抜き出したのは銀色の六連装填式リボルバー、バレルの部分にシルバーレイド77と英語で書かれている。
「今、あいつ何も無いところから具現した……あいつ魔術師か」
フィアンセは驚いた、何せカナに言われ、普通科と事前に調べていたデータに書かれていたのに、高等魔術の物質具現を使っているのだから。
「なんだこれ……まぁいい仕組みはわからないが銃ならば戦える」
ロングレンジなら動きがあまり俊敏ではない大型モンスターなら素人でも倒せる、彰は銃を片手に構え撃ちはなった、モンスターの右足を打ち抜いた弾丸は術式を自動でくみ上げモンスターの右足を凍らせた。
「冷却弾?」
彰はとりあえず二発目を撃つ、今度は術式が炎になり足元を燃やす。
「なんだこれ?!別の物が出てきた」
「それはですねーギャンブラーダイスっていう銃です」
いつの間にか近くにいたレンがニコニコと彰を見つめている、彰は顔をしかめて自分の銃を見る。
「なんだそれ?」
「術式がランダムに出る特殊な銃です、あと気をつけてくださいね、デスペナルティっていう術式弾引いちゃうと銃が壊れて術者が死ぬほど被害くらいますから」
彰は持っていた銃を一瞬捨てようかと自分から遠ざけた。
「あぶなっかしくて使えないじゃないか」
「だいじょぶですよ!1%の確立でしかデスペナはでませんから」
(100発中1発がかなり低い確率なのか……宝くじで6等あてるよりも高い確率だろ)
レンはニコニコ顔だが、対照的に彰の額からは汗が噴出した。
「リロードはどうするんだ、まさか6発で弾切れとか言わないだろうな」
とりあえず100分の1の絶望の打開策を諦めて今もっている武器で戦うしかない。
「えと、疲れますけどこれどうぞ」
とレンが彰の右腕に道具袋からとりだした銀の腕輪を付けさせる。
「リロードしたかったら念じてください、私もよくわからないですが彼方なら使えるはずですから」
よくわからない説明だがとりあえず残り4発で止めをさせばその心配は無いわけで、すでに目の前の両腕は火あぶりと氷付け、4発もあれば足りるだろう。
レンと彰の姿を少しはなれたところでみていた真理亜は、さっきの彰の行動に驚いて呆気にとられていた生徒達を見て額に手をついて考える。
「よし、めんどうだ一気に叩き殺そう」
「なっ、今から彰君の面白いところ見れるかもしれんのにですか?」
火土冬夜が残念そうな声で真理亜に言うが鋭い眼光で全てを把握した。
「そうですね、風紀員の仕事だし俺が片付けますよ」
いやいやというのか半分めんどくさそうに火土が右足に力を込め、背中に隠していた折りたたみ式の棒を取り出し組み立てる、
「そうっすね……大きさから言って23秒で片付けますよ」
といつもの軽口をたたきながら隣で気だるそうに壁に寄りかかってたレイニアに話しかけた。
「どうでもいいがさっさとやれ、私はこの後、後片付けがあるんだ」
レイニアには多分興味がないのだろう、火土は地面をけると一瞬ででかい魔物の近くへ移動して次の瞬間に、魔物の巨大な左足を全て蹴り砕いていた。
「なっ、火土先輩?!」
「おう、悪いな、彰、風紀委員長としてここは黙ってみてられないんだよ」
そういって、もう一回地面を蹴り上げ召喚獣の頭のてっぺんまで一気に上昇する。
「せーのっ!」
火土が棒を振り下ろした瞬間に敵の頭がばらばらになり右足と体を残した、なんとも気味の悪いオブジェはゆっくりと倒れていった。
「おっと22秒か、宣言ちぢめちまったぜ!」
「うそだろ……これで魔術師じゃないのかよ」
彰はまた自分の無力さに奥歯を噛んだ、フィアンセの方も驚いて動きが停止している、結局、騒ぎを起こしたフィアンセと彰は校長室に呼び出されみっちりと尋問と説教を食らった、幸い普通科の生徒が魔術を使ったなんて噂はおきず、今日あった事件のことはおそらく数日すれば皆忘れているだろう。
帰り道、近所のファーストフード店に呼び出された、誰かとはまだわからない、下駄箱の中に「学園商店街のファストバーガーに来なさい」とおっそろしく汚い字で書かれたメモが入っていただけだからである
「疲れた・・・最近、わからないことだらけだ」
指輪を太陽にかざす、銀色に輝く指輪、原理はまったくわからないが、感覚のみで魔術を使ってしまったこと、指輪の裏には模様があるだけで特別な術式とは思えない、右腕にはめた腕輪はまだ使用していないのでわからないが、ただの素人が物質変換などという錬金術を使えるのだろうか、などとゆっくりと降りていくゴンドラの中で彰は考えるのであった。
ファーストバーガー店に入るとその呼び出した相手がわかった、やかましく動く店員がいるレジの前でオロオロと困っている金髪ツインテールがいたからだ。
「副会長、何か用ですか?」
「私、こういう店に入った事が無いの、彰適当に頼んでくれる?」
「はいはい、お安い御用ですよお嬢様」
適当に注文するとお金は副会長がはらってくれた、席に着き彰はもそもそとハンバーガーを食べるカナはなぜか手をつけないで彰の食べる姿を見ているだけだった。
「結局どうなったんです、フィアンセとの婚約話は?」
「・・・流れましたわ、今回の件で少し頭を冷やしたんでしょう」
「それはよかった、じゃあ俺はこれ食ったから帰りますね」
ハンバーガーを食い終えるとジュースを吸いながら彰はカナを眺めていた、カナはなぜか赤面している。
「私、今回の件で少し考えられました、彼方は最初生徒会に入ってきたときはすごくぬけている印象がありましたが、あれだけの召喚獣相手に戦いを挑むとは」
はぁ、と彰は気の抜けた相槌を打つその後はカナは黙ってしまい、彰はジュースを飲み終え帰ろうとするとカナに腕を捕まれた。
「何ですか?」
「・・・今回危険な事に巻き込んですみませんでした」
「いいですよ、こういうことに巻き込まれるのは慣れているんで」
慣れているといっても親友の凛矢がいつも無謀な事をしているのに巻き込まれているだけだが、近所の不良グループ10人を相手にした事はあったが、今回のような人外相手は初めてだった、だが、彰にとっては対象こそ違えど「倒さなくてはならないもの」に対しては真っ向かて立ち向かっていくたちなのである。
「ですからお礼といってはなんですが・・・また今度こうして放課後どこかに行きませんか?」
彰は微笑みお盆を持っていない方の手でカナの頭を撫でて、
「ああ、それは良いですけど、ハンバーガーの食べ方くらい知っていてください、どこかいくにしても俺のほうが気づかれしてしまいますよ」
そういって彰はお盆を片付けて帰った。