帰ってこられたようです
ゴロリ達はアニーの転移魔法によって南側に戻った
アニーに西の連中は良かったのかとゴロリが聞くと、消えたので
結局は全員やることになっただろうと、ゴロリは思った
「しかし、ブレイズの奴も随分遠い所に飛ばしてくれたな」
受付の男は4本の柱が印象的な巨大神殿を見た
瓦礫が多く、前来た時とは違っていた
恐らく、ケルルの母親がやったんだな
なんて馬鹿力だとゴロリは思った
ここから街へ戻らなければならない
その事実を目の当たりにすると
冒険者達はやれやれといった顔をしていた
「……まぁいい。君たちはわたしが責任をもって送り届ける」
「流石騎士様!」
「素敵!」
猫騎士が先導し、冒険者達はその後を付いていった
「……アニーはここに拘ったんだな」
「そうかもしれん」
ゴロリに、受付の男は頷いて答えた
やっぱり竜が気になったのだろうか
ゴロリはそんなことを思っていた
「とりあえず、我々も帰るかね」
「ああ」
「そうだな」
「行きましょう」
受付の男の言葉に
ゴロリ、ケルル、アケミの三人は答えた
受付の男を先頭にして
ゴロリはアケミとケルル挟むように並んで歩いていた
「おっちゃん。今は大丈夫なんだな?」
「ああ。なんともない」
ケルルはゴロリの顔を覗きこんで尋ねた
一瞬、死ぬかと思ったけどなとゴロリは思い返す
「……ゴロリさん、確かに顔色悪かったですね
なにがあったんですか?」
「力を使いすぎただけだ」
アケミが知らないのは無理もないな
ゴロリはそう思って、要点だけ伝えた
「……おっちゃんはさ、泡吹いて倒れても
はってアケミちゃんを助けにいこうとしていたんだ」
「そ、そうだったんですね……」
ケルルがアケミに伝えると
アケミは俯いて、何故か顔を赤く染めていた
「……アケミもそうだが
西側の連中は随分と根性があってな。感化されたよ」
「へ、へぇっ。そうなんですね!」
アケミはゴロリの言葉に
安心したように笑顔を浮かべていた
(どうだ、ケルル!)
ゴロリは得意気にケルルを見やったが
ケルルはにやにやとしているだけだった
「むっ、あれはローズではないか?」
受付の男ははたと頭上を見た
ゴロリも仰ぎ見ると
チューリップハットを頭に被る巨大な赤い竜が
空を自由に飛んでいた
「おーい、オカーン!」
ケルルも気が付いたようで、竜に向かって片手を振っていた
竜はケルルの方向を見ると、ゴロリ達の頭上付近まで降りてきた
「街へは、帰らんのかー?」
ゴロリは大声で竜に尋ねた
「アタシはもうこの姿でしか生きられない
仕方ないのさ。山にでも住むよ!」
そうだったのか。ゴロリは少し気の毒に思った
「じゃ、じゃあオカンとは二度と会えないの!?」
「いいや。アタシは空にいるんだ。そのうち会えるさ!」
ケルルは少し寂しそうではあったが、竜は突き放した
まじか、ロックだな。ゴロリは竜の言葉にただただ痺れた
「……うん、わかった。またなオカーン!」
「グオオッ!」
竜は、ケルルに答えるように大きく咆哮すると飛び立った
実際、親子にしかわからない感覚なのかもしれない
ゴロリは飛び立つ竜を見て思った
ゴロリ達は竜の姿が見えなくなるまで見送った
「ふいー、ようやく着いたか」
受付の男は人のいない検問所を通ると
ため息をついていた
こういうところで年寄りなんだって分かるんだがな
ゴロリはそう思って、苦笑した
「今度こそ、薬草の換金をしてやろう
ケルルちゃんもいることだし」
「うん? なんかくれるのか!?」
受付の男にケルルは即座に反応した
ケルルの様子に、なるほどとゴロリは察した
「このまえ、薬草を取ったときのものでしょうかね」
「あっ。ああ、ああ。お、覚えてたって……うん」
ケルルはアケミに教えられて納得する素振りをした
実際、覚えてなくとも無理はないぞ
ゴロリはそう思って、静かにフォローしていた




