帰るようです
「おい。治療しろ、金髪っ!」
「……なるほどね。イラーヒーベスフンナッ」
「おお、動ける。動けるぞ!」
ゴロリはケニーを軽く指導すると
倒れていた冒険者達は立ち上がり、北の橋も綺麗になった
「にしても、騎士さんが耳生えてたとはな!」
「み、見るなぁっ、見てはいけないっ!」
冒険者達に面白がられ、猫騎士は両手で顔を埋めていた
元気そうで何よりだ。ゴロリは心からそう思った
「アケミ、ケルル。二人ともありがとう。助かった」
ゴロリが支えた二人に感謝すると
ゆっくりと二人はゴロリから離れた
「どういたしまして」
「どうってことないって!」
アケミもケルルも、今回で顔が凛々しくなったな
ゴロリは二人の顔をまじまじと見た
「……ん。アケミちゃん
あたしの顔、なんかついてるかな?」
「濡れてますね。わたしは?」
「少し汚れてるな」
ゴロリの珍しい行為に二人は顔を見合わせると
笑顔を浮かべた
(やっぱり姉妹じゃないか)
ケルルより、アケミの方が頭ひとつ高い為
アケミが少し前屈みになっているのが
ゴロリには面白かった
「……一通り倒したんだ
そろそろ帰還できるんじゃないか?」
ゴロリはふと気になって、受付の男に目をやった
「カードは光っておる。まだ帰れぬな」
受付の男は片手で白衣のポケットからカードを取り出して
ゴロリにかざした
「……まだなにかあるというのか」
受付の男のカードはまだ緑色に強く光っていた
「そう。まだ肝心なところが残っておる」
受付の男はそういって、中心の島へと歩き出した
「……星の輝明 (スターライトソード)!」
受付の男は四つん這いになると光る鉛筆を顕現した
島の縁に沿うように移動し、何かを書いていた
「くぅっ!」
「うあう」
「あっ、星の輝明 (スターライトソード)……」
ゴロリとケルルが眩しがっている間
受付の男の鉛筆にアケミは見いっていた
「これでよし」
受付の男は島を一周してゴロリ達の元へ戻ってきた
結構な時間であったが、アケミはずっと目で追っていた
「終わりか?」
「ああ。終わったよ」
受付の男の言葉を確認しようと
ゴロリはポケットからカードを取り出した
(光が消えてる……)
ゴロリは、勇者と喋る覚悟をしていたので
少し得した気分になった
「結局、あの現象何だったんだ?」
「わたしは死んだ勇者の叫びだろうと思う」
受付の男はゴロリの言葉に頷いて答えた
「死んだのか」
受付の男の暴露にゴロリは少し驚いた
「まぁな。勇者は短命だったよ」
受付の男の目は障壁を伝って上を見た
感慨に耽っているのだろうかとゴロリは思った
「腹上死なんて、アイツらしい最後だよね」
そんななかで、空気を壊すように
アニーは割って入った
「……アケミちゃんやケルルちゃんの前で
いうことではないな。ブレイズ」
「なんの話です?」
「なんだろうな」
「わからんなら、それでいいだろう」
ゴロリは咄嗟にはぐらかした
そもそも、アケミの父親は勇者である可能性が高い
ケルルも、苦楽を共にした仲間ならばもしくはとは思った
「ブレイズ、おまえやはり……」
「許してたら教会なんて潰さないよ」
案外、根深い話なのかも
受付の男とアニーの会話を聞いて
この件はあまり触れないようにしようとゴロリは思った
「ねえ、あれってアタシを閉じ込めた障壁じゃないか」
ゴロリ達の上空にはマイペースな赤い巨大竜が
障壁を興味深く眺めていた
「……元々はわたしが考案した魔法だったが
勇者は見ただけで盗むことができただけだ」
「なるほどねぇ」
受付の男の言葉に合点がいったのか
竜は障壁からある程度の距離をとった
「さて、撤収かね!」
受付の男にゴロリは頷いたが疑問が浮かんだ
「うん?
今、南側にいきたいなら、回り道せんといけないのか」
「その点は問題ない。ブレイズがおる」
「……寧ろ、僕の専門はそっちだから安心してね」
受付の男とアニーの言葉にへぇと唸った
それにしても、瞬間移動専攻って中々前衛的だな
ゴロリはアニーの言葉を聞いて思った
「そんなわけで、緑色の皆さんは僕と一緒に帰りましょう!」
てっきり、全員やるもんだと思っていたが
それだと負担がかかるかとゴロリは思い直した




