表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/88

セクション17:マスター・スコット

「あの、シエラちゃん? その方とは、どういうご関係……?」

 問いかけるエリシアの声が、普段よりも増して遜っているように聞こえた。

 すると、男は気まずそうな視線を一同に向け、こほん、と咳払いをして向き直る。

「あー、シエラが、いつも世話になってるみたいだな。オレは、スコット・フェアリー。別にマスターって名前じゃあねえからな。マスターって呼ばれるくらい偉い訳でもねえからな」

 やや不機嫌そうに名乗る男。

 すると、早速シエラが反論してきた。文句というよりも、勇気づけるような形で。

「そんな、充分偉いですっ! マスターは私の師匠なんですから、もっと堂々としてくださいっ!」

「あ、あのなあ……」

「マスターは操縦も上手ですし、勉強もできますし、教えるのも上手ですし……私にとっては立派でかっこいいマスターですからっ!」

 う、と男――スコットは動揺し、顔が僅かに赤くなった。

「おだてたって、何も出ねえぞ……」

 シエラから目を逸らしつつ、頭を掻く。

 その様子は困っているようにも見えるが、不思議と満更ではなさそうにも見えた。

「本当にいい人なんだよ、マスターは! 困った時は、すぐ助けてくれるんだから!」

「あ、はは……」

 シエラの訴えに、一同は苦笑するしかない。

 スコットがシエラの先輩であるらしい事は、ジェシーも読み取れた。

 なぜシエラがマスターと呼んでいるのかまではわからないが、それを聞く事には妙な抵抗があった。

「友人が、お世話になっているみたいですね。私はエリシア・スタリオンと言います」

「ハルカ・ブラックホークです」

「俺は、ジェシー・ガザードです」

「あたしはレネ・スクルド」

 とりあえす、スコットに自己紹介する4人。

 その中でスコットは、スクルドという名字が気になったのか、まさか、とつぶやいていた。

「まあいいや。で、お前達、どういう目的で来たんだ? ひょっとして、サングリーズの特別航海選抜メンバーなのか?」

「はい」

 スコットの問いに、代表してジェシーが答える。

「そうか、シエラと一緒か……」

「マスターも、私と一緒にマーリンに乗るの!」

 スコットに補足するように、シエラはどこか得意げに説明した。

「あ、そうなんですか。これからよろしくお願いします」

 エリシアが挨拶すると、スコットはまあよろしくな、とどこかぶっきらぼうに返した。

 そんな時、シエラが思い出したように、スコットへ提案した。

「そうだマスター。私、ちょっと友達呼んできますから、エリシアさん達を兵舎へ案内してくれませんか?」

「ん? ああ、そうだな。どうせ暇だし、引き受けよう」

「ありがとうございますっ!」

 提案を引き受けるスコットと、純粋な笑顔で礼を言うシエラ。

 それはまさに、普通の仲が良い先輩と後輩の関係そのものだった。

「よし、じゃあ案内するぞ。ついてきな」

 スコットは、自ら率先して歩き出した。

 ありがとうございます、と言いつつ、ジェシー達はシエラと別れて後をついて行く。

「何か僕、完全に浮いちゃってるな……」

「まあ仕方がないわよ、少年」

 その最後尾で、残されたフィリップとアンバーが、そんな事を話していた。


     * * *


「よースコット! かわいこちゃんいっぱい連れてモテモテだなー!」

「るせー、ロジャー」

 通りすがった若い男の冷やかしを流しつつ、スコットは基地内の道を進んでいく。

 やがて、一同は2階建ての大きな建物へとたどり着いた。

「ここが兵舎だ。多分、もうお前達の荷物も置いてあるんじゃないか?」

 スコットはその前で足を止めると、親指で建物を指差した。

「ありがとうございます。フィリップ君、行きましょう」

「はい!」

 フィリップが先に兵舎へと入っていく。

 エリシアもまた、その後を追って中へ入ろうとした。

 そんな時だった。

「マスターッ!」

 不意に、シエラの声がした。

 振り返ると、手を振りながら駆け寄ってくるシエラの姿があった。

 だが、呼んでくると言っていた友人の姿は見当たらない。1人だ。

 気になったスコットが、シエラに問いかける。

「シエラ? どうした、友達呼んでくるんじゃなかったのか?」

「ごめんなさい、何か用事があるっぽくて、すぐに来れないみたいなんです」

「そうか、そりゃ仕方ないな」

「はい、仕方ないです。仕方ないですから――」

 すると、シエラは何を思ったか、スコットの腕に飛びつくように抱き着いてきた。

「お、おいシエラ!?」

「2人で一緒にジュースでも飲みに行きません?」

 動揺するスコットをよそに、どこかいたずらな笑みを浮かべて提案するシエラ。

 何か、違和感がある。

 行動がシエラらしくない。

 見ていたジェシーはそう思ったが、周りを見るとどうやらエリシア達も気になっていた様子だった。

「な、なんで一緒に行くんだよ?」

「1人で飲むよりいいじゃないですかー」

「はあ!? まあ、そりゃそうだが、なんでオレなんだ?」

「だって私、イケメンなマスターと一緒にいるのが一番好きなんです!」

 いたずらな笑みを保ったまま、スコットを見上げるシエラ。

 好き、と彼女が臆面もなく発した事に、ジェシー達も目を丸くしてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ