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図書室にて

 図書委員の仕事は直ぐに終わった。

 具体的には貸出カードの管理であるとか、返却された本を棚に戻すだとか、ジャンル違いに置かれてしまっている物を正しい位置に戻すであるとかだ。

 当然その全てを生徒が管理する等というのは難しく、司書がほとんど終わらせているのである。

 分からない事は司書に聞けば教えてもらえるので、困る事は無い。


 許可が下りて真冬が一緒に仕事をしたお陰で、一層早く終えてしまった。

 それもあってもう一人の図書委員は、早々に帰路へ就いた。

「ばいばーい」

「ばいばーい」

「ごきげんよう」

「ご……ごきげんよう」

 何か予定でもあるのか、それともただ単純に委員会活動が面倒なだけなのか。

 それは分からないが、とにかく「ごきげんよう」という慣れない挨拶にきちんと返して見せた図書委員は流石と言える。

 真冬は密かに脳内の「お友達予定リスト」に加えた。

 このリストが役に立った事はあまりない。


「真冬ちゃん、もう帰る? 習い事お休みして時間あるんだったら、私ちょっと本読んでいきたいなー」

 桜子は文学少女であった。

 真冬もそれに影響されて活字を読む様になったものだ。

 桜子が図書委員と聞いて納得したのは言うまでもない。

「それも良いかもしれないわね」


 真冬も最近では、新聞にも目を通すようになって来ていた。

 実際、書いてある事のほとんどは理解できないが、田伏に聞いて色々な知識を蓄えている。

 そのきっかけをくれた桜子には、感謝さえしていた。


 一年生の頃の桜子は恋愛小説にハマっていたはずだ。

 目がくらむような文字の多さにまだ早いのでは、等と思った真冬であったが、桜子も「挑戦のつもりで読んだら面白くって」という言葉に感化され、後追いながら同じものを読んでみた。

 これが面白かった。

 登場人物に感情移入してしまい、ラスト付近では涙を流したのを思い出す。


 本が面白いのはそれだけではない。

 後からそれについて友達と話すのがとても良いのだ。

 桜子は主人公のライバルの女の子に感情移入したらしく、読み手次第で感じるものも違うのだなー等と漠然と思ったのだった。


 またあの経験を出来るのなら、と意気込む。

 桜子よりも物語を読み解き、内容を理解するのだ。

 そして敗北感を叩き付ける! これぞ悪役令嬢!

 等と考え、むふふと表情を崩している真冬と、それを見て慣れたものな桜子は無表情。


 読みかけの本を読み始めた桜子を見て「今は何を読んでいるの?」と教えてもらったタイトルは何だかよく分からない長いタイトルだった。

 どうやらファンタジーに分類される、初心者にも読みやすい「ライトノベル」というものだそうだ。

 桜子は今、これに大層ハマっているらしい。

 また真冬も同じものに挑戦してみようと思い、二人の「中学二年生」はファンタジー物のライトノベルにハマっていくのだった。


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