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百銃王  作者: シメオン
14/16

13話「学園戦争、前」

彰はレンガが敷き詰められた病院内にある庭を歩いていた、あたりには羽の生えた人間がいる、比率とし羽があるのが8割、

なので彰達のほうが珍しいほどだ。

金属製の柵の外に見える町並みからすると自分がいた国ではない。

数時間の内に肉体感覚も戻り、ついさっき病院内なら動いてもいいという許可が出た。

指輪が無いのは不安だが、隣には王廉真理亜が歩いている、もちろん、デートとか嬉しいイベントな訳では無く、

彼女は監視役として彰のそばにいる、その証拠に彰の首には服装には似つかわしくない金属製の首輪が付いていた。

監視用の首輪、説明を受けた限りでは発信機の他に心拍系とマナ回路の数値を図るものらしい。


「真理亜先輩ここはどこなんですか?」


天空を見上げると空の色が若干違う、普通は青い空が広がっているはずなのだが空を見上げると黒い空、そして遠くに見える天井、空に天井があるというのを説明しづらいが、

温水プールの施設を思い出して欲しい、ガラス張りで外の景色が見えていて、そして金属のフレームでそのガラスを支えているようだ。


「神の総べる場所だ」


「神界ですか、あの遠くに見えるのは地球って事ですね」


神界、この宇宙で地球に近い惑星二つの内の一つだ。


「そうだ、あと数十分で見えなくなるからな」


「そうなんですか?」


真理亜が空にある天井にあるフレームにところどころある蛇腹折りされた大きな鉄の塊の一つを指差す。


「神界には大気圏がないからな、太陽からの紫外線と放射能避けのマテリアルシャッターがそろそろ閉まる、だから地球が見えるのは太陽が地球で隠れている今だけだ」


「ここには何度か来た事があるんですか?」


真理亜は歩みを止めそばにあった木製のベンチに腰を下ろす。


「私はここの産まれだ、母がこの地のうまれでな、私を産むときにどうしてもこの星がいいと言ったそうだ、まぁ育ったのは王廉の本家で、

その王廉本家は地球にあるがな、他に聞きたいことはあるか?」


彰もベンチに彼女と少し距離をあげて座る、真理亜はそれが気に食わなかったのか少し怒った顔をして距離をつめた、長いイスだというのにずいぶん偏った座り方になってしまった。


「なんか、今日は妙に話してくれるんですね」


「彰が言ったんだろう、私とおしゃべりしたいと」


あの戦いのときに確かに言った覚えはあったが、今考えると恥ずかしいので、思わず彰は赤面してしまう。


「あー、確かに言いましたけど、別にいいんですよ話したくない事は言わなくても」


「いや、いい、私はそういう所もお前に知って欲しいんだ」


真理亜の優しい笑顔に、今度は別の意味で顔が赤くなる。


「じゃあ、えーと、これからどうするんですか?」


「とりあえず明日あたりに神王エルファニアに謁見しにいかないと行けない」


びっくりして転げ落ちそうになった。


「神様ですか?!」


「そうだ、目覚め次第君と話がしたいという事でな」


「なんで俺に何か?」


「さぁな、私にもわからんさ」









―――加藤凛矢という男の話を少しだけしておこう、学科成績は悪いが、実践訓練においては優秀、容姿普通、軍指揮官の父と戦闘機乗りの母の元に産まれ、

ごく普通の少年と書くのが一番分かりやすいほど、この世界では至って平凡な少年だ。

家も豪華といえるような家じゃない、2階建てのごく普通の家だ。


「リンヤ、いってらっしゃい」


そして今、何故かすごいモテ期に突入している。

その証拠に目の前で赤い髪の女の子が、新婚さんイベントのように玄関で見送ってくれている。

エプロン姿で見送ってくれれば尚いいのだが、紅い髪の少女レティは凛矢の服を着ている。


「ああ、行って来るよレティ、ご飯は冷蔵庫に入ってるの好きに食べて良いから」


そういって両手で手を振ってくれる彼女に笑顔を振りまいて、家のドアを閉め、

いつものように学園へ向かう、ゴンドラを乗り、数十分でやっとのことで学園の校門まで着く。

そこで校門の前で、5人の人が学園内に入ろうとしている人を一人一人念入りに見ていた。

その腕には生徒会の腕章がついている。


「やべぇ、今日は風紀委員のチェックの日かよ」


いつもオールバックにしている前髪は許されるとして、右耳につけているピアスは外す。


「加藤ーお前はいつもいつも、目の前で外すくらいならどうどうと僕と戦うくらいの男を見せたまえ」


そういって仁王立ちして凛矢の前に立つのは、火土冬夜だ、ホストのようなツンツンとした髪型をし自転車競技選手用のような下の縁が無い細長いサングラスをいつもかけている、

ちなみに校則で魔術式や戦闘で使う物の持ち込みや着用は基本許されており、ピアスも意味を説明できればつけててもいい。

なので、チェックの対象はほとんどが普通科の服を着た学生になる。


「そうはいいますけど火土先輩、この前俺が逃げたら全力で能力使ってまで僕を追いかけましたよね?」


「もちろん、風紀委員の務めだからな」


「絶対、あんた自分の能力を使いたくてしかたないんだろ」


火土は髪を書き上げながら、高笑いした。


「そう言えば、佐藤彰書記を知らんか?キサマはやつとかなり長い付き合いだろう」


「それが俺もわからないんですよ、リアちゃんも居ないし、メール送っても返事ねーし」


「そうか、ならどっかへ行きたまえ、男子と長話しても特にならん」


うざったそうな顔でしっしっと手を払う。


「へーへー」


下駄箱で靴を履き替え、教室に入るとやっぱり佐藤彰はいなかった。

メールの確認をするが、文化祭の日からずっと彰から連絡は無い。

前に交わしたメールの内容を確認していると、授業開始のチャイムがなった、

授業をするのはジャージをだらしなく着て面倒くさそうに話す担任教師だ。

今日の授業は社会経済だ。

その内容に関しては何も書く事がない、日記をつけた人ならわかるはずだ、一日が普通に流れて、普通に終わって、それの繰り返しで、

イベントというイベントは特に無いのだ、文化祭が終わってしまい期末テストが近いくらいが今の状況で特別な事であろうか。

文化祭―――

色々ありすぎた、逆に日記のページが足りなくなるくらいにありすぎた、

文化祭二日目のあの日、カナが大泣きした理由を聞いてみたが、結局答えてはくれなかった、だが感ずいてはいる、彰がと彼女はつぶやくように消えてしまいそうな声で、そう言っていた、間違いなく彰が関わっている。

そしてぼろぼろの女の子を保護したのも文化祭の日だ、彼女は記憶が無く、

担任に連絡先を聞いてその連絡先の住所に行ってみたが、そこには誰も住んでいる様子が無い壊れた廃屋があるだけだった。


(やっぱり彰がいなくなった事とレティが記憶を無くした事は繋がっているのか?)


昼休みのチャイムで目が覚めた、面白くも無い授業でどうやら考え事をしている間に眠っていたらしい。


「やべぇっ出遅れた!」


椅子を吹っ飛ばす勢いで立ち上がり、購買部へダッシュする、欲しいパンはカリカリコロッケパンと

天粕がのったソースたっぷりの焼きそばパンだ、値段と味が良いので、競争率はかなり高い。

そういえばレティを何度かコロッケパン争奪競争の時に見かけた気がする。


「よく先越されたなぁ、今度コツでも聞いてみるか」




 今日の収穫、コッペパン1つ、プリンが1つ、コーラ1本。

出遅れにしては合格ラインである、と自分に言い聞かせて仕方なく教室に戻り自分の席に座ろうとすると、

先客が座っていた、金髪ツインテールの小さい女の子で、セントシルビア学園生徒会副会長の来須川カナだ。


「仕方ないプリンパンにして食うか、そして退けよ、カナ後輩」


「あら、なんですのその口の利き方、折角私がわざわざ2年生の教室にまで出向いて来たと言うのに」


そうツンとした口調で言う。

仕方なく空いていた自分の隣の席に座る。


「……もう大丈夫なのか?」


そういった瞬間にカナの表情が曇る、無理も無い、文化祭の時、彼女は心を傷つく出来事があったはずだ、理由は大体は分かる。

ちょくちょく生徒会に彰がらみで関わる事があるが、そのせいで副会長のカナや真理亜に接する事も多い、その中で何となくだが気づくこともある、

例えばカナと彰の微妙な距離とか、例えば真理亜と彰の関係とか。


「そんな心配されなくても、大丈夫ですわ」


小さい胸をはりカナは虚勢を張る。


「うおおおおお!!!」


プリンのカップを力いっぱいかき混ぜ、下に入っているカラメルソースとプリンを混ぜる、

知っているだろうか、カスタードソースの原材料とプリンの原材料はほぼ同じである、つまり、このぐちゃぐちゃにかき混ぜたプリンを味気ないコッペパンに乗せることにより、

まるで乾いた土地に雨が降るように救われ、そこには不思議な事にカスタードパンが降臨する。


「あー、彰ならこういう時慰めてくれるのに、あなたときたら」


呆れ顔、だが悲しそうな顔よりはましだ。


「慰めて欲しいなら慰めるけど、そういうもんじゃないだろ、恋の傷は自分で克服しないと痛いままだ」


「何を知ったような風に」


カナは少しむっとした表情をする。


「悪いが俺は失恋経験だけはそんじょそこらの野郎の比じゃねぇぜ!」


親指を立てて、力強い笑顔をカナに向ける、それを見てカナはため息をついた。


「それは褒められることでも、誇れることでもないと思いますけれど」


カスタード(偽)パンを食べる。

味は薄いが食べられない事は無い。

少しカナと話ながら簡素な食事を終えた、ちょうど昼休みが始まって20分がたったあたりだっただろうか、急にポケットに入れていた、携帯電話が鳴る。


「電話か?」


携帯を取り出し、画面を見るとそこに表示されていたのは、自分の家の電話番号。

前文の説明で言ったとおり、父は軍指揮管で母は戦闘機のパイロットをしている凛矢の家なので、

当然両親共々常駐でほとんど家に帰ってこない、それなのでこの時間に自宅から電話をかけてくる人は一人だけだ。


「もしもしレティか?」


「あ、リンヤ、おなかすいたんだけど」


「は?えーと、俺行くときに冷蔵庫にあるもの食べていいって言わなかったっけ?」


電話の向こうで、唸るような声。


「れいぞうこって何?」


「そうか、記憶障害だもんな、いや待てよ台所はわかるよな?」


「うん、なんかこっちのほう」


声だけでは状況はわからないので、レティの返答に意味は無いが。


(電話の使い方はわかるのに冷蔵庫はわからんのか)


少し疑問を持つ、彼女が何者なのかもまだ定かではない、冷蔵庫をしらない生活でもしていたんだろうか。


「とりあえずそこにある白い大きな、四角い物体あるだろ、それが冷蔵庫だ」


「うん、ちょっと触ってみる」


冷蔵庫を開ける音。


「……ああ、そうかクーラーボックスの事なのか」


「うーん、近いけど合ってないなまぁいいか、とりあえず見つかったな、じゃあ切るぞ」


「ありがとう凛矢」


そういって向こうから電話が切られた。


「彼女でもできたの?」


何故かお嬢様言葉ではないカナがそう聞いた。


「いや、迷子の子猫を拾ってね保護中だ」


「ほんとですの?!」


何故か嬉しそうにカナは座っていた机をがたりと揺らした。


「おいおい、本当の猫じゃないぞ?拾ったって言っても女の子だ」


そういうとさっきまでのテンションがまるで変わり、カナは携帯電話を取り出した。


「もしもし、今少女誘拐犯がここに」


「おい、こら」


「冗談ですわよ」


携帯電話をしまう、おそらくかけてもいなかっただろうが。


「で、どんな事情でそんな事になっていまして?」


カナに文化祭の時に起きた事件を説明した。

説明だけで5分少々かかったがそれでも、無言で時折頷いて、真面目にカナは話を聞いていた。


「その子なら一度私は会っていますわ」


「本当か?!」


「ええ、文化祭前に赤髪少女連続殺人事件が起きた事がありましたわよね、その時の被害者で唯一の生存者が彼女ですわ」


レティの記憶にはつながりそうには無い話だった。


「じゃあ、今度もそいつにやられて」


カナは小さな胸の前で両腕を組んで。


「いえ、それは無いと思いますわ、実はその犯人を一度撃退していまして、その相手をまた狙うのは少し考えづらいですわね」


「何だよ、じゃあ結局カナも何も知らないのか」


「そういう事になりますわね」


パンを食べ終えると丁度昼休みが終わるチャイムが鳴った。

それを聞いて急いでカナは教室を後にした、それを見送ってゆっくりと自分の席に着く。

若干温度が残っている。


「ちょっと生暖かい」


変態といわれればそれまでだが、仕方ないのだ、多感な時期だから、仕方ないという事にして欲しい。

授業が始まって、また退屈な授業を聞いてると急に非常事態を知らせるサイレンが鳴り響いた。


「「学内に不振人物が潜入した模様、各担任は速やかにその場の生徒の安全を確保し、戦闘の出来る者、非常形態Bでただちに配置につけ」」


「何だ、何だ?!」


「おら、皆落ち着け、ここは元軍の人間や上位魔術師がごろごろ居る学校だ、心配するな、

が一応マニュアルどおりに進めるぞ」


クラスの全員が鞄に教材を詰め逃げる準備をする。


「全員、これより地下非常脱出路に向かうぞ、隊列を組め!」


男女二列に整列し、担任教師の後ろについていく。

そこは軍学校の本領発揮か、誰も列を乱さず廊下を走りぬける、階段を降り地下入り口へ生徒を誘導しているときだった。


「そこで止まってもらおうか」


そこに居たのは長い銀髪の髪の男だった、身長は170cmほどで、中肉中背、黒い法衣をまとい鋭い眼光でこちらを睨みつけていた、

そしてもっとも特徴的なのが、空中浮遊している事、術式はひと目ではわからないが足元に電気火花が散っている事から雷に属している系統なのはわかる。


「おう、例の侵入者さんかい?」


担任教師が頭を掻きながら面倒くさそうに尋ねる。


「ふむ、聖ソフィア教会の赤羽志紀だ、殺す前に礼儀として名を聞いておこうか」


戦闘で互いの名前を聞くのは、お互いが全力の殺し合いをする時だ、

もちろんそれは日本古来の風習であるため、現代は特に例に倣う必要は無いが。


「先生も早くこっちへ!」


クラスの中の相原が止めに入るが、担任の教師は後ろにある脱出口へ相原を突き飛ばした。


「お前らは行け、ここは私が足止めする」


「先生!無茶です、相手は魔術師ですよ?!」


そういったのには訳が有る、魔術師はいるだけで戦闘兵器と同じ扱いなのだ、それを武器も持たずに挑むのは無謀だからだ。


「ガキが大人の心配なんかすんなよ、とっとと行けって言ってんだろうが!」


いつもめんどくさそうにしている教師が、眉間にシワを寄せ、その場の全員の耳に響く声で叫んだ。

その姿をみて皆が、つらく悲しい表情を浮かべ、一度敬礼して脱出口から脱出路へ走る。

そこに残ったのは赤羽志記と呼ばれる男と、ぶかぶかのジャージを来た教師が一人。


「おう、待たせたな」


「構わん、ここは日本だ、日本式を取っただけだ……どうせここで逃がしてもすぐに仲間に見つかるだろう」


「じゃあ何でやりとりしている間に俺を攻撃しなかった?」


じっとりとした笑みを浮かべ、赤羽は黒い法衣の下からハンマーを取り出した、大きさは80cmほどで先端は片方はとがっていて、もう片方は普通のハンマーの形状をしているが、

表面が平たくなくおろし金のようにギザギザになっていた。


「マナ回路がアンタだけ特別違う、ここに来る途中は普通の人間ばかりでな、退屈しのぎに戦ってみたくなっただけだ」


「わかんのか、面倒だな、こんな役割は高給取りの魔術師教師がやればいいのに」


ぶかぶかのだらしないジャージの上着を脱ぎ捨てる、その裏は黒の丈の短めなベストになっていて、

小さなポケットが4つ付いていた。


「まぁ、しょうがないか、生徒を護るのが教師の勤めだしな」





―――脱出路はハロゲンライトで明るく照らされており、遠くまで良く見えた、

だが一直線の道でできている訳では無く、奥のほうをみると何個か曲がり道があるようだ、

軽く走った後に、壁に貼り付けてある全体の地図を発見した。


「これで外へ出れるな」


「相原」


凛矢がクラスの集団の中でも聞こえるくらいの声でそう呼ぶ。


「どうした、何かあったか凛矢」


「やっぱり俺は戻る」


「気持ちは分からなくは無いが、先生が足止めしてくれてる間に俺達は逃げるんだ」


凛矢は少し考え、そして思い立ったかのように相原を真っ直ぐ見た。


「今まで黙っていたが、俺は魔術師だ」


「なんだと?」


「だからさ、さっきのやつは本当は俺が足止めしなきゃいけなかったんだ」


「なら、俺も行く」


「駄目だ、まともにやり合って勝てる相手じゃない」


あの男は数が増やして勝てるような相手では無い事は、少なからず魔術の学がある凛矢はわかっていた。


「それに俺には心強い助っ人もいるんだ、だからさ、早く脱出口へ急いでくれ」


相原は深く頷いて、他のクラスメイトの先頭に立ち凛矢に背を向け走り出した。

ほかの生徒も名残惜しそうに凛矢を見て、相原の後を追う。

凛矢の周りには誰もいなくなった。


「さて、カナ後輩にでも連絡すっかな」











 「貴様の名前をまだ聞いていない」


そう銀髪の男赤羽志記はしつこく目の前の、普通の人間にしか見えない男に問いただした。


「ディールだ、魔術師の名も同じだ」


「聞いた事は無いな、まぁいい、佐藤彰を知っているか?」


ディールはベストのポケットから金属の棒を取り出した、それは教師が使う指し棒だ。


「知らんな」


冷めた口調でディールは答える。


「そうかでは他の者に聞こう」


「それは無理だ、お前はここで俺に倒されるんだから」


術式無しで、金属の棒の先端から電気火花が走るその雷撃を避けもせずに、真正面から赤羽が食らう。

音と光だけで、目立った傷は無かった。

だが、赤羽は驚いていた。


(サンダーボルトだと?)


サンダーボルトというのは、魔術科の一年で習う基礎中の基礎呪文である。

それを術式無しで打てるのは確かに技術的にはすごいが、それだけなのだ、そもそもサンダーボルトは上級魔術師や中級魔術師は術式無しでも使えるが、

誰も使わない、なぜなら、効率の問題だ、例えば発電機の力を使って小型のモーターを回すような、、

その魔術を使うくらいなら、他のもっと上の魔術に魔力を使うほうが強いのだ。


(手を抜いているのか?だが同じ系統なら第五世代である私のほうが有利)


赤羽は持っていたハンマーに電撃を込め、ハンマーを中心に細長い形状に見えるほど帯電させる。


「死ね!」


思い切り雷の槍をディールに投げつける、まともな人間なら雷撃を受けたら吹き飛ぶほどの電圧だ。

バリバリと音を立ててディールにぶつかり、爆音を立てる。

あたりのコンクリートにはヒビが入り、ガラスは割れた。

だが、ディールは何一つ変わらず立っていた。


「ふむ少し強いな」


ディールの服は少しこげているが、赤羽と同じくダメージをくらっている様子は無い。


「貴様、何をした!」


「何って、簡単だよ、充電したんだ」


そういって、地面を蹴り猛スピードで赤羽との差を詰めた。


「お返しだ」


簡単なパンチを一発、顔面に叩き込む。

そしてそのついでにサンダーボルトを89発分を追撃で落とした。


「何故さっきからサンダーボルトしか使わない!」


顔面に叩き込まれても、空中に飛んでしまえば攻撃はできないので廊下の窓ガラスを破り10mほど浮遊した。


「昔、魔術を習っていたんだけどな、挫折してこれしか打てないんだ」


ディールは校舎の壁に立って、赤羽を睨みつけていた。


「苦戦しているようだな赤羽」


急に頭上から聞こえた、その野太い声の方向へ向く、そこには校舎の屋上で仁王立ちしている男が一人、体系は中肉中背で顔つきから30代ほどにみえる。


「ちっ、仲間がいたか」


「お前は手を出すな残蔵」


「あまり勝手なことをするな、俺達の目的は佐藤彰の奪還だ」


赤羽は雷撃を男に投げた。

一瞬映像がぶれるようにして男をすり抜け、その雷撃は虚空に投げ放たれた。


「俺の力を使ってみたが、佐藤彰はいなかった」


「引き上げるのか?」


「まさか、この学園は三世界の人間がいる、それを利用してこの学園の人間を全員人質にとる、そして佐藤彰を引きずり出すそうだ」


ディールが3個目のポケットをあけ試験管を取り出す、それを空中に投げ雷撃で割った。

割れると同時に大きな光を放つ。


「おいおいそんな事を教員の前でいうんじゃねーぞ」


閃光の光で赤羽が目をくらましている間に、壁を走って登り、屋上にいた男の後ろを取る、

現れた男は近寄るとわかるが、背中から何か黒い煙のようなものが出ていた。


「やめろ、俺は余計な血は流したくない」


そう男はディールの方を見ないで腰に下げていた細い剣を向けた。


「あんたら一体何者なんだよ」


「俺達か?……ただの神の研究品だよ」


そう男は不気味に笑った。

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