落合 秋姫と真冬の話
落合 秋姫は学級委員でもあり、人望もあるのだ。
放課後、そんな秋姫に話しかけて来るものがいた。
「落合さん大丈夫?」
クラスメイトで確か、そう名前も覚えている。
「うん、大丈夫よありがとう」
「実は私、白鳥さんと去年同じクラスだったんだよね」
先ほどのやりとりを見て慰めに来てくれたという訳だろう。
「あの子って、まあ言ってしまえばガキ大将気質って感じ?
本当に嫌な感じなの、だから気にする事ないよ」
ガキ大将、なるほどねと秋姫は合点した。
確かに周りに気を使わない、自身の凄さを誇示するような振る舞い、正しくガキ大将である。
でも……
「ちょっとかわいいからって調子に乗っちゃってさ、それで家も大金持ちなんだって、知ってる?大豪邸、私も一回見たけどびっくりするよ。
あーあ、私もあんなに恵まれてたらなあ、調子乗っちゃうのも分かるけど、こっちとしたら気分悪いよねー」
それは、何か違う気がする。
「前のクラスでもさ、あんな感じに急に絡まれた子がいてさ、泣かせちゃったのね、それからはまあイジメとまでは行かないまでも皆距離取ってた感じ」
そうか、それが正解なのかもしれない。
「あとあの子、春野さん、あの子も白鳥さんに絡まれてたクチなんだけど、今じゃ金魚のフンって感じでさ、嫌な感じよね」
それはちょっと言い過ぎなんじゃないかしら。
でも、慰めてくれるって気持ちは分かる。
「……分かるけど、あんまり人の悪口を言うものじゃないよ」
と返すとその子はキョトンとした。
「え、あ、うん、そっかごめんね、落合さんは優しいね」
優しい……優しい、か。
秋姫は一瞬物思いに耽る。
確かに優しくあろうと思っている。
だからという訳ではないが、他に友達と絡まず二人でいる真冬と桜子に声をかけたのだ。
優しくしようと思ってした行いが、本人達にとって迷惑だったという事だってある。
でも、あの時、勉強会では……
「でもほら、あんな感じになっちゃったし、放っておいた方がいいと思うよ」
違う。
秋姫はその台詞を聞いてやっと気が付いた。
寝た子を起こすなと言うのだ。
つまり、迷惑だと感じていたのはその他のクラスメイト達の方。
問題行動を起こすような人物には大人しくしていてもらった方が良いというものだ。
大きな視点で見ればそれは正しいのかもしれない。
しかし秋姫はそうではなかった。
そんな少数派の弱者にこそ、手を差し伸べるべきだと考えている。
では、彼女達に優しく接するべきか?
いやそうではない、それはクラスメイト達の望む所でもないだろう。
彼女達が求めている事は一体なんだ?
どう対応するのが皆にとっていいのか?
「ありがとう、でもそれには及ばないよ」
秋姫が力強く宣言すると教室は静まり返った。
「私、負けるつもり無いから!」
堂々と正面からぶつかり、勝利する事を誓ったのである。