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百銃王  作者: シメオン
2/16

1話「謎の怪事件」

ある日の放課後、その日は生徒会室で緊急の生徒会の集まりがあって、彰もそれに参加していた、生徒会室に置いてある長テーブルの真理亜の隣に彰は座り真理亜は一番端に座っていた。


「今回集まってもらったのは、ここ最近学校に起きている噂の件だ」


真理亜が椅子から立ちあがり資料を彰に渡し、彰がそれを各自生徒会メンバーに配る。その資料には、学園で夜に現れるという女の幽霊の目撃談という、なんとも学校ではよくあるB級の噂だった。


「ですが会長たかが噂程度で何故会議など?」


と、金髪ツインテールの副会長が手を上げて発言する、真理亜はその回答を待っていたかのように次の資料を彰に渡す、そして彰がメンバーに配る。資料には監視カメラが撮った数枚の写真が

カラープリントされていた。そこには暗い廊下をかなり凄いスピードで移動する黒い影が写っていた。


「問題はそれが幽霊でもなんでもない事だ、資料の通りそこに不法侵入者がいるとわかっているのなら、全力で捕まえるのが我々生徒会の役目だろう」


そしてもう一枚資料を彰に渡す、彰は全部まとめて配ればいいものをと思ったが、集中させたい場合一気に配るよりバラバラに配った方がいいのだろうと、適当な解釈をして文句を飲み込んだ、また彰が生徒会メンバーにプリントを配る長机がこうなると邪魔でしかない。


「被害者は今のところ二人、運動部で夜遅くまで活動して帰る時に事件は起こったそうだ、急に意識を失ったと思ったら、次の日、二人とも気がついたら学校で寝ていたそうだ。どうだ、これで幽霊の仕業ではない事がわかっただろう」


「被害者が出てるにしても思い過ごしとか、その被害者達の妄想だ、なんってのは?」


と、火土冬夜が手を上げて発言する、彼の言葉を聞き真理亜は少し考え、静かなだが聞きやすい声で真理亜が答えた。


「その線は薄いだろう、レイニアが自主的に被害者生徒からばらばらに話を聞いて二人とも、同じ部分で記憶が消えてる、口裏をあわせたにしても、レイニアの尋問は優能だ大抵の人間ならすぐにボロがでる」


レイニアとは紺色のショートヘアーの真理亜と並んで美人の先輩だ、彼女は騎士科にいると聞いた事はあるが、詳しいことは未だに知らない。


「そうか、まぁ、疑わしきは排除せよか」


火土は資料を見つめカラープリントされた幽霊(仮)にデコピンをした。


「で、具体的にはどうするんですか会長」


真理亜は少し止まって彰の顔をじっとみつめる。彰の顔は見る見るうちに赤面していく。


「な、なんですか?」


「何でもない、取り合えず夜にまた集合して、チームに分かれて学園警備だな」


「よ、……夜ですか?!」


声は少し裏返り、語尾などかすれ、青ざめた表情で副会長がかたかたと肩を震わせている。


「あー、もしかして副会長お化けとか苦手?」


あのツンツンとした副会長にできた唯一の弱点をここぞとばかりに彰が攻める。


「そ、そんなことありません、私がそんな非科学的なもの信じるわけありませんわ」


ふん、っと両腕を組みながら彰をにらむが普段よりどこと無く弱弱しい。


「まぁ、魔術も非科学的な物だけどな」


「まぁまぁ、もし危なくなったら僕が護ってあげるよかなちゃん」


火土はぽすとかなの小さな頭を撫でた、その表情はやっぱり薄気味悪い満面の笑み。


「がぁあああどさくさにまぎれて名前でよぶなあああ」


副会長はいつもの冷静さを無くし、火土にぽかぽかとたたきにかかるレイニアがそれを止め落ち着かせる。


「じゃあ今日はこれにて解散、夜八時に校門前集合」


ばらばらと生徒会室をでていき、彰は椅子を整理して生徒会室の鍵を閉めた。


「彰……」


呼ばれた声に振り返ると、真理亜が綺麗な深緑のポニーテールをいじりながら立っていた、彼女が立っていると所々ひびが入った廊下も可憐な薔薇の花畑に見える。


「ああ美しきかな美しきかな……」


「なんだ?」


「いえ、なんでもありません、それで何か御用ですか?」


「そのなんだ、今日も剣の鍛錬に付き合わないか?」


少し照れているように言う声も表情もまた可愛い、彼女を愛でる形容詞をいくつ足そうと足りないだろう、などと考えながら。


「はい、いいですよ、こっちからお願いした事ですし」


彰は真理亜の過去をしって少しでも力になりたいと思った日、少しでも真理亜が安らげる時間を作ろうと考えたのがこれだ、何しろ世間知らずのお嬢様だ、彰が普段やっているゲームの話や漫画の話なんてしてもきっと理解できないだろう、剣術なら数少ない真理亜が好きなことだろうし、そうすれば彼女が少しは一人になる時間も減るだろうと考えたからだ、それに何より彰は前々から何か体術を極めたいと考えてたところだ。


「ああ途中で図書室よってもいいですか?」


「リアが君の帰りを待っているのだろ?」


左手で額を抑えながら真理亜がため息をつく


「ああ……はい」


大抵リアは生徒会で彰が学園に残ったときは図書室で本を読んでいる事をもう真理亜は理解している、はじめの頃は真理亜は待ってもらうのは申し訳ないからやめようと言っていたのだが、

リアはそういう子なのだと理解してからはさして気に留めなくなっていた。


「いいものだな兄妹というものは」


「会長には兄弟とかいないんですか?」


「兄がいるが私たち兄妹の関係はそんなものではなかった、兄は常に戦場の第一線で戦う人だ、人としての感情はほとんど無くて、与えられた任務をこなすだけ、家に帰ってきても私とは

ほとんど話してもくれなかった」


真理亜が憂いを帯びた瞳で自分の愛刀を撫でる。なんといっていいかわからず無言のまま廊下を歩く、広い廊下には下校時間を過ぎているせいか殆ど人はいなく、彰と真理亜の靴音だけが響いた。


図書室について彰がドアを半開きにして中を覗き込む、この学園の図書室は3つあり科ごとに分かれている、普通科は基本的に歴史文献や学校のテキストなどが多くあまり面白い物ではない、図書室の広さは大体24畳くらいあるだろう、あまり広くは無いが勉強するスペースもあり落ち着きたい人にはうってつけの場所だ、とりあえず彰はリアの姿を探し居残りで勉強している生徒も何人かいるので、少しトーンを落としてリアをよんだ。


「リア、いるか?」


「あ、はい待ってましたよ彰君」


本を棚に戻しバックをもってとてとてと彰のそばに寄る、一度真理亜の顔を見て少し悲しそうな顔をするが、すぐにいつもどおりに戻る、それを見て真理亜は彰をにらみつけた、何か女の子同士でしかわからないアイコンタクトなのだろうか、ひやひやしつつ昇降口を降りて3人ででかい再生の魔方陣が書かれた校庭にでる。真理亜は竹刀を2本持ち片方を彰に渡す。


「今日は特別に私の2番目の最強技を見せてやろう」


そう言うと真理亜は足を広げ腰を軽く落とし竹刀を右手に持ち斜め下向きに構え、左手を自分の身体に回し右脇の下に拳を置いた。


「切り込んで来い」


真理亜に言われたとおり彰は真正面から全速力で切りかかる、すると真理亜の付近に攻撃が入る瞬間右手が彰の切りを完全にガードし、右手が動いたと同時に左手が彰の真横のあばら骨に当たった。彰は横に吹っ飛ぶと、すぐに起き上がったが目の前の視界はぼやけ口からは重い息がこぼれた。


そのとき彰は一瞬、ああなんか今日先輩機嫌悪いなーと思った、過去に技を見せてくれたときは実は一度目の残光だけ、そして大抵本気になるときはリアが一緒にいるときだ。


「なんですか今の」


「私の剣術、名を牽制の構えという唯一のカウンター技だ、それより手加減したんだがだいじょぶか?」


真理亜あまり心配そうな顔はしていない。


「ええそれなりに……」


やはり何か今日は冷たい物を感じる、彰はあばら骨を押さえ、作り笑いをする。

だが真理亜の技はもう片方に剣を握っていたら間違いなく、叩き切られていた、事を考え彰は恐怖した。


「もしお前が私の敵になったら、剣のリーチには入らないほうがいい、その瞬間お前の肢体は細切れになるからな」


「何を言ってるんですか会長、俺が会長の敵になることなんてないですよ」


「……そうか、そうだな」


真理亜は少しさびしそうなうれしそうなそんな曖昧な表情をした、何度か素振りと練習試合と基礎体力づくりをして、夜に備えて早めに片付けた。真理亜は学園に残るらしいので挨拶をして校庭のそばで待っていたリアをつれてゴンドラのホームに向かう、丁度来ていた最終の3つ前のゴンドラに乗り込み赤く長い椅子に腰を下ろした、乗客はリアと彰だけだった、このゴンドラは無人で動いているので実質、今、リアと密室で二人きりの状態になるわけで。


「彰君……こうしてると昔遊園地で乗った観覧車を思い出しますね」


「ん、ああ……14歳くらいだろ昔って言っても」


「彰君があの時してくれた約束私は今でも忘れてませんよ?」


彰は過去にいつどこでなんの約束をしたか思い出すがそんな記憶はどこにも無い、とりあえず適当にうなずいておく、ゴンドラはギギギと少し不安な音出しつつゆっくりと進んでいく、二人きりの空気に会話は行き場をなくし彰は窓の外に意識を向けた、あたりは山肌なので当たり前だが暗くゴンドラにそって設置してある緊急用の非常階段のライトだけがぽつぽつと見えるだけだった。


「彰君、最近変です……急に真理亜さんと修練するようになって、どうしたんですか?」


リアが唐突に凄くトーンの低い声で彰に語りかける。

その声に驚き彰が振り向くとリアはずいと身体を乗り出して彰の顔を覗き込んでいた、表情はいつもの柔らかい表情ではなく鉄火面のような無表情。


「俺、先輩の力になりたいんだ、あの人が戦場で戦ってるの見たり、先輩の過去を知ったのもあるけど、俺はこのくだらない戦争を止めたいのが、目的で学園に入ったのに指揮官じゃ結局自分で解決してることにならないんじゃないかなって思ったんだ」


「そんなの……彰君以外の人がどうにかしてくれます、戦争なんてやがては終わりますよ、それに私達人間サイドは殆ど自主防衛だけで、別に自分から死地に赴くことなんてわざわざする必要ないと思います」


リアは姿勢を元に戻すと下にうつむきながら黙った。

ゴンドラは下山し終えホームに止まる、まだ人通りがある学園商店街を抜け自宅に着いた、体中に襲い掛かる重みに耐えなんとかねむらないようにする。

シャワーを浴びて鍛錬の汗を流す、風呂上りに飲み物を取りに台所により、ふと思い出したので、


「うちに何か武器になる物あったっけ?リア」


そう聞くと夕飯を作るリアはくるりと彰のほうに向き変え、少し疑問符を頭に浮かべた後。


「武器なんてどうするんです?」


「今日、夜に生徒会の夜間警備があるんだ、だから何か武器になる物持ってこうかと思って」


リアはまた少し考えてコンロの火を止めて隣の自分の家に帰る、しばらくして戻ってきたリアの手には黒い布に包まれた、長細い剣を彰に渡してきた。


「私の家に置いてあった古美術刀ですが、よかったらどうぞ」


ずいと彰に渡してくるリアは少し笑っている。


「大事な物じゃないのか?それに高そうだし……」


「いえ、だいじょぶですよ、歴史的価値はありませんし、お父さんがよく朝に素振りで使っているものですから」


(古美術刀を素振りにつかうとか、どんだけもったいないことしてるんですかリアパパ)


刀を受け取って鞘から抜くと刃こぼれ一つない美しい刀がその姿を見せる、刃には天成天剣天剣と刻印がしてあり、いかにも高そうな刀だった。


「り、リアこれかなり高そうな剣なんだが……」


話題を無視しリアは夕飯作りに戻る。考えてみればリアの家には一度も入ったことが無い。


「実はかなりお金持ちなのか?」


夕飯を食べてから少しテレビを見て時間をつぶして、「私もついていきましょうか」と心配そうな顔をしているリアを説得して学園に向かう。

人通りが減った学園商店街を抜けロープウェイのホームに着くが、ロープウェイは動いていない。


「そりゃそうだよな終電七時四十分だし」


仕方なく彰はロープウェイ沿いについてる山肌に沿った非常用の細い階段を上る。

いつも遅いと思うゴンドラはこのときだけはありがたいものだったと思う、暗い上に細い階段は歩きにくく恐ろしい速さで体力を奪う、のぼり終えるとそこにはすでに真理亜と火土が着ていた。


「遅いぞ彰!」


「すいません、階段で学校まで来るのがこんなにつらいとは思わなかったんで」


「あとはカナとレイニアだけか」


そう話していると彰が来た方面からバイクのエンジンを響かせながら、レイニアが登ってきてその後ろにカナがついていた。


「はい、ついたよ副会長」


「うっ……あなたには二度と頼みませんわ」


カナは両手で口を押さえながらその場にひざをつく、レイニアはヘルメットをはずすとバイクの横につけてあった騎士用のランスを取り外す、彼女のランスの長さは推定1m50cmくらいだろうか、銀色のグリップの部分に綺麗な天使のレリーフが施してある。


「別に武器を持ってこなくてもペイント弾装填の銃を貸すのに」


カナは背中についているバックパックから小型の銃を5丁取り出した。


「そうだな、我々の目的は不審者の確保であって殺害ではい」


火土が銃を受け取り腰のベルトに下げた。

真理亜もマガジンの弾薬数を数えてからわきポケットにしまう。

レイニアはカナに返して、彰は片手に構える。


「戦闘能力的に彰はカナに、レイニアは火土とメンバーを分ける私は一人で行動する」


「ええそうね、火土の能力はゴミのような物だし万が一戦闘になれば私が力にならないと」


「はは、ひどい言い様だなレイニア」


レイニアが冬夜を軽く言葉で叩き学園の校門を片手で開ける、冬夜もこのような会話が日常化しているのかさして気にする様子もなく学園の中に入り全員で昇降口で止まる、果たしてどちらが護衛役なのか彰は副会長の顔を見る、副会長も軽蔑のまなざしでこちらを睨んでいた。


「時間帯からいってそろそろのようね、私は上から下へ降りて、書記と副会長はしたから登ってきて中間地点の中央階段で合流ね」


「はい、わかりました、で会長はどこへ」


「窓から脱走を図るかもしれないので私は外壁を監視する、とりあえず調べるのは普通科の校舎だけでいい、気配察知系の魔術を使える者が犯人なら、察知して窓から飛び出すかもしれないしな」


普通科だけ捜索するのは監視カメラの映像はすべて普通科にあるものからで、被害者も普通科の昇降口付近で倒れていたからだ。


「行くわよ少し嫌だけど抱きかかえなさい火土」


「はいはい、わかりましたよお嬢様」


いきなり何を言うのかというと火土はニコニコと気味の悪い笑顔でレイニアを抱きかかえると、一度地面を蹴り重力に逆らいながら校舎の屋上まで飛んでいった。


「すごい……あれがエアウォーカーの能力か」


「魔術を見るのは初めてですか書記」


金髪をふわふわとゆらしながらカナがクスクスと笑う。

彰は昇降口から昼間の明るさとは違う靴置き場を懐中電灯片手に入る、一部しか輪郭を正確に映し出してくれない光は少し心細い。


「テレビのニュースとかで見る魔術はやっぱりリアリティがないから目の前で見るものとは違うよ、魔術科で見る魔法も大抵初級のナンバースペルとかだいたいシングルナンバー以上の魔術見ないしな」


「あら、ずいぶん詳しいですわね、あなた普通科でしょ?」


魔術などの特殊能力は地球外の人間しか使えないので、通常まじりけのない地球人にはまったくの無縁なことが多いため、普通の人間は魔術の式などは調べる必要はない。

調べられるには調べられるが魔術も家により起動式などもまた微妙に違ってくるため明確な物がほとんどない。


「俺、10年前から前の記憶全て失ってるんです、だからそれを治すためにいろんな治療受けてましたから、その節で魔術治療も受けてたんですよ」


彰は軽い笑顔をつけたがカナは少し重く受け止めたのだろう、しばらく黙り込んでついてきた。


「失礼ながらお聞きしますが、どういう気分なのですか、過去の記憶がないのは」


「最初は見るもの全てがはじめてでさ……親の顔もわかんなくて、何も信じられなかった、その後は大変だったから悲しくはなかったかな、驚くことに日常品の名前すら覚えてなかったんだぜ……」


彰は懐中電灯であたりを詮索しながら少しずつ廊下を進んでいく。

普段は何気ない物でも暗い中で見るとやはり不気味だ、壁のひび割れや床の染みも何かよからぬ方向へと想像を広げてしまう。


「親は片方死んでたけど家の相続とかは全部俺にいってたし、もう片方は銀行の通帳渡してどっかいっちまったな、名前も教えてくれなかったし、今の俺があるのはリアの家族のおかげかな」


「リアさんとは時々生徒会室にいらしてたあの子ですか?」


「ああ、俺の今の全ての記憶に存在する唯一の人だ」


そんなことを話してると副会長がたちどまって指を刺す。


「あ、あれなんですの?」


指先の方向には遠くの方にぼんやりと光が揺れてる、その光はよく見るとフラフラと移動しながらこちらに向かってくる。


「先輩たちではないな、まだここ1階だし、よしとりあえず気配消すために懐中電灯の光を消そう」


彰は懐中電灯の明かりを消し光に近づくカナは「霊なんてありえませんはそうあれはただの人人人……」

とぶつぶついいながら震えている。

壁に隠れながら光を確認するがこの暗さではよく犯人像が捕らえきれない。


「おし、俺が行って来ます副会長は待っててください」


行こうとすると副会長はひしとすそをつかんだ、彰が振り返るとそこには涙を目にためながらふるふると首を横に振る副会長の姿があった。


(やっぱり、この人は幽霊怖いのか。)


副会長の手を解いて、ほどいた手に懐中電灯を持たせ、彰はズボンのベルトに挟んであった銃を左手にリアに借りた刀を右手に壁から身を翻し全速力で侵入者と思われる相手に切りかかる、すると相手は彰の剣を受け止め絡めはじいた。


「なっ、パリィング?!」


※パリィングとは武器で武器を受け流して剣筋の方向を変える剣術


「ふぇっ、その声彰君ですか?」


聞きなれた声に驚きよく注意してみるとそこにはさっきまで家に一緒にいたリアが片手にソードブレイカー(相手の武器破壊用の短剣)を持ちながらはわはわと驚いている。


「ちょっとまてリア色々聞きたい事が有るんだが、まずどうしてここにいる?」


「彰君が心配になって、あの後追いかけたんです」


カナがそのあと半泣きで彰の後をおってきた。


「もう一つその剣はなんだ……軍属配備の品でも今時そんなものないぞ」


「エヘ、えっとですねあの後お父さんが帰ってきて事情説明したらこれ貸してくれたんですよ、あと筋力を増加させるまじないがはいった靴とか」


(いったいリアパパのお仕事は何なんでしょうか)


とりあえず追い返すのもめんどうなのでこのまま検索を続けることに、一階は回り終え2階へと昇るそこで妙な物を発見した、廊下の真ん中に辞書くらいの分厚い本が一冊置いてある。


「なんだこれ……」


彰が近づくと本は急にバタバタと勝手にページをめくり始めた。


「きゃぁぁぁ!!」


カナは悲鳴を上げより彰をつかむ腕が強くなる。


「副会長痛いです」


きゃぁきゃぁと叫んで彰にしがみついてるのをリアが固まってみている、彰と目が合うと少し考え。


「きゃぁー。」


ぱたぱたと物凄くわかりやすい演技で彰にしがみついてきた。


「副会長痛いです、そしてリアはちょっと離れてくれ」


カナの胸は薄いのでわからないがリアの成長した胸は健全な男子高校生にはきついものがある、理性が崩壊する前にリアを引き剥がした。

そうこうしてると本は一度止まり、その姿を変えた。


「おおうでかいな」


ギリギリ廊下に入るか入らないかくらいの大蛇がうねうねと動きながら舌をぴろぴろ出しながら彰達を睨んでいた。

彰に驚きが無いのは普段亜種などを見慣れているから。


「ぎゃぁぁぁ!!へ、蛇は私の大の苦手な者なのですー書記、早く退治しなさーい」


「はいはい、まったく生徒会の人は皆、人使い荒いんだから」


彰は刀を構えると大蛇に切りかかる、だが空気を切るかのように手ごたえはなく大蛇も傷一つない。


「ん……幻覚の一種か?この場合対処はどうするんだっけ」


「幻覚の中に隠れてる魔力を帯びた魔道書がどこかにあるはずです、それを叩いてください」


リアがソードブレイカーを構えながら彰の隣に立った、その姿は勇ましく、いつもののんびりした姿とは違う、彰は負けじと大蛇に切りかかり魔道書を探す。

そこへ一本の銀の槍が飛んできた。

槍は見事に動力である原本を射抜き串刺しになった本が地面に落ちた。


「まったく、この程度も処理できないとはそれでも魔術科かい?」


レイニアが彰の後ろから現れ、その後ろに火土も駆けつけていた。


「悲鳴を聞きつけて急いで来たがたいした敵でもなかったようだね」


火土がまた気持ち悪い笑顔でニヤニヤしている、レイニアは本に刺さった銀色の槍を抜くと刺さっていた本を読む。


「ふーん恐怖の書か……これ魔術科の備品ね」


「おそらく図書委員が間違えて封印書を持ってきてしまったのだろう、被害者の生徒はきっとこの恐怖の書の幻術に驚いて気絶したかなにかだろう」


「なんだ……じゃあ最初から侵入者なんていなかったんですね」


彰は安心して胸をなでおろす、そのまま皆でゾロゾロと階段を降り昇降口の付近にいる真理亜に経緯を説明して解散になった、リアと彰はまたあの細い非常階段を降りて町へと戻る。




校門の前で彰、カナ、リアを送り出したあと真理亜、火土、レイニアが校門の前に残る、送り出した3人が見えなくなった後、ぽっと火土がしゃべりだす。


「さて結局みつかったのは魔道書だけだと言うことだが、僕は少し疑問があってね……」


「監視カメラのことでしょう?あの影の早さから考えて魔道書の一人歩きであんなスピードがでるはずがない、それに魔道書の具現効果は「相手が一番恐怖する幻覚を見せる」幻覚を見せる相手がいなければ只の浮遊する本なはず」


「ふむ……気づいていたか……」


真理亜が面白くなさそうな顔をして、魔道書を見て、一度考えてから決心を決めて口を開いた。


「事件の翌日に王廉家の者を使わせて調査させたんだがな、鍵が開いていたのは職員室だけだったそうだ、当初はテストの答案を探しに来た生徒でもいたんだろうと気にはしていなかったんだがな、どうもそうではないらしく結局何が目的かわからなかったんだ」


「ではなぜ今日、学園警備の話を持ち出したのですか?」


火土の問いに真理亜が服の胸ポケットから一枚のメモ用紙を取り出した。中には2114とだけ書かれていた。


「なんですかこれ?なんかのパスワードですか?」


「被害者が倒れてた付近に落ちていたそうだ、恐らく今回の侵入者の物だろう、指紋は調べたが出てこなかったし、魔術を使って過去読みを使ってもらったが、何か強力な力でそのメモ用紙の記憶が消滅させられているそうだ」


レイニアが少し考えてなるほどなーと感心していた。

火土はまだよくわかってない。


「だが……そもそもメモ用紙に指紋一つ残さない理由はなんだ?」


「書いた人が自分の正体を知られたくないからでは?」


「その通りだ、じゃあその4ケタの番号はなんだ?」


火土はまた理解できない顔をする。

レイニアが仕方なくクスリと笑いながら答えた。


「出席番号でしょ?」


「そうだ……そしてその2114の出席番号は、他でもないうちの生徒会書記の佐藤彰なんだ……」


「ちょっと待ってください……じゃあなんですか、この警備目的はその当の本人の書記を使って犯人をおびき寄せようって事なんですか?」


火土は真理亜に少し怒りのこもった声で訴える。


「まぁ、出席番号を確認して職員室に入ることなんて事は彼のデータが欲しいということだろう、目的は不明だがおそらく彼は監視されてる、何者かによってな、本人にはあまり負担をかけたくないし、何より今回の幻術の本の件からして彼本体に危害を与えるつもりは無い様だ、だからこの話はここで終わりでいいだろう」


酷く冷たい回答が火土に返ってきた。


「じゃあ今まだ学園内にその犯人は残っているのか?」


きびすを返し学園に戻ろうとするとレイニアに引き止められた。


「無駄よ、今行っても恐らくいない」


「だろうな、さっき屋上から黒い影が出て行くのが見えた、いいかこの事は彼には他言無用だもちろん彼女にも、侵入者の件はこちらで進めておくから今日のことは忘れたほうがいいかもしれんな」


そうい言い残すと真理亜は地面を蹴り上げて山を下っていった。



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