図書委員
白鳥 真冬は悪役令嬢に憧れている。
であるからして、ヒロイン的ポジションの人物を必要としていた。
悪役令嬢とは、ヒロインあってこそ輝くものだからだ。
「桜子、一緒に下校しましょう」
そして、真冬がヒロイン認定したのは桜子であった。
春野 桜子はとりたてて美人という訳でもないし、成績優秀という訳でもない。
国語や社会科が得意であり体育が苦手という、ありふれた女子である。
だが、それでこそ、と真冬は思った。
埋没しそうな普通の女子、しかしながら光るものがある可愛い女の子。
それを叩き潰してこそ、悪役令嬢の華だと思っていた。
そして切磋琢磨し、お互いを高めていくのだ。
真冬の圧倒的な実力に立ち向かえなければそれまで、桜子はそれだけの人物だったという事。
桜子の優秀な部分を真冬が吸収する事で、真冬自身も成長できるのである。
と、そこまで深く真冬は考えていなかっただろうが、カッコいい悪役令嬢の真似事をしたかったのである。
「ごめんねー真冬ちゃん、私これから図書委員なんだー」
真冬はぐぬぬとなる。
最近当たり前のように登下校を共にしていたので、まさか断られるとは思っていなかったのだ。
そして口を挟む余地もない正当性のある理由。
真冬は負けじと「待ってて差し上げても良くってよ?」と言う。
「えーそんな悪いよ、真冬ちゃん習い事もあるでしょー?」と桜子。
引き下がれなくなった真冬は「少し休んだくらいで何ともないわ、何なら図書委員の仕事、手伝って差し上げてもよろしくてよ」等と口走ってしまう。
そこまで言うならばと桜子も根負けして了承する。
「司書さんと、あと一緒の図書委員の子にも聞いてみるね」
そう言われて退路を断たれた真冬は、帰り支度を済ませ二人で図書室へ向かった。