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お出かけなようです

「フールがいないな」


「どうしたのでしょう」


 こじんまりとした受付を覗くと、受付の男の姿がなかった

 ゴロリの様子にアケミは少し周囲を確認していった


「恐らく、アニーを探しに行ったんだろう」


「ちょっと心配ですね」


 ゴロリは少し嫌な予感がした

 アケミもそれは同じようで、神妙な顔をしていた


「……ケルルを起こしにいくか」


「そうしましょう」


「ゴロリじゃないか」


 ゴロリとアケミが、ギルドを後にしようとしていると

 背後からその時に聞き覚えのある声が聞こえた


「騎士か。元気そうで何よりだ」


 ゴロリは振り返って確認すると

 全身鎧の猫騎士が後ろで手を組んで立っていた


「嫌味か?」


「いいや。褒めている」


 ゴロリの言葉に猫騎士はほう、と唸った

 実際、ゴロリも嫌味をいっているつもりはなかった


「……あのような事態になろうとは思いもよらななかった

 わたしの失態だ」


「罵った方が楽になるのか?」


 ゴロリは猫騎士の様子になるほどと察して言った

 猫騎士もこれにはぐう、と唸って頭を左右に振っていた


「フールがいなくなった

 アニーを追ってあの山に行ったんだろうと思う」


「なにっ」


 猫騎士は受付に顔を向けて確認するように見回した

 人気がないことがわかると、ゴロリの方に顔を向けた


「また力を貸してくれないか?」


「……構わない」


 猫騎士はゴロリに頷いて答えた


「よし。決まりだな」


 ゴロリは満足したようにいうと

 隣に立っているアケミと顔を見合わせて、猫騎士に背を向けた


「……わたしは少し準備がある、砦の恵みで落ち合おう」


「わかった」


 ゴロリはそういって、踵を返した

 アケミも、その後からついてきた




「うーん、まだ眠い」


「ダメです。起きて下さいぃっ」


 四つん這いになったアケミが

 布団にくるまるケルルを揺らしていた


「アケミ。布団ははげないのか」


 ゴロリはアケミがケルルを起こす様を

 アケミの傍に立って見守っていた


「ケルルさんがものすごい力で布団を掴んでいます」


 まじか。ゴロリは少し思った


「急を要するので、ごめんなさい。うりゃっ!」


「わあっ!」


 アケミはケルルの敷布団をてこの要領で引っくり返した

 豪快だな。ゴロリは絶句した


「う、うーん」


 尚も団子の用に布団にくるまるケルルを見て

 ゴロリは少し罪悪感を覚えた


「どすこいどすこいー」


「こ、降参。降参っ!」


 アケミは団子のようになった布団を両手で押して転がした

 何も物がない畳を往復するだけとはいえ、これにはケルルも参って出てきた

 そもそも、どすこいとかどこで覚えたとゴロリは少し思った


「大丈夫か、ケルル」


「うん……」


 ケルルはアケミの手を借りてゆっくりと立ち上がった

 ほぼ目は瞑っていたが、ゴロリに微笑を浮かべている


「ごめんなさい、ケルルさん」


「大丈夫」


 ケルルは少し俯くアケミに優しく答えてから

 あくびを一つすると、両手を組んで伸びをした




 ギルドに行く道中をゴロリ達は並んで歩いていた


「ええっじーさんがいなくなったって!?」


 ケルルはゴロリから大体の話を聞いて大げさに驚いていた

 そういえば、外に出たら目が覚めるんだな

 ゴロリは違うことを思っていた


「ああ。アニーもな」


「アニーって?」


「えっ、昨日会ったばかりですよ!?」


 ケルルの反応にアケミは驚きの声を上げた


「冗談冗談」


「びっくりさせないで下さいよ、ケルルさん」


 ケルルとアケミは顔を見合わせて笑っていた

 仲良いねぇ。ゴロリはしみじみと思った


「前回に続いて、騎士も来てくれるそうだ」


「ああ、あの人か。頼もしいな!」


「そうですね!」


 二人とも、実は適当に言ってるんじゃないか

 ゴロリは少し思った


「……フールも、アニーも大丈夫だろうとは思うが油断はならない

 気を引き締めていこう」


「うん!」


「はい!」


 ゴロリはケルルとアケミの返答を聞くと

 足早にギルドを目指した

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