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弟子ができたようです

「ようこそ。砦の恵みへ」


「おう。何か、食い物を寄越せ」


 ゴロリはギルド内にあるバーのカウンターに来ていた

 店主らしき人物はその辺で談笑する男たちと大差ないくらい体が大きかった


「そうだな、酒のツマミ位しかないがいいか?」


「豆はあるか。豆は!?」


 腹持ちが良さそうなものであれば、何でも入れたい気分だった


「豆……?」


「ないのか、使えん奴め!」


 ゴロリは腹を立てた。大豆は体にいいから揃えろと思った


「……どんなものだ?」


「なんだ、知らんのか……ほら、丸くて小さい!」


「……?」


 ゴロリは抽象的なところからいって相手が察してくれるのを待った


「だからっ、緑色の、丸くて、小さい!」


「……フライビーンズ?」


 店主は懸命に考えて、答えを出した


「……まぁいい。それを持ってこい。それを!」


 ゴロリはカウンターの前に座ると、腕を組んで言い捨てた


「酒は……?」


「いらん。早くしろ!」


 ゴロリは酒を飲むと弛むから飲まないと決めていた




「……フライビーンズどうぞ」


「ご苦労……いただきます」


 思いの外早かったのでゴロリは上機嫌で手を合わせた

 フライビーンズは手で食べても問題なさそうではあったが

 フォークがあったため使うことにした


(腹持ちは悪そうではないな)


 素朴な味付けであったが山盛りで、腹に溜まると思った


「お客さん、見ない顔だけど新入りか?」


 店主の言葉にゴロリは頷いた

 食事中は喋らない。これは彼の常識だった


「まぁ、もう馴染んでいるように見えるから心配はしないが

 面倒な奴も少なくない。気を付けてくれ」


 店主が喋っていくのを他所に、ゴロリは夢中になってフライビーンズを食べた


「ご馳走樣でした」


「……これだけでいいか?」


 店主は皿に手を合わせるゴロリに気にもせず問うた


「そうだな。もういい」


 ゴロリはそういって腕で口を拭うと頷いた


「じゃあ、カードを貸してくれ」


「……いいだろう」


 店主はゴロリに向かって片手を差し出した

 ゴロリは少し考えたあと、ポケットの中からカードを取りだして店主に渡した

 これだけ人の目があれば、盗ろうとは思わない。ゴロリは密かに思った


「むん」


 店主がカードを持つと顔の前まで構えて念じた

 店主の手の内にあるカードが青白く光る

 風が吹いたように、下から上に服が揺れた


 ゴロリはその間、一体どのくらい取られるのだろうと思った


「……終わりだ。残高を確認しておけ」


 ゴロリは一応カードの裏面をみた

 確かに模様が変化しているようにも見える

 しかし、意味まではわからなかった


「……また来る」


 ゴロリが店主に挨拶したあと、ポケットにカードをしまって席を立った




(また薬草を摘むにしても革袋では足りん

 リュックサックなるものがあればいいが)


 ゴロリはリュックサックを求めて、街を歩いていた

 路上商を見てもそれらしいものは見当たらず、困っていた


「こんな女はうんざりだ! 他の者と変えろ!」


 ふと、目の端に豪華な服を着た男が映った

 ゴロリは一応あっちも確認しようと、歩いていった


 一際大きい建物だった

 ギルドほどではないにせよ、屋台が並ぶ通りでこの建物は異質と思えた


(きっと訓練所に違いない)


 ゴロリは核心しながら、豪華な服の男に向かって歩いた

 歩いていくと見覚えのある少女もいたが、気にも止めなかった


「いひひ、そりゃ困りますな

 一度使った商品は並べないのがうちのこだわりでして」


 豪華な服を着た男は指に宝石を付けた小太りの男と話していた

 気に入らなかった。主に、小太りの男の体型が気に入らなかった


 しかし、待てよと腕を組んだ

 最近は太っていても動きが素早い奴もいる。もう少し観察してみてもいい

 ゴロリは腕を組み、彼等とは一定の距離感を保った


「ほら、見ろこの足を

 こいつのせいで、こんな怪我をしてしまった」


 豪華な服を着た男は足を持ち上げて訴えた

 言いたいことはあった。だが、もう少し観察していたかった


「……仕方ありませんな

 ではそいつは処分しておきます」


「最初からそうしろ。ほら、行け」


「うぅっ!」


 豪華な服を着た男はボロ衣を着た少女の背を押した

 少女はよろけて倒れた


「……ダメだ。なっとらん」


 ここでゴロリは爆発した

 全速力で突っ走り、豪華な服の男と小太りの男の間に立った


「ぎぅっ!?」


 ゴロリは少女の上に片足を乗っけたのだ


「どうだ、重いか?

 退けてみろ。じゃないと死ぬぞ!」


「そ、そんな。無理ですっ」


 少女は生きているようではあった


 豪華な服を着た男は突然割り込んだゴロリに目を瞬かせる

 小太りの男も驚愕を隠せないようであった


「無理ではない。やるのだ!

 ほら、もっと手に力を入れて!」


「んっう、ああぁっ!」


 少女は万感の力を込めて立ち上がった


「やるではないか」


「あ。貴方は……は、はいっ。頑張りました!」


 ゴロリは自分の力で立ち上がり、笑顔を見せる少女に満足気に頷いた


「おい、それはうちの商品だぞ!?」


「処分すると聞いたが?」


「うっ……いや。そんなに気に入ってくれたなら買って頂けたら」


「誰が人を雇うか。俺はそこまで年老いてないわ!」


 小太りの男はゴロリのあまりの剣幕に口をぱくぱくさせた


「……おまえを探していた

 このまえの件も含め、処罰してくれる!」


 豪華な服を着た男は、小太りの男とゴロリの間に割って入った


「そんなかすり傷程度で喚く奴に処罰される俺ではないっ!」


 ゴロリは豪華な服を着た男の怪我をした位置を的確に蹴った


「いっでぇっ!」


 豪華な服を着た男は片足を押さえながら飛び跳ねていた


「……で、貴様はなにぼさっと突っ立ってるんだ!」


「はっ、はいぃっ!?」


 ゴロリは少女を指差して、叫んだ


「いいか。貴様の生き死にくらい貴様が決めろ!

 貴様は死にたいのか。どうなんだ!」


「……たいです」


 少女は目に沢山涙をためて震えていた


「声が小さい。もう一度!」


「貴方と生きていたいです!」


 少女は、叫んだ


「ほう。俺の指導を望むか!

 良いだろう。付いてこい! あの夕日に向かってダッシュだ!」


 ちなみに今は夕日は出ていない


「はいっ!」


 ゴロリを先頭に少女は走っていった




「行ってしまった……ああ。楽しみが」


 ゴロリ達が行ったあと、小太りの男は落ち込んだ


「……足の傷が治っている」


 豪華な服を着た男は片脚を擦っていった


「本当ですかい!?」


「……あの女くらい、くれてやろう」


 豪華な服を着た男は小さくなったゴロリと自分の奴隷だった人間を見た


「ひひ、ではどうぞ中へ」


「うむ」


 豪華な服を着た男は小太りの男と共に建物の中に消えていった

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