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独り善がりなようです

(一体どういうことなんだ)


 目の前の巻き角の女性はアケミの母親らしい、ということ以外は

 全くゴロリの理解が追い付いていなかった


「メシアちゃんにはマサルくんの糧となって貰うの」


「……どういうことだ」


 巻き角の女性は相変わらず黒い骸骨の片腕を抱いていた


「このおじさん、勘が悪くてまいっちゃう。ねぇあなた」


「まさか、実の娘を……」


 巻き角の女性の言葉を聞くたびに

 ゴロリは沸々と煮えたぎるものを感じた


「おぉ当たり。だってほんとのマサルくんに会いたいもん」


「……そうはさせない」


 ゴロリはそういって目の前の巻き角の女性を睨み付けた


「あらあら、怖いわぁ。やってしまいなさい!」


「はっ」


「はっ」


 巻き角の女性が指示をだすと

 フードの女性が二人、ゴロリに襲いかかった


「おっちゃんには指一本触れさせないぞ!」


「きゃっ」


「はぁんっ」


 ゴロリの前にケルルが飛び出し

 拳を振り上げるとフードの女性達は打ち上げられて

 天井に激突した


「へぇ結構やるじゃないの。これなら、どうかしら!?」


「ぐぅっ!?」


「お、おっちゃん!」


 巻き角の女性の自らの目を桃色に発光させた

 すかさずゴロリは前に出てケルルを庇った


「あっはっは。これであなたもわたしの……なにっ」


 巻き角の女性が見たのは

 仁王立ちするゴロリの姿だった


「大丈夫だ、ケルル。何ともない」


「ほ、本当か!?」


「……危ないから下がっていろ」


「う、うん……」


 ゴロリはケルルが後ろに下がったのを見届けて

 巻き角の女性を見た


「……飽きちゃった

 ねーねー、もう始めちゃいましょうよ。あなた」


 巻き角の女性は黒い骸骨の片腕を抱いたまま

 甘えるように揺らした


「そいつに意志はあるのか?」


 出てきた時を除いて、黒い骸骨は微動だにしていなかった

 だんだんと巻き角の女性が一人で盛り上がっているように

 ゴロリには見えてきていた


「なかったらここまで来てないと思うんですけど」


「なぜおまえの夫だと解るんだ?」


 あまりに巻き角の女性が態度を変えたので

 ゴロリは少し煽ってみることにした


「それはわたしにしかわからない!」


(会話が成り立ってないが、何となくわかったぞ)


 アケミは動かない黒い骸骨頼みなようなので

 突破口はあると希望を感じた


「そ、そもそもこんな低ステータスのおじさんに耐えられるわけ……

 早急のはまぐれよっ!」


 巻き角の女性はゴロリの不意を打つように目を桃色に光らせた

 光はゴロリには避けようがなく、立ったままのゴロリを直撃した


「う、嘘。嘘でしょ」


「よくわからんが、アケミは返してもらう」


 巻き角の女性は避ける所か近付いてくるゴロリに戦慄した

 ゴロリは、祭壇に寝そべるアケミを連れて帰ろうとしていた


「お、おい。おっちゃん!」


「大丈夫だ。ケルル」


 ケルルはゴロリを心配するように声をあげた

 祭壇に至るには巻き角の女性や黒い骸骨の前を通らなければならないが

 木偶の坊だろう、とゴロリはあまり気にしなかった


「くっ、こうなったら奥の手よ!」


 巻き角の女性は黒い骸骨を見つめると接吻した

 本当に唇を合わせるとは。ゴロリは巻き角の女性に少し感心したが

 特に関わることなく、祭壇の前まで進んだ


「ぐっ、あ、あっ!」


 突如巻き角の女性の苦悶の声が聞こえてきた


「……な、なんだ?」


 ゴロリは反応し、巻き角の女性が浮いているのを見た

 黒い骸骨が片手で彼女の首を絞めて浮かせているように見えた


「だ、だ、れ、かっ」


 自爆じゃないか。ゴロリは少し思った

 周りを見てみても、フードの部下達は

 誰一人として巻き角の女性を助けようとはしなかった


(やっぱり、似ているには似ているんだよな)


 ゴロリは巻き角の女性を初めてまともに見た

 なんとなく、アケミに似ている顔が

 苦悶の表情をして助けを求めているので放っておけなかった


「俺は貴様の根性は気に入らん

 それでも母親なら、根性を見せろ!」


「げほ、げほげほっ」


 ゴロリはアケミを背負って巻き角の女性に叫ぶと

 女性は黒い骸骨の片手を両手で掴むことで粉砕し、地に落ちた


「……帰るぞ、ケルル!」


「う、うん!」


 アケミを背負ったゴロリは、ケルルに駆け寄ると

 地下室の出口を目指した

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