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生きていたようです

「こっちだ」


 机に座る全身鎧の猫騎士が

 ゴロリ達を確認して片手を挙げた


「……それ、持っていくのか」


「ああ」


 ゴロリ達は猫騎士近くの椅子に座った

 猫騎士は大剣を背負い、大きい革袋を三つ腕に下げていた

 今度は本気だすといった風であった


「折角だ。わたしが奢ろう」


「ええっ」


 猫騎士の提案に、アケミは驚いた

 ゴロリは席をたつ猫騎士を目で追う


「今回は甘えていい」


「そ、そうですか?」


「なんか悪い気がするな」


 アケミとケルルは遠慮がちに猫騎士を見た

 言いながら、止めにはいかないところを見ると

 彼女達なりに何か察したのだろうとゴロリは思う


「黄金蟹の丸焼きで良かったか?」


「お、黄金蟹って結構した気が」


「え、ええっ!?」


 猫騎士は早々に注文を済ませて、元の席に戻ってきた

 ケルルがアケミに耳打ちし、アケミは両手で口を覆う

 黄金って付くくらいだからレアだろうな。ゴロリは少し思っていた


「嫌い、だっただろうか?」


「そ、そんなことないですはい」


「うんうん」


 消え入りそうな声を出す猫騎士に

 にこやかにアケミは答えた

 ケルルも、それに続いて全力で頷いた


「そうか、ゴロリ。君は……?」


「有り難くいただくよ」


 ゴロリは猫騎士にあっさりと答えた

 二人が耳打ちした内容はわからなかったが

 何となく察して、さして気には止めなかった


「お待たせ致しました」


 話していると、図体が大きい店主が机の上に大きな皿を置く

 金色な以外はタラバガニを彷彿とさせる身であった

 これは戦争まったなしだな。ゴロリは腕をまくった




「ふー、食った食った」


「美味しかったですね!」


 ケルルとアケミは満足そうにしていた

 無言で食うくらいだからな。ゴロリは少し思った


「三人で食べて良かったのか?」


「心配いらない。わたしはもう済ませた」


 ゴロリは自らが食べた蟹の殻を

 皿に放り込みながら、猫騎士に質問した


「そうか」


 ゴロリは猫騎士に短く答えた

 どうやって食べるのか単純に興味があったが

 と少し残念に思っていた


「……さて、そろそろ出発しよう」


 猫騎士は立ち上がって椅子を前に引いた

 ゴロリ達も、同じように立ち上がった




 猫騎士を先頭にゴロリ、アケミ、ケルルと並び、山付近まで進むと

 猫騎士が話があるとゴロリ達にいったので輪になった


「ここの山道は険しい

 水を持ってきたから、皆で飲んでくれ」


「助かる」


「ありがとうございます!」


「ありがと!」


 猫騎士はそういって三つの革袋を

 ゴロリ、アケミ、ケルルに配った


「自分の分は?」


「……心配するな」


 猫騎士はそういって両手を頭の上に乗せた

 猫だから、ということだろうか。ゴロリは笑いを堪えた


「……二人とも、持てるな?」


 猫騎士は気を取り直すように後ろ手で組むと

 興味深く革袋を観察しているアケミとケルルに聞いた


「ええ。このくらいは大丈夫です」


「軽い軽い!」


 ゴロリは革袋を持ってちょっと重いなと感じたため

 軽々持ち上げる二人を見て頼もしい限りだと思った




「なんだこの有り様は」


 山頂まで到達して猫騎士は呟いた


 まずテントは全て壊されていた。所々、地盤沈下も見られる

 そのような状態なので、今度こそ人がいない気がした


「……黒い骸骨がやったのだろう」


「生きていたのか」


「ああ」


 猫騎士にゴロリは短く答えた

 そういえば、猫騎士は知らなかったかとゴロリは思った


「……ゴロリさん。あれ!」


 アケミが指差す先には

 テントの下敷きになって倒れている人が見えた


「アニー!」


 金髪のオールバック。一目瞭然だった

 確認すると、ゴロリは駆けた。間に合ってくれ、そう思った


「ぐ、ああっ」


「……おい、まだ寝る時間じゃないぞ

 聞いているのか金髪ぅっ!」


 血は出ているが大丈夫だ、意識はある

 ゴロリは少し思って、うつ伏せに倒れるアニーに叫んだ


「……ヒーラーヒーベストっ!」


「くっ!」


 アニーは流暢に詠唱するとアニーの体が緑色に輝いた

 相当気合いを入れたらしく、ゴロリは咄嗟に目をそらした


「助かったよ」


 アニーはテントを力ずくで退かすと

 ゆっくりと立ち上がって砂埃を払った

 聖職者風の衣装が赤く濡れていた


「一体、何があった?」


「……ごめん。説明している暇ないや」


「そ、そうか。わかった」


 特に変わった様子はないように思えたので

 ゴロリは大丈夫という意味も込めて手を挙げた


「無事だったか」


 猫騎士は駆け寄ってアニーに声をかけた

 アケミや、ケルルも猫騎士の後から付いていった


「うん。大丈夫……これで全員?」


「そうだが?」


 何やら焦っているアニーに

 猫騎士はアケミとケルルを確認すると早々に答えた


「悪いけど、君たちを巻き込んで移動するから」


「……え、えっと

 どういうことなのでしょうか」


「説明している暇はないそうだ」


 困惑するアケミに、無理もないとゴロリは思っていった


「リンクルーラーッ!」


 アニーは跪いて片手で地面を叩いた

 すると、アニーの手から青白い魔方陣が形成されて広がった

 やがて自分の脚まで到達するとゴロリは意識を手放した

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