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空を飛んだようです

 竜によって空を飛んだゴロリ達は

 竜の両手の中で屈んでいた


 そうすると竜の手の内に体がすっぽりと入るため

 確かに落下の危険性はないといえた


「わああっ」


「えっ、ちょ」


「も、もう少しなんとかならんか!」


 泥棒の少女、ケルル、アケミを背負ったゴロリは

 中でもみくちゃになっていた


「これでも気を遣ってるんだ。我慢しな!」


 そんなゴロリ達に竜は一喝する


「ひ、ひいっ。下が見えてるってぇ!」


「本当だ」


 怯えたように泥棒の少女は叫んだ

 竜の指と指の間から、下を望むことができた

 これは何とかツリーも真っ青だとゴロリは思った


「うおおっ!?」


「ハッハッ! なんだか楽しくなってきた」


 揺れた拍子にゴロリに転がってきたケルルが無邪気に笑っていた




 ケルル、泥棒の少女に続いて

 ゴロリは竜の手から焼け落ちた森に降り立った


「……た、助かったよ」


「へぇ」


 ゴロリの様子に竜は察したのかこの一言で済ませた

 アケミを背負ったゴロリは真っ青な顔をしていた


「こ、ここで降ろしてもらって助かった……うぅっ」


「おいおい、大丈夫かよ」


 泥棒の少女とケルルはゴロリより一足先に降りていた

 具合が悪そうに、四つん這いになっている少女を

 ケルルが背をさすって介抱していた


「その子、どうしたんだい?」


「……わからない。あの女に何かされたらしい」


 ゴロリが背負うアケミを見て、竜はふむと唸った


「……特殊な魔法だ

 それはフールじゃ無理だね。金髪を探しな」


「そ、そうなのか。わかった」


 竜の言葉にゴロリは意外に思って頷いた


「じゃあ、アタシはもう行くよ」


「あっ、オカン。待ってくれ!」


 竜が翼を広げ、飛び去ろうとしたところで

 ケルルが駆け寄って引き留めた


「……なんだい?」


「この前のことで、報酬が出るらしい!」


 ケルルの言葉を聞くと竜は空を仰いだ

 いまいちよくわかってないなとゴロリは思った


「……離島での働きで、国から竜に報酬がでるそうだ」


 ゴロリが補足すると、ケルルはそうそうと頷いた

 色々とありすぎて、ゴロリは忘れかけていたので

 ケルルが言ってくれて助かっていた


「はぁ? ほぼあんたの働きだろうに」


「いいや、そんなことはない」


 竜の率直な意見に、ゴロリは即答した


「謙遜することないよ。事実だろう?」


「……まぁ、俺はフールに背負われていたからな」


「ああ、なるほど。そうだったねぇ」


 ゴロリが呟くようにいうと

 竜は思い出したように口を少し緩ませた


「一緒に来てくれるか?」


「面倒。無理」


 竜はゴロリの誘いをぴしゃりと断った


(この姿のままじゃ抵抗があるのかも。あっ)


 ゴロリも竜の真意はわからず

 何となく思っていると、思い出した


「人にはなれないんだったな?」


「そうだ」


「……わかった。それだけで十分だ」


 ゴロリは竜が声を険しくさせたこともあって

 それ以上は聞かなかった


「変な気を遣っているようだね

 はっきりいってみろ」


 なぜわかったとゴロリは思った

 語尾に怒らないから、が付きそうだとも思い

 ゴロリは少し縮みあがった


「オカンってなんで人になれなくなったんだ?」


「魔力が足りないんだよ」


 ケルルはそんなゴロリを見かねたように質問すると

 竜があっさりと答えた


「俺が何とかしてみようか?」


「それでも足りなかった」


 そういや、緊急任務の時に指導したかも

 ゴロリは少し思い出した


「りゅ、竜さんでいいですか」


 少しスッキリした顔の泥棒の少女が

 竜に近付いて確認した


「畏まらなくとも構わないよ?」


 構わない、といいながらなかなかの迫力だな

 竜を見てゴロリは痛感した


「あ、アケミさんの母親とは知り合いですか?」


「腐れ縁だね。それがどうかしたのかい?」


「少し気になっただけで……ごめんなさい」


 泥棒の少女は竜に圧倒されながらも聞いていた

 知り合いだったのか。ゴロリは少し思った


「ああ。その娘はさっさと持っていった方が

 いいんじゃないか?」


「そ、そうか。色々世話になった」


 竜に言われて、ゴロリは竜に背を向けた


「またね、ケルル」


「うん、またな。オカン」


 ケルルも、先を急ぐゴロリに付いていった


「……あんたは行かないのかい?」


「ボクがいると迷惑なんじゃないかと思って」


「ふぅん……」


 竜は泥棒の少女から目を離し、小さくなったゴロリ達を

 見えなくなるまで見届けた

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