これからなようです
その日は、実に太陽が照っていた
受付の男はチューリップハットを着用した赤い竜の回りで
数人の大道芸人が踊っているのを目の端で見る
「はぁ。何でこんなことをしなきゃいかんのさ」
竜は退屈そうにため息を吐いた
人口密度が高く、皆がはしゃいでいた
「すまん。退いてくれるか」
「うおぉ竜様! こっち向いてー!」
「我らの守護神に乾杯!」
「……ローズも大変な役目を押し付けれたものだ」
受付の男は微笑し、呟きながら
両手を挙げて雑踏を抜けた
「んで、俺がバっときてドーンだった訳よ!」
「流石っす!」
「ガハハっ、そんなことはない!」
ギルド内も、外と変わらず賑わいを見せていた
受付の男は真っ直ぐに自らの座るべき受付に向かった
「フール。表のあれ、凄くなかった?」
金髪オールバックで目を瞑っているアニーが
受付奥から出現し、興奮したように話した
「うむ。大変な騒ぎであった」
「だよね。本当に、よく頑張ったよね」
アニーは感動したようにガッツポーズしていた
その様子を見て、受付の男は微笑した
「ブレイズ。おまえにも分かったか」
「もちろんだって
僕もあれだけ魔物が出た時はもうダメかと思ったけど」
「……ほう」
「じょ、冗談だって。本当に冗談!」
受付の男の顔があからさまに険しくなったので
アニーは笑いながら誤魔化した
「あっ、これはこれはフール公」
「だから、それはやめよと言っておる」
ふと、受付の男は金属鎧の女性に目を止めた
「も、申し訳ありません!」
「……あのような領地で偉くなったつもりはない
よく分かったであろう」
騎士のきっちりとした一礼に
受付の男はひらひらと片手を振って、たしなめた
「……はい」
騎士は礼を深くさせていった
「サラ准尉。国王様がお呼びです!」
「わかった。では、また……フールさん」
騎士は衛兵の呼び掛けに答えて
受付の男に会釈した
「うむ。ではな」
受付の男は手を振って、騎士の背を見送った
正面に目を戻すとフードを被った人間が
受付と出口を行ったり来たりとして、不振な動きをしていた
「どうかしたかね?」
「……おじいさん
ボク、その、冒険者に戻れるそうなんです」
受付の男が呼び止めると
フードの少女は忍び足で受付に向かい、男に告げた
「ほう。それはまた……」
受付の男は少女の選択に顔を曇らせた
「もう盗みなんてしません!」
「本気かね?」
「この世界で、全うに生きてみたいんです!」
「……君は既に全うに生きておるであろうが」
受付の男は、少女の選択に歯向かい続けた
「ボクは冒険が好きです!」
「……わかった。カードは作ろう」
受付の男は最後に大きく頷いた
「本当ですか!?」
「ああ。その代わり、少し待ってくれ」
「えっ?」
「座っておれ。カード作りに時間がかかる」
受付の男はそれだけいうと、受付奥に入っていった
受付の男は受付奥に入ると依頼のリストを開いた
大きい本を器用に捲っていきある程度すると
自らの懐から出した紙を挟んだ
受付の男は、受付奥からリストを持ち出し
こじんまりとした受付に座った
「……来たか」
すると、白いワンピースを来た少女と
タンクトップにホットパンツのようなものを着る少女
筋肉質の男性という、見慣れた三人を見つけた
「フール。薬草の依頼はあるか?」
「君の体力には恐れ入るよ」
「ゴロリさんは無敵ですから!」
「そうそう。そう簡単にやられやしないって」
ゴロリは確かに、と思い笑みを浮かべた
アケミがにこやかにいうと
ケルルも軽くゴロリの脚を叩き、笑った
「ああ、あるとも。君達にとってある」
受付の男はリストの中から、薬草の依頼を取り出すと
机の上に提出した
「助かる」
「よーし。目指すは記録更新ですね!」
両手を組んで伸びをするアケミに
ゴロリは頼もしいな、と思った
「ゴロリよ。もうひとつ、頼みたい」
「なんだ?」
ゴロリは受付の男から依頼の紙を受け取って聞いた
「そこの少女を頼めるか?」
「いいぞ」
ゴロリは受付の机に顔を埋めて寝るフードの少女を一瞥すると
受付の男に即答した
「……先輩として頑張らなきゃな」
「そうですね。先輩、として……」
アケミとケルルはその様子を見て
顔を見合わせながら笑った
(完)
ここまでお付き合い頂きありがとうございました
次回作にご期待下さい




