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サングリーズ・チョッパーズ! パート1:撃てないジェシーと撃ちまくるレネ  作者: フリッカー
フライト2:素晴らしきかな強襲揚陸艦ライフ!
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セクション15:次世代戦闘機

「F-35B……?」

 レネも、その単語が気になっているようだ。

 聞き慣れない言葉だったので、ジェシーはSNS上で聞いてみる。


 ジェシー

 何、そのF-35Bって?


 ルビー

 え、知らないの? 統合攻撃戦闘機JSF。


 統合攻撃戦闘機、と言われてもどうもピンと来ない。

 そんな時、エリシア達もその事について話し始めたようだった。

「シーハリアーがF-35に交代って……それ確か空軍の次期主力機の候補になっている戦闘機じゃありませんでした?」

「いや、違いますよエリシア先輩。それは空軍型のA型。B型はシーハリアーと同じVTOL型なんですよ」

「VTOL型……ですか」

「F-35は、通常離着陸型、VTOL型、艦載機型を1つの機種で作るっていう画期的な次世代戦闘機なんですよ。もちろん性能はシーハリアーとは比べ物になりません。海軍にとっては初めての超音速機ですし、スルーズ軍全体でも初めてのステルス戦闘機になるんです!」

「へえ……ヘリで例えると、どれくらい凄いのでしょうか?」

「え、ヘリで? そう言われても……」

 エリシアが、フィリップとそんな会話をしている。傍から聞いているレイはどこか楽しそうに笑んでいる。

 詳しくはわからないが、どうやらスルーズ軍の次世代戦闘機らしい事が話を聞いてわかる。

「じぇしぃ、何か来てるよ……戦闘機の写真」

 ふとレネが、つんつん、とジェシーの体をつつく。

 はたとスマートフォンの画面に顔を戻すと、1枚の写真が載せられていた。


 ロメア

 ほい写真。


 ロメアが持ってきたらしい写真は、F-35Bを映したものだった。

 丸みを帯びていたシーハリアーに対し、どちらかというと角ばったシルエットをしている。

 翼はこれまで見た事のない台形をしていて、未来的な印象を受ける。

 描かれた国籍マークはアメリカのもの。

 そして、胴体のあちこちから大小さまざまなハッチを開き、空中に浮いている。垂直着陸中の写真だろうか。

「ねえじぇしぃ、これがF-35B?」

「そうみたいだね」

 これが、将来サングリーズの艦上に現れるという事か。

 ジェシーが思ったそんな時、艦の後方上空から再び轟音が鳴り響いた。

 先程発艦したシーハリアー2機が、編隊を組んでサングリーズの上空を飛び去ったのだ。


 ぴーぽーぴーぽー、と注意を促すサイレンと共に、エレベーターが飛行甲板の底からゆっくりと上がってくる。

 現れたのは、ジェシー達が乗るアパッチだ。

 メインローターは後部へ折り畳まれており、意外とコンパクトにまとまっている。

 そんなアパッチを載せたエレベーターが飛行甲板で停止すると、周囲を囲んでいた安全柵が自動で甲板に格納される。

「おおー、やっぱりエレベーターで上がってくる様子って様になりますねー!」

 エリシアが、いつの間にか用意していた自前のカメラで、その様子を写真に収めている。

 そのシャッター音をBGMにしながら、アパッチは作業員達数人の手によって発艦レーンへと押されていく。

「あの、エリシア先輩」

「そして三軍のヘリが遂に揃い踏み! いいですねいいですね……!」

 ジェシーの呼びかけも聞かず、発艦レーンをカメラで見据えながら歩き回り、シャッターを押し続けるエリシアは、やや興奮気味だ。その様子は、女性モデルを撮影する男カメラマンに少し似てきている。

 彼女が見据える発艦レーンには、3種類のヘリコプターが一列に並んでいた。

 前方には、陸軍のアパッチ。

 後方には、空軍のチヌーク。

 そして中央には、海軍のマーリン。

 塗装も外見も全く異なり、ショーでもない限り同じ場所に集う事がなかった3種のヘリが、このサングリーズという場所で集った。

 ヘリコプター好きのエリシアにとっては、興奮しないはずはない光景だろう。足取りも普段より増して軽い。

「あの、エリシア先輩……うーん、やっぱり夢中になってるみたい……」

 追いかけて呼び止めようとしていたジェシーは、困り果ててしまった。

 エリシアは写真撮影に夢中になりすぎ、周りが見えなくなっているようだ。

 そして何より、ジェシーの手は未だ隣にいるレネの頬に擦り付けられている。レネがどうしても離してくれないのだ。

 おかげでレネを引っ張りながら歩く形になってしまい、足取りが軽いエリシアを追いかけるのが難しい。

「やれやれ、そんなお荷物抱えてるからそうなるのよ、ジェシー君」

「そ、そうは言われましても……」

 エリシアに声をかけるよう言い出した本人アンバーは、呆れている様子だ。

 とはいえ、ジェシーはどうしてもレネを引き剥がせない。こうしてうっとりされると、ジェシーはどうしても引き剥がしたらかわいそうと思ってしまうのだ。

「……仕方がない。私が行ってくるわ」

 無駄だとわかったのか、アンバーは自らの足を動かしてエリシアの元へ向かい、声をかけた。

「ちょっと、エリシアちゃん」

 すると、エリシアははっと我に返り、カメラを降ろして振り返った。

「あ、少尉殿。何でしょうか?」

「写真撮ってるのもいいけど、もうフライトの準備の時間よ」

 そう。

 これからヘリに乗り込むためには、フライトスーツ一式などを着なければならない。そのためには、当然ながら艦内に一度戻る必要がある。

「まだ大丈夫ですよ、時間は充分ありますから」

 だが。

 エリシアはあっさりと、余裕があるから大丈夫だと告げた。

「時間はあるって、どうして?」

「アパッチはメインローターを自動で開けませんから、発艦可能になるまでにはまだ時間がかかります。それにチヌークは、ローターを取り外さなければなりませんから、猶更時間がかかります」

 ほらご覧のように、とエリシアがチヌークを指差す。

 そこには小さなクレーンがあって、チヌークのメインローター1枚をローター基部まで釣り上げている所だった。

 エリシアが言った、ローターブレードを取り付ける作業である。

「ですから、もう少し写真を撮る時間をくださいませんか? 大丈夫です、しっかりと間に合わせますから」

「むむ、なかなかやるわね……」

 自信満々に提案するエリシアに、アンバーは圧倒されている。

 それを遠目から見ていたジェシーは、そこはちゃんと突っ込むべきじゃないかな、と思わずにらいられなかった。

「よし、充電完了! ありがとジェシー」

 そしてレネは、ようやくジェシーの手を頬から離してくれたのだった。

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