疲れたようです
疲れ果てたゴロリ達は、ケルル家にお邪魔していた
「あー、疲れたぁー!」
「うごっ」
ケルルが布団に寝るゴロリにのしかかり
ゴロリは上半身を起こした
「えっ、重かったか?」
ゴロリが肺の内容物をすべて吐き出したので
ケルルは心配そうにゴロリを見た
「……大丈夫だ」
ゴロリはケルルにそういって、また布団の中に入った
「チャンバラごっこでもしますか。ケルルさん!」
それを見ていたアケミが部屋奥から枕を持ってきて構えていた
チャンバラごっこなんてどこで覚えたとゴロリは思った
「い、いや。遠慮しておくよ」
そんなアケミにケルルはたじろぐ
アケミは寝ていたから、体力が残ったんだろうなとゴロリは思った
「楽しいのに……」
アケミは枕を抱えて呟いた
「あ、明かりを消そう。うん!」
ケルルは少し逃げるようにして
部屋の照明を暗くした
「おい、ケルル……」
ゴロリは自らの布団に入ってくるケルルを確認して声をかけた
「えっ、嫌だったか?」
「いいや。自分の布団で寝た方が眠れると思っただけだが」
ケルルが珍しく寂しいような声を出したので
ゴロリは少し気を遣った
「じ、実はそうでもない……」
「なんだって?」
「こうして寝ていた方が寝られるってことです!」
ケルルの言葉を聞き返すゴロリに
アケミはゴロリの布団に入りながら答えた
なるほどなとゴロリは思った
「すー、すー」
ケルルは直ぐに寝息を立てていた
疲れていたのだろうとゴロリは思う
「アケミ、寝れないか?」
ゴロリは、寝返りばかりしているアケミが気になって声をかけた
「……ごめんなさい」
「いいんだ」
アケミは素直に謝っていたが別に謝らなくともとゴロリは思っていた
「ゴロリさん。わたしね、夢を見ていたんです」
「どんな?」
アケミが声を潜めて、ゴロリに話した
そんなアケミにゴロリも短く聞き返した
「お母さんとお父さんが笑っている夢です」
「いい夢じゃないか」
「でも、顔が分からない
幸せなのにずっと顔が見えてこないんです」
「……そうか」
ゴロリは神妙になって呟いた
「それでわたしは気が付くんです
ああ、これって夢なんだなって」
ゴロリは、言葉を失った
アケミの言葉がどういう意味かをゴロリは知っていた
アケミは、元奴隷だ。それを痛感した
「……わたし、今とっても幸せです」
「そうか」
ゴロリは複雑な思いでアケミの言葉を聞いた
「寝ますね、ゴロリさん。おやすみなさい」
「ああ。おやすみ、アケミ」
アケミはゴロリの片腕に抱きつき、眠った
「すー、すー」
(目覚まし時計があってもいいかもな
しかし、それだとケルルを起こすか……)
日差しで起きたゴロリ寝息を立てるケルルを見て少し思っていた
「うーんっ」
アケミも目が覚めたようで上半身を起こして伸びをしていた
「アケミ。今回も二人で出よう」
「はぁい」
眠そうに片手で目を擦りながらアケミは答えた
ゴロリは頷くと、ケルルを起こさないようにそっと布団から出た
「昨日のことだが」
「ええ」
ゴロリは、ギルドに向かう道中でアケミと話を切り出した
「実は、アケミの母を名乗る女と会った」
「……知ってます」
ゴロリはアケミにそうかと思った
アケミの顔から察するに、興味ないといった風であった
「どこまで?」
「彼女がわたしを捨てたってところまででしょうかね」
「あの女がそういったのか?」
「……はい」
アケミの話を聞いてゴロリは少し溜息をついた
救いようがないな
巻き角の女性に対して、ゴロリはそう思い始めていた
「……向き合うことはできそうか?」
「いないものと割り切っています」
アケミの言葉にゴロリは少し俯いた
「それは、ダメだ」
「えっ?」
ゴロリの言葉に驚いて、アケミはゴロリの方を見た
「どんなにクズでも親であれば、認識した方がいい
でないと、自分が助からないぞ」
「……やってみます」
「ああ」
アケミの答えに、ゴロリは少し反省した
ゴロリでも、なぜ自分がアケミの言葉を否定したのかわからなかった
そして、わからないまま、ゴロリの目にはギルドが見えてきていた




