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サングリーズ・チョッパーズ! パート1:撃てないジェシーと撃ちまくるレネ  作者: フリッカー
フライト2:素晴らしきかな強襲揚陸艦ライフ!
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セクション09:疲れていてもご飯は食べよう

 食事は、軍艦に限らず船で生活する者にとって、数少ない楽しみのひとつである。

 故にサングリーズの食堂も、船員達にとっては数少ない憩いの場である。

 今日も、この食堂は朝食を目当てに多くの船員達でにぎわっている。

 制服に着替えたジェシー達が利用するのは、セルフサービススタイルの士官用食堂。候補生故に階級こそないが、曲がりなりにもパイロット――士官候補生であるためだ。

 しかし。

「ああ、しんどぉ……」

 レネは、トレーに置いたメニューに手もつけず、ぐったりと席に背を預けていた。

「まあ、きつかったからね……追加の腕立て伏せ……」

「少しは連帯責任取られる側の気持ちにもなりなさいよ……ああ、ショギョウムジョウ……」

 疲れているのは、隣に座るジェシーや、向かい側に座るハルカも同じであった。

 理由は単純。

 レネが喧嘩騒動を起こした罰として、腕立て伏せを追加されたのだ。連帯責任としてジェシーやハルカも一緒に。

 団体行動を基本とする軍において、1人の問題はチームの問題。このように連帯責任を取られる事は、別に特別な事ではない。

 ただ、その問題が運動の時間中に起きてしまった事が、彼らの不運だったと言える。

 そのせいで、エリシアやシエラなどの友人はもう食事を終えていなくなっている。

「っていうか、『ショギョウムジョウ』って、何なの……?」

「え……? 世の中は空しい、って意味――多分」

「多分って……あんた、カンジの言葉使えばかっこいいって思ってるんでしょ……」

「何ですってぇ……?」

 レネとハルカが口喧嘩を始めたが、疲れているせいで互いに覇気がなく、顔も見合わせていない。もはや、喧嘩にさえなっていない。これでは、動物のナマケモノ状態である。

「いいから、早く食べよう2人共……いくら24時間営業って言っても、食べる時間は決まってるんだから……」

 ジェシーはホットサラダを食べながら、2人を諫める。

 軍では、だらだらと食事をする時間はない。時間が決まっていて、それが迫ったら食べきっていなくても下げなければならない。軍艦に乗って実戦部隊の隊員と行動と共にするのなら、猶更だ。

 何より、疲れているせいか普段よりおいしく感じる。こんなものを疲れのせいで食べないというのは、損だと思うのだ。

「はあい……」

 レネとハルカの力ない声が重なった。

 3人は、決して早くない速度ながらも食事を再開。

「あいつ、一体何なんだ……? あの女の前だと普通でいるなんて……いててて」

 そんな3人の様子を、食堂の外からシーザーが覗いていた。


     * * *


 食事を終え、少し疲れが和らいだ3人は、休憩用のロビーにやってきた。

 狭いながらビルの中にあるもののようにきれいに磨かれた床があるここは、船員達がくつろぐ場所であり、テレビも設置されている。

 既に多くの船員が小さな円卓を囲んで思い思いの時間を過ごしており、ボードゲームに没頭しているものもいる。

 そんなロビーに入ると、一同の視線が集まる。

 だがそれは、あまりいい印象のものではない。

「あれが、今朝暴れたっていう候補生か?」

「あんなかわいい見た目なのに……信じられねえな」

「頭をウイルスにやられてるんじゃないの?」

「人を凶暴化させるウイルスか? そんな都市伝説もう聞き飽きたよ」

 そんな話が飛び交ってくるだけで、誰も近寄ろうとしない。

 どうやらいい印象は抱いていないようだ。

「随分、有名人になったものね」

「まあ、無理はないよ」

 ハルカと、小声で会話するジェシー。

 騒動を起こしてしまった以上、もう割り切るしかない。

 もっとも、当のレネはあまり気にしていないようだが。

 まるで不審者にでもされたかのような気まずさと戦いながら、3人は目的の場所に到着。

 それは、町のどこにでもある自動販売機。

「あったあった。自販機。レネ、何買う?」

「え? うーんとね――」

「……なんだ、日本茶ないんだ。ごめん、私パス。他当たってみる」

 レネが飲み物を選び始める一方で、ハルカは興味をなくしたとばかりに踵を返し、去ってしまう。

「あっ、ハルカ……!」

「いいじゃないジェシー。買おっ買おっ! あたしこれ!」

 去っていくハルカを無視して、レネは決めた飲み物を指差す。

 仕方ないか、とあきらめて、飲み物を買う事にする。

 艦内には現金が持ち込めない決まりなので、代わりに専用の電子マネーを使い、お目当ての飲み物を買う。

 がこん、と出てくる2つの缶。

 ジェシーはスポーツドリンクで、レネはコーラだ。

「はい」

「ありがと!」

 ジェシーがレネにコーラを渡し、自分もスポーツドリンクを開けようとした、そんな時。

 ふと奥に、見知った人影を見つけた。

「エリシアさん……?」

 円卓を囲んで座るエリシアと、フィリップだった。

 2人の視線は、全く同じ所――離れた所に設置されているテレビに向いている。

「あ、ドーファン! あ、いえ、中国製だからハイトゥンですね」

「先輩、そこしか見てないんですか……」

「いえいえ、ハイトゥンも面白いのですよ! ハイトゥンもドーファンも、英語にすると同じドルフィンになるのですよ。ハイトゥンってコードネームを付けた人は、天才だと思いません?」

 エリシアのテンションが少し高い所を見ると、どうやらヘリの話をしているようだ。

 一体何を見ているのだろうか。

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