chapter5-2
「改めまして、私はサハルと申します」
「ご丁寧にどうも。ついでにこの縄も外してくんねーかな、サハルさんよォ!」
サハルと名乗った女性が優雅に一礼をする前で、背中に腕を回された状態で手首を縄で縛られ座らされたレオが、身動きが取れないなりにガタガタと体を揺らして暴れた。
すぐさま、取り囲んでいたローブの男達に取り押さえられる。
「駄目ですよ暴れては。あなた達はまだ疑いが晴れた訳じゃありませんもの」
サハルはニッコリと笑いながら手を払い、ローブの男達を下がらせる。
──あなた達は、私たちの敵かしら?
その問いかけに、ニシキは首を振り自分達の目的を話した。探し物がこの砂漠のどこかにあり、それを探しに来たのだと。そして、その気配をたどりこの砂漠の地下洞窟にたどり着き、これから地下で探すつもりだったと。
さらに、その探し物の気配が今この近くから強くすることを伝えると、サハルは途端に目の色を変えてニシキとレオを縛るように男達に命令したのだった。
取り抑えられているレオの隣で、同じようにニシキも後ろで縛られていた。そのさらに隣には、雑に縄でぐるぐる巻きにされたハヤテが転がされている。
「それで、何が目的なのかしら?探し物とは?あなた達も遺跡が目当て?」
「遺跡だァ?」
レオとニシキとハヤテは思わずきょとんと顔を見合わせる。この砂漠に遺跡があるとは初耳だった。
そんなレオ達の反応を見て、サハルは「もしかして知らないの?」と再度確認を取る。その問いに「知らない」とレオが答え、ニシキも首を振って答えると、サハルは大きなため息をついた。
「……私の勘違いだったようですわね。申し訳ないわ」
サハルがそう謝罪し頭を下げると、二人の背後に立っていたサハルと似た顔立ちの長髪の青年が、レオの手を縛っていた縄をナイフで切り解く。
両手が解放され、レオが握ったり開いたりを繰り返し自身の手の感覚に異常がないかを確認している間に、青年はニシキの縄も解く。
「ありがとうございます!ええと……」
「彼はダガ。私の弟よ」
ダガと呼ばれた青年は、最後にハヤテの縄を解くと、ペコリ、と一礼した。
「わっさいびぃん。ゆたしく」
「は?なんて?」
ダガの言葉は、訛りが強いのか、そもそも言語が違うのか、何を言っているのかわからず、レオは思わず聞き返してしまった。すかさずサハルが言葉を訳す。
「『すまなかった、よろしく』と言っているわ」
「……姉弟なのに、喋る言葉が違うんだな」
「ああ、ごめんなさい。本来はダガの言葉が我々砂の民の言語なのよ」
「その砂の民って、いったい何だ?」
そこからですのね、とサハルは一呼吸すると『砂の民』について説明を始めた。
砂の民とは、このロカーム砂漠に住む一族だった。彼らは古来より、砂漠のどこかにあると言う遺跡を守り続け、多少例外はあれど、盗人は何人たりとも遺跡に侵入できないよう追い払ってきたらしい。
そして自分達は、そんな砂の民の末裔だとサハルは言う。
「でも、今の時代は『ぐろーばる』ってやつでしょう?ですから、私はリーダーとして、共通語を勉強しておきましたのよ」
なるほど、だから他の砂の民はほとんど喋らないのに対してサハルだけペラペラとよく喋るのか。
そんな考察をレオが勝手にしていると、サハルがぱんっと手を叩き提案をする。
「お詫び、と言ってはなんですけれど、私たちも探し物のお手伝いをするわ。この広い砂漠……の地下、土地勘がある我々無しでは迷子になること確実ですもの」
確かに、また気配だけを頼りに歩き回れば、上にいたときのように同じ場所をぐるぐると回り続けることになるかもしれない。そう考えると、なんともありがたい申し出ではあった。だが、ひとつ懸念がある。
ニシキはその懸念を、砂の民達に聞こえないくらいの小声でハヤテに伝える。
「ねえハヤテ、今回も気配は二つあるんだよね?」
「はい、そうですじゃ。そして姫様のお考えの通り、一つは間違いなく彼らが持っている」
その通り、ニシキ達の懸念は、気配が近すぎる方の欠片の在り処だった。
この地下に落ちてきた際に感じた、不自然な速さで近づいてきた気配。その直後に現れた砂の民。どう考えても彼らは黒だ。
しかし、その欠片がまさに自分達の探し物であるということまでは彼らも知らないだろう。ならば、先にもう片方を回収したあと、事情を説明し讓ってもらえばいい。
「では、一旦彼らと共同戦線を張りますぞ」
ハヤテの確認にニシキはうなずくと、サハルに近づき一礼をする。
「是非、お願いします。私達だけでは本当に迷子になってしまいそうなので」
そう差し出されたニシキの手を、サハルはにっこりと笑いながら取った。
*
「……サハル殿、気配はあちらの方角から強くしますぞ」
「あらそうなの?でもそちらへ行くと大岩があって通れないんですの。こちらから回って行きましょう」
相変わらずレオの頭上に陣取るハヤテの指示に従い、一行は欠片の気配をたどっていた。
砂漠の地下は、入り組んだ洞窟のようになっていた。サハル曰く、レオ達が落ちてきたような、地上に流砂がある場所は大空洞に繋がっており、それ以外の場所はこのように狭い洞窟となって砂漠全体に延びているとのことだった。
このような天然迷路に案内なしで挑んでいれば、間違いなく永遠に彷徨い続けることになっていただろう。サハル達の協力の申し出を断らなくてよかった、とニシキは一人うなずく。
「ところでよぉ、あんたら遺跡を守ってるんだろ?その遺跡に行かずに俺らに付き合ってていいのか?」
そう、サハルのすぐ後ろからあとを付いていくレオが疑問を投げ掛ける。すると、レオ達の後ろについていた砂の民達から、呆れたような、諦めているような、困り果てているようなため息が聞こえてくる。何かまずいことでも聞いてしまったのだろうか、とレオは少し慌てたが、サハルはゆっくりレオに振り返ると「いいんですの、気にしないでちょうだい」と苦笑する。
「今の反応でわかる通り、実は遺跡のことで困ってますのよ。あなた達を疑ってしまったのも、実はそれが原因でピリピリしていたせいでして」
サハルは一際大きくため息をついた。
「でも、今は気にしないでくださいな!あなた達の探し物とは関係ないことですし、私たちの問題ですから!」
サハルは笑いながらそう告げると、くるりと前を向き直し歩み始めた。何かモヤモヤした気持ちのまま、レオはサハルのあとを追った。
そうして気配をたどりながら、岩を迂回し、人一人がようやく通れるほどに狭い通路を何度も潜り抜け、無数の鍾乳洞が氷柱のように天井から生える泉のような場所を通りすぎ、地下迷宮の深い場所まで進み続けた一行は、とうとう気配を強く感じる位置まで辿り着いた。
そこは、最初に落ちてきた場所のように大空洞になっていた。天を見上げれば、ところどころ砂がさらさらと流れ落ちてきている。ここも地上の流砂から繋がっている場所のようだ。
しかし、レオ達が気になるのは流砂でも大空洞でもなかった。その大空洞のなかに、静かにひっそりとたたずむ、苔むした岩を積み上げ作られたような神秘的な建物。
「サハルさんよ、俺らには関係ないから気にすんなって言ってたけどよ……」
「ええ、前言撤回するわ。関係大ありそうですわね」
どこからどう見ても、これが砂漠にある『遺跡』であることに間違いはなかった。
「やはり気配は遺跡の中から強く致しますじゃ」
ハヤテがそう一行に告げると、サハルは渋い顔をした。
「うーん、こうなるとまたあなた達が怪しすぎるのですけれど、でもあの反応は本当に知らなかったのよね……。
更に今の状況もわからなそうですし、あなた達の問題は偶然の一致というとこかしら」
「何言ってんだ?」
ブツブツと一人考えをまとめるサハルの様子を、レオは訝しげに眺める。と、サハルはレオ達に向き直すと質問を投げ掛けた。
「確認ですけれど、あなた達の探し物が本当に遺跡の中にあったとして、あなた達は探しもの以外の何かを奪ったり、利用したりを考えたりはしないと誓えるかしら?」
「そんなの、勿論です!私達の目的は探し物だけですから!」
サハルの問いに、ニシキがそう強く食い気味に答えると、サハルは「言質は取ったわよ」とうなずく。そして、そのまま遺跡の入り口へと近づいて行った。
すると突然キィィィィィと甲高い音が遺跡から鳴り響く。警報なのか警戒音なのか。どちらにせよ、敵を知らせる音だったのか、次の瞬間、遺跡の内部から強くギラついた緑の光線がサハルめがけて飛んでくる。
「サハルさん!」
ニシキが慌ててサハルを引き戻そうと駆け寄るが、間に合わない。光線はそのまま直撃した。
――サハルが作った、土の壁に。
「ふー、間一髪ってところね」
壁の後ろで、しゃがんで壁の根本あたりの地面に両手をついていたサハルが、ゆっくりと手のひらの砂を払いながら立ち上がる。そしてとん、と作り出した壁を軽く叩くと、壁はがらがらと音をたてて脆く崩れ落ちた。
「ほう、サハル殿は地魔法をお使いになれたのですな」
頭上でそう関心するハヤテの言葉を聞き、レオもあれが地魔法なのかと関心を寄せた。
「と、まあこんな感じで遺跡の内部には罠がたくさん仕掛けられていますわ。今のは新しいものでしたけど……なのでお気をつけあそばせ」
ニッコリと笑いながらサハルはそう言うと、レオ達に遺跡の中へ入るように促した。笑顔で聞き捨てならないことを言うサハルに、レオは苦笑いを返しながら頭上のハヤテに訴えかける。
「おいハヤテ!気配は本当に遺跡の中からすんのか!?」
「残念ながらするぞ小僧。諦めろ」
ハヤテに念押しされ、レオは渋々遺跡の中へと入っていった。
*
「おい!本当にここは遺跡なのか!!」
レオがそう叫ぶのも無理はなかった。
遺跡の中は、外観からは想像できないほど綺麗で近代的だった。いや、近代的を通り越して、未来的と言った方が正しいのか。
入り口から延びた通路を進んでいくと、大きな吹きぬけというべきか、空洞というべきか、巨大なホールに出る。その大きな空間の真ん中を、一本の吊り橋のように通路が続いている。通路の回りには、青く光る文字のような紋様を浮かばせた白い立方体が、コーン、コーンと低い鐘の音のような音を響かせながら、規則的に直線上で動いている。
こんな、この世界で見たこともないような内装と、見たこともないような装置を有したこれが、古来より守り続けていた遺跡だと言うのか。
「ええ、遺跡ですわよ。これが我々砂の民が守り続けている遺跡」
異質な風景に呆けて辺りを見回すレオ達に、サハルは説明を続けた。
「昔、この砂漠である文明が栄えた。
しかしその文明は先を行きすぎたがために、他国の嫉妬を買い、
長い戦争の末に、利用されるならいっそと自ら滅亡を選んだ。
最後の王は、巨大な墓を築き、そこに自身が収まることで完成とした。
その墓が完成したその瞬間、大地は墓ごと沈み、潤った土地も、豊かな草原も、大勢の民達も、何もかもが地下へと消えていった。
あとに残ったのは、枯れ果てた砂漠。文明は王と共に滅び去った。
この遺跡は、その王の墓。行きすぎた文明の技術を凝縮して作られたもの。だからあなた達が今見ているものは、その文明の技術そのものよ。
そして、その文明と共に滅びた民の生き残り。それが私達、砂の民なのよ」
「なんと言うか……スケールがでかすぎて理解が追い付かねえ話だな……」
説明を聞くも、いまいちピンと来ないレオはボリボリと頭をかきながら呟く。しかしニシキは逆に興味津々のようだ。レオと違い、用途不明の立方体が動く様子を目を輝かせながら眺めていた。
「はいはい、見学はそこまでにして、探し物を早く探してくださいな!」
そんなニシキをせっつくように、サハルは声をかける。
「ねえサハルさん、罠がどうとかって言ってたけど、その罠ももしかして昔に作られたもの?」
「ええ、そうよ。……基本的にはね。例えばこのスイッチですけれど」
ニシキと話しながら大ホールを抜け、再び壁に挟まれた細い通路になると、サハルは壁に手をかける。そのまま軽く力を込めると、がこん、という音と共にレオ達の目の前の床が抜け落ちた。どうやら典型的な落とし穴のようだ。
「このように、この遺跡内部にはやたらスイッチが隠されていますの。これみたいに押すタイプだったり、人が通り抜けたら動くものであったり……だから無闇矢鱈にスイッチを押さないことをお勧めしますわ」
サハルがもう一度スイッチを押すと、再びがこんと音がし、抜け落ちたように見えた床がスライド式の蓋のように手前からゆっくり顔を出して穴を閉じた。
「ところで、基本的にと言うのは?それに、入り口の罠は新しくできたものだって……」
「鋭いわねニシキさん。そうなのよ、私達が困っているのはそのことですの」
はあ、とまた大きなため息をサハルがついた直後、彼女は素早くニシキと自分をかばうように地魔法で土壁を生成した。次の瞬間、その土壁に緑の光線が当り、はじける。
急な出来事にニシキが目を白黒させている横で、サハルが今度は大きく舌打ちをする。
「まーた勝手に増やしたわね……いい加減にしてほしいわ」
と、間を開けずに緑の光線が次々と一行に向かって飛んでくる。
サハルは同じように地魔法で壁を形成し光線をはねのける。レオも大剣を引き抜き自分の前に盾のように構え、光線を受け止めた。カンマにあつらえてもらった大剣はやはり相当丈夫なようだ。光線ごときではビクともしなかった。
「俺が先頭で光線を受ける!一旦このまま安全な場所まで駆け抜けるぞ!」
レオがそう呼び掛けると、全員がうなずいて返事をする。それを確認してから、レオは大剣を構え直すと光線を押し退けるように一気に前へ走り出した。そのレオのあとに続いて、一行はレオの大剣がしのぐ範囲からはみ出ないように身を屈めつつあとに続いていった。
*
こうして一行は、よくわからない原理でこちらの動きを察知する罠を掻い潜り、気配を辿りながら奥へ、奥へと進んでいった。
今までかかってきた罠はサハル曰く全て新しく作られたものとのことだったが、誰が、何のために罠を増設したのかまでは説明をしてくれなかった。
「全くどうなってんだよこの遺跡はよ!どこまでが古代文明でどこからが最新なんだかわかりゃしねえ!」
ぶつくさと文句を言いながら、ハヤテの誘導にしたがい先頭を歩くレオは行き止まりに辿り着くと、半ば八つ当りのように壁をだんと叩く。すると、がこんと音がした。
「あ、やべ、スイッチ……」
ハッと我に返り表情を曇らせる。頭の上では「バカもん!」とハヤテがつついてくるが、時既に遅しと言うやつだ。急いで振り返り、あとをついてくるニシキやサハル達に警戒を呼び掛けようとした。が、緊迫した面持ちで振り返った視線の先には、いいから前を見てと言わんばかりの表情で前方を指差すニシキ。その指示にしたがい、素直に再び前を向き直すと、行き止まりだと思われた壁が無くなっており、さらに通路が延びていた。
「なんだ、隠し扉だったのか……」
罠ではなかったことにホッと胸を撫で下ろしつつ、頭上のハヤテに気配を確認してもらう。この奥から強く感じると答えが返ってきたため、レオ達はその通路を進んでみることにした。
ここにも罠が仕掛けられているかもしれないと、警戒しながら恐る恐る進んでいくと、また大きく吹き抜けたような広場に出た。そこで、レオは思わず足を止めた。
「な、なんだこいつら!?」
レオだけでなく、ニシキもハヤテも顔をしかめて驚くのも無理はない。人の胴体に人の腕が四本。そして首から上の顔は、まさしく虫。二本の長い触覚に鋭い牙を持った彼らは、まさしく兵隊蟻と呼ぶべき姿だった。そんな兵隊蟻が広間にぎっしりと、それも大量にいた。レオの驚く声に反応したのか、ギッと一斉にこちらへ振り向いた。思わずヒッと小さく悲鳴をあげて、ニシキはレオの背中へ隠れる。
「獣人族……?でも、虫型の獣人族なんて聞いたことないよ……!?」
ニシキはレオを盾にしつつも、いつ襲われても反撃できるようにとハヤテを近くに寄せておく。同じようにレオも背中の大剣に手をかけ警戒する。砂の民たちも各々の得物に手をかけ臨戦態勢をとったところを見ると、どうやらこの蟻達とは仲が良い訳ではなさそうだ。と、兵隊蟻のうちの一人が前に出て大声で訴える。
「マタキタノカ、シツコイ人間ドモメ!何度来ヨウトコノ施設ハ我々『蟲人族』ノモノダ!」
「蟲人族だぁ?」
聞いたことのない単語にレオが首をかしげると、ハヤテが説明する。
「この世界の地下深く。当然、こんな地下洞窟よりもっともっと深い地の底で暮らすと言われている地底人のことだ。しかし、地の底の者が地上に出てくることはないはずだと聞いていたんだがな……」
「フン、ソレハ大昔ノ話ダ」
ハヤテの疑問を、兵隊蟻は鼻で笑いながら一蹴する。
「人間ドモヨ、コノ地上ハ貴様ラニハ勿体ナイ。我々、蟲人族コソガ治メルベキダトハ思ワンカ?」
「思わないわね。そもそも、勝手に人の物を自分の物だと言い張る人達になんて何も渡したくありませんわね」
いつの間にかレオ達のすぐ隣まで出てきていたサハルが食い気味にそう否定すると、兵隊蟻はあからさまにイラついたそぶりを見せた。
「図ニ乗ルナヨ、コノゴミ共ガァ!!」
その怒号を合図に、後ろから様子を伺っていた他の兵隊蟻達が一斉に動き出す。と、同時にレオとニシキはそれぞれ大剣を背中のベルトから引抜き、ハヤテから変化した刀を空中から受け取り構えると、蟻達へ向かって行った。
蟻達は噛みつこうと首を伸ばし襲いかかってくる。が、レオはそんなのお構いなしに大剣を力任せに振り回し、蟻達をなぎ倒していく。
「へっ、どーだ!集団戦は得意なんだ、俺!」
そう得意気に鼻を鳴らすレオの背後から、仕留めこぼれた蟻が飛びかかる。反応が遅れ大剣を振れず、とっさに腕で防御を試みるレオの目の前に黒い疾風が立ちはだかると、流れるような手捌きでカトラスを振るい蟻の首を切り落とした。
「悪ィ助かったぜ、ダガ!」
「あたいめえぬくとぅしたんだけ。うりから、あとぅも気抜くやー。やむんくとぅなるさー」
「は?なんて?」
相変わらず何を言っているのかわからないが、レオの背後はダガが守ってくれるようだ。背中は任せて前方の蟻達を同じように大剣で蹴散らしていく。
「レオ!とにかく彼らを倒して遺跡の先に進もう!」
レオの横脇から、ニシキがすっと前へ抜け出ると、襲いかかる蟻達を次々と鋭い剣筋を光らせ斬り倒していく。
どうやらニシキは、強行突破を図るつもりのようだ。
「了解だニシキ!ダガ、行くぞ!」
「わかとーさ」
「あ、今のはわかったぞ!『わかった』だろ?」
「……うひ、あらんどー」
そんな下らないやり取りをダガと交わしながら、レオは先を行くニシキのあとを追いかける。
その後ろにサハル達砂の民も続き、一行は遺跡の奥へと進んでいった。
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