背負ったようです
アケミを背負ったゴロリ、ケルルは
焼け落ちた森を走っていた
「おっちゃん。あの女の子いなくなっちゃたな」
ケルルは背後を一瞥すると
先頭を走るアケミを背負ったゴロリにいった
「ケルルの母親と一緒なら大丈夫だろう」
ゴロリは竜に変な信頼感があった
あれで面倒見は良い。何とかしてくれるだろう
そう思っていた
「違いないな
早いことアケミちゃんを連れて帰ろ!」
「ああ!」
ゴロリはケルルに短く答えて、先を急いだ
無事に街までたどり着いたゴロリ達は
その足でギルドに直行した
「ふ、フール。アニーはいるか!?」
「あ、ああ」
ゴロリは息を切らせて、受付の男に尋ねた
ゴロリのあまりの焦りように、男は少したじろいていた
「は、速いな。おっちゃん!」
ゴロリに遅れて、ケルルも息を切らせて受付に駆け寄った
ケルルもよく頑張ったよなとゴロリは感心した
「うん? 僕ならここだけど」
「アニー!
丁度良かった。アケミが大変なんだ」
目を瞑った金髪の男が受付奥から出てくると
早速アケミの顔を見えるようにした
すると、アニーの眉間に皺が出来ていた
「……これはどこでやられたの?」
「や、山の上だ」
「どこの?」
「焼けた木を抜けた先にあった山だ!」
「へー、本当」
ゴロリの話をアニーは興味深げに聞いて、頷いた
なんだか妙に詮索するなとゴロリは思ったが
余裕がなかったため、然程気にしなかった
「ゴロリ。まさかとは思うが
淫魔と会わなかったかね?」
「ああ。それがどうした」
受付の男はゴロリの返答に
顔が真っ青になった
「ブレイズよ。まずは落ち着くのだ」
「やだなぁ。僕はとっても落ち着いてるよ、フール」
受付の男に答えている間に、ゴロリの背後に移動したアニーが
アケミに片手をかざした
アニーの声は、普段とは違い少し震えているように思えた
「う、うーん」
薄ピンク色の靄を醸し出しながら
アケミは唸って起き上がった
「あ、アケミ?」
「ゴロリ、さん?
うわわっな、なんでわたしが背負われて!?」
ゴロリの呼び掛けに
アケミは驚いたように声をあげた
「よかった。気がついたんだな」
ケルルも、いつも通りのアケミの声に
安心したようであった
「よかったよかった」
「おい、ブレイズ!」
受付の男はアニーに叫んだ
ゴロリもアニーに礼を言おうと背後を見たが
アニーはもういなかった
「ぶ、ブレイズ……」
受付の男も引き留められず、悔しそうに唇を噛んでいた
「フール。あいつは一体……」
ゴロリは不思議そうに背後を見るアケミを
ゆっくりと下ろしながらフールに尋ねた
「……ま、まぁ、気にするな。大丈夫であろう」
「本当か?」
このフールの顔を見てしまうと
さすがにゴロリも心配になって念をおした
「うむ。放っておきなさい」
この男がそこまでいうのならとゴロリは思ったが
一応アニーのことは覚えておいた
「そういや、騎士を見なかったか?」
「ああ。あやつは少し前に戻ってきたな
何やら増援を募っていたが、人が集まらず困っておった」
受付の男に話を聞いて、まさかとゴロリは思った
「そのまま出撃したか?」
「いいや。今日のところは諦めるといっておった」
流石引き際をわきまえているな
ゴロリは猫騎士に感心した
「……そうだな
とりあえず今日は帰るとしよう」
「賛成!」
「そ、そうですね!」
ゴロリの提案にケルルとアケミは手を挙げて答えた
日はもう落ちていたし、ゴロリは色々と疲れが溜まっていた
そして、ケルルとアケミの二人も同じだろうと思った
「うむ。ではな」
「ああ。またな」
手を軽く振る受付の男に
ゴロリは掌を見せるようにして答え、踵を返した
「じゃあね!」
「お休みなさーい!」
ケルルとアケミは受付の男に手を振り返して
ゴロリを追いかけた
「……行ったか」
受付の男はゴロリ達を見送ると
ゆっくりと立ち上がった




