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名誉のようです

 受付の男はこぢんまりとした受付に座ると

 ゴロリ、アケミ、ケルルのカードを拝借した


「星の輝明 (スターライトソード)!」


 受付の男が詠唱すると

 男の片手に光が集まり先が尖った棒状のものを顕現した


「おぉー!」


 アケミは受付の男が輝く鉛筆を出すと拍手していた

 飽きないという本人の言葉は本当かもな

 アケミの様子を見て、ゴロリは本気でそう思い始めていた


「アケミちゃんはいつもよい反応をしてくれる

 少しサービスしたいくらいだよ」


 受付の男はうきうきとした顔で

 鉛筆のようなそれを裏返したカードに向けて

 なにやら書いていた


「……なぁ、フール。ちょっといいか?」


「ああ。構わんとも」


 ゴロリは少し気になったことがあって

 受付の男に声をかけた。男は、書きながらゴロリに答えた


「ケルルの母親は、人になれたのか?」


「うむ、実に美しい女性であった

 しかし、ケルルちゃんを見るとローズを思い出す

 ……やはり親子だな」


 受付の男はカードから一瞬目を離し、ケルルの方向を見て微笑した

 そうなのか。ゴロリはそう思って後ろにいるケルルを見た


 やはり、端正だとゴロリは思った

 薄いピンクの双目と少し濡れた赤い髪が合わさって

 どこか妖艶であるような印象を受けた


「い、いやぁ。なんだかくすぐったいな」


 恥ずかしそうに頭を掻いているケルルを見て

 やっぱり妖の部分はまったくないなとゴロリは思い直した


「……なぜ今は人になれなくなってしまったんだ?」


「それなのだが、わからぬのだ

 当人に聞いてみるしかないやもしれん」


 フールでもわからないことがあるのか

 ゴロリは少し意外に思った


「……む?」


 受付の男は突然書くのをやめて、一点を見つめた

 ゴロリ達のいる正面ではなく横を向くようにしている

 ゴロリも、受付の男の目線を探った


「……君に用があってきた」


「そうか。どうした」


 猫騎士だった。全身鎧を付け、手は後ろに回している

 一人なのか。ゴロリは少し思った


「……王が君の顔を是非ともみたいそうだ

 来てくれないか?」


 寧ろ、強制じゃないんだな

 猫騎士があまりに声が小さいので

 ゴロリは少し笑ってしまいそうになった


「……ゴロリよ、行くのかね?」


「ああ。ケルル、アケミを頼む」


 受付の男は真っ青な顔をしてゴロリを見た

 ゴロリは、別に死ぬんじゃないんだからと

 男を無視してケルルを見た


「そ、それはいいけどさ……」


 ケルルは少し目が泳いでいた

 実際、ケルルの家で居候してるからな

 ゴロリは少し気にしていた


「い、嫌です。わたしも行きます……!」


「そ、そうだそうだ。あたし達も連れてってくれよ!」


 アケミが特等席を立って猫騎士に訴えると

 ケルルも、アケミに便乗するように抗議した


「アケミ、ケルル。君達はダメだ」


 猫騎士にすぱっといわれ

 アケミとケルルはしゅんとしていた


「……強制ではないなら

 いく必要はないのではないか?」


「いいんだ、フール。実際名誉なことじゃないか」


 受付の男にいわれて、ゴロリは更に決意を固くした

 受付の男は思いがけなかったのか、目を丸くしていた

 正直、この男には護られ過ぎた。ゴロリはそう思って言った


「……では行こうか」


 猫騎士に促され、ゴロリは猫騎士の元に歩いた




 猫騎士を先頭に、ゴロリは歩いていた

 猫騎士は前に案内できないとした

 2階への階段に差し掛かって、止まった


 2階への階段には中心に赤い絨毯がしいてある

 上の方を見ると、大きな旗が飾ってあるので

 なるほどとゴロリは思った


「ゴロリ。一つ聞いていいか?」


「一つでも二つでも構わないぞ」


 猫騎士は少し遠慮するように尋ねたが

 猫騎士はもう信用してよいとゴロリは思っているので

 すんなりと答えた


「……あの力、どこで身に付けた?」


「正直、わからないが

 産まれながらってのが近いと思う」


 ゴロリは言葉通り、正直に答えた

 それを聞くと猫騎士は顔に指を当てていた


「……そうか。わかった」


 よく考えてみると荒唐無稽な話かもしれない

 猫騎士の反応にゴロリは少し思った


「わたしが王と喋る。君はずっと頭を下げていろ」


「それはどういう……?」


 猫騎士の言葉にいまいちピンとこないゴロリだったが

 猫騎士は無視するように先へ進んだので気にしないことにした

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