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支離滅裂なようです

(追手が来ない……あの少女のお陰か)


 ゴロリはアケミを背負いながら

 地下室の出口を探していた

 ケルルも、ゴロリの背後を走っている


(崩れ始めている……?)


 道の照明は不規則な距離にあるランタンが頼りだった

 天井から土塊が降ってきていて

 道幅も人二人が並んで丁度くらいになっていた


「ま、待ってぇっ!」


 ゴロリは聞き覚えのある女性の声を聞いて振り向いた

 巻き角の女性が、低空飛行で追い掛けてきた


「片付けろ。小娘!」


「えっ、うん!」


「いったーいっ」


 ケルルの裏拳で、巻き角の女性が吹き飛んだのを見て

 ゴロリは正面を向いた


「……痛いわね。何するのよ!」


「なんなんだ貴様は!」


 巻き角の女性を見てゴロリは吐き捨てた

 女性はしぶとく飛んで来ていたが、特に何もして来なかった


 ゴロリはケルルに殴られて何もしてこない女性に

 気味が悪いと思った

 そもそも、その格好は変態だろうとも思って腹が立った


「お、怒らなくったっていいじゃない

 魔力を分けたら急に暴れだすんだもの。困っちゃう」


「知るか!」


「そ、そーだ。力を貸してくれたら

 その……アケミちゃんの魔法、解くわよ?」


「さっきから何をいってるんだ!」


 アケミを寝かしたのはこの巻き角の女性で間違いない

 あまりにも荒唐無稽な話に、ゴロリはうんざりしてきていた


「で、でも解けるのはわたししかいないわ」


「そうだな、あの骨と心中したら信用する」


 フールに見せたらアケミはあっさりと目を覚ますだろう

 ゴロリはそう思っていた


「ひ、ひぃいっ。ごめんなさい、許してぇ!」


 所々アケミに似ているため、無下にも出来ず

 ただただ、面倒くさい奴だとゴロリは思った


「……今すぐにアケミを起こせば信用するかもな」


「は、はい……あれっ?」


 巻き角の女性はアケミに向けて両手をかざしたが

 特に何も起こらなかった

 どこ一つ、似てない。ゴロリは考えを改めた


「何をしている!?」


「ご、ごめんなさい

 さっきので全部魔力吸われちゃいました」


「無能か。やる気がないなら帰れ!」


 あまりに無駄なことが多い巻き角の女性に

 ゴロリはそろそろ限界を感じた


「あっは、これよ。これが欲しかったの」


「うわあっ!」


 ゴロリはしまったと思った

 巻き角の女性に指導してしまっていた


(くそっ!)


 女性はケルルを持ち上げて

 天井を破壊して地上を目指すようだ


「ゴロリさん、こっちだよ!」


 泥棒の少女はゴロリを出口で待ち構えていていれていた

 内心感謝したが、言っている暇もないので

 ゴロリは出口に駆け込むことで答えた


「……ケルルが拐われた」


「ええっ。とにかく急ごう!

 ここも危ない!」


 ゴロリ達は、階段を駆け上がった




 ゴロリ達が出てくると通ってきた道は塞がれていた


「……どうにかなったね」


 何とかテントまで戻ると泥棒の少女は一息ついた

 陥没の影響か、このテントは傾いていて外が見渡せた


「こうしてはいられない。さっさと外に出るぞ!」


「そうだね!」


 アケミを背負うゴロリの一声に

 泥棒の少女は付いていった


「グォオッ!」


 外に出ると咆哮と赤い光線が掠めた

 もしやと思い、ゴロリは仰ぎ見た


「あれは?」


「……ケルルの母親だ」


 ゴロリはチューリップハットを着用した赤い竜が

 空飛ぶ巻き角の変態を襲っていた

 泥棒の少女は嘘でしょ、といわんばかりにゴロリを見た


「ぐっはぁっ!」


 巻き角の変態は空中を右往左往することで光線をかわしたが

 ついに赤き竜の尻尾が直撃し、地面に叩きつけられた


「……ゴロリ!

 ケルルはあんたに頼んだ筈だ。情けないねぇ!」


「すまん」


 テントを潰しつつ降りてくる赤い竜に

 ゴロリは素直に謝った


「む。そういえば、ケルルは?」


「……あいつ、ケルルを持って落ちやがった」


 な、なるほど。ゴロリは焦って周囲を見渡した


「いってぇな。オカン」


「……なんだい。元気そうじゃないか」


 砂ぼこりを払ってケルルはゴロリに近づいてきた

 それをみて、赤い竜は安堵したように声をあげた


「……大丈夫だったか?」


「う、うん。あの人が下敷きになったから何とか」


 ゴロリはケルルに駆けよって言った

 確かに、目立った怪我はなかった


「でも、なんか疲れちゃった」


 ケルルはゴロリを見ると

 その場にへたりこんで座った


「……なぁ、竜よ」


「ああ?」


 ゴロリは竜を見上げた。竜は長い首を捻っていた

 どうやら、機嫌は戻っているように見えた


「変な話だが、街まで乗せてってくれないか?」


 連戦での疲れもあってゴロリは満身創痍だった

 泥棒の少女も、それは同じだろうと思う


「……仕方ないね」


 竜は明らかにケルルを凝視して地まで掌を下げた

 本当に誰かさんとは大違いだなとゴロリは思った


「立てるか、ケルル?」


「……うん。ちょっと休んだし大丈夫」


 ケルルは自力で立ち上がると、竜の手のひらに飛び乗った

 ゴロリも、それに続いて乗った


「ぼ、ボクも乗って良いの!?」


「揺れるのが嫌ならお進めはしないよ」


 突き放す竜の言葉に対し

 泥棒の少女は意を決したように

 竜の手のひらに飛び乗った

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